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第13話 いざ関ヶ原へ

「止まれ!」


 敵を包囲し、戦闘を続け、敵が潰走する頃には夜が明け始めていた。

 潰走する敵を追いかけると、戦闘を走っていた石田三成が停止を命じた。


「敵の本隊ですな……。」


 島左近の言う通り、眼の前には徳川軍。

 潰走する敵を救援していた。


「殿、ここで正面からぶつかれば我等に勝ち目はありませぬ。」

「だが、兵の士気は高い。南宮山にはまだ降りてきていない吉川殿や毛利殿がおる。合流すれば、あるいは……。」


 三成はそこまで言うと、暫くの間考えた。


「いや、ここで雌雄を決するのは早い。当初の予定通り関ヶ原に誘い込む。」

「はっ!」


 徳川方はこちらが動かないのを見ると、後退を始めた。

 そして、最後までこちらを睨む軍があった。


「秀信、あれは……。」

「はい、井伊の赤備え。此度の策が完全に上手くいかなかったのは奴のせいでしょう。我等は顔を見られましたしね。」


 すると、先頭から三成の声が響く。


「引くぞ!」

「……どうやら、ここは決戦の場ではないようですな。殿。」

「うむ、百々の言う通りだな。引くぞ!」


 初戦は制した。

 これで藤堂、池田勢はかなりの痛手を被った筈。

 関ヶ原は歴史通りには行かないだろう。




「各々、お見事でござった。」


 大垣城に戻り、軍議の場。

 皆が集まると、三成は頭を下げた。


「もし、私の策で行けば関ヶ原で万全な状態の徳川勢とやり合うことになっていた。この戦、負けるわけには行かぬ、島津殿、織田殿には感謝してもしたりませぬ。」

「いや、逆賊徳川を討ち滅ぼすためとあれば我等は協力を惜しみませぬ。ですが、私が名乗りを上げなければ井伊直政に警戒されず、更に多くの敵を討ち取れた筈。誠に申し訳ない。」


 秀信は深く頭を下げた。


「秀信兄上、結果がどうであれ敵に損害を与えられたのは事実、そう悲観することもありませぬ。」

「そうでござる。儂ももっと上手く動けば忠吉の首を取れていた筈。あの時こうすれば良かった、こうすれば更に敵を討ち取れた等よくあることに御座る。気にすることはありませぬ。」


 島津の言葉に秀信は頭を上げる。


「左様、島津殿の言う通り、戦とは斯様なもの。気にすることはありませぬ。……さて、今後についてですが……。」


 三成は机上の地図を見た。


「今夜、夜陰に乗じてここを発ち、南宮山の南を抜けて関ヶ原へ向かいまする。関ヶ原にて雌雄を決する。そう考えておりますが、如何でしょうか。」


 三成の案に皆が頷く。

 しかし、秀信が手をあげた。


「宜しいか。」

「織田殿、無論に御座る。」

「先程の戦にいた長宗我部殿や長束殿を関ヶ原に行く我等についてきてもらっては如何でしょうか。」


 そう言うと、三成は少し考える。


「……南宮山の部隊は家康が我等の後背を突かぬ様にするもの、それに関ヶ原で敵の後背を狙う定めもありまする。」

「それは吉川殿や毛利殿で充分かと。あくまで決戦の地は関ヶ原!小早川殿の件もありまする、主戦場で少しでも優位に立った方が宜しいかと。」

「……左近、どう思う。」


 三成の側に立つ島左近が前へと出る。


「は。良き案かと思いまする。」

「では、そのように致そう。」


 三成は立ち上がり、声を上げた。


「では、今宵の内に城を出まする。各々、支度の程を。」


 これで、史実とは大きく変わるだろう。

 ここが正念場だ。

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