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第15話 再びの

「はぁ……」

「光? どうしたの? お城で何かあった?」


 明智城に返って来た時田は溜息をついた。

 既に日は暮れ、やることもなくなった時田とおさとは時田の部屋で話していた。

 深くため息をつく時田。

 そんな様子を見ておさとが声をかける。


「……戦が近いからって意見を聞きたいって言われたんだけど……」

「利政様に? 凄いじゃない!」


 時田は首を横に振る。


「……それは良いんだけど、高政様にちょっと目をつけられたみたいでね……不安が凄いんだよね……あの人、なんか怖いし」

「成る程ね……それでため息なんかついてたんだ」


 時田は頷き、再び大きなため息をついた。


「あぁ〜面倒臭い! こんなの望んでないんだけど!」


 時田はその場に寝転がる。


「もう……だらしない……」

「おさと! 少し来てくれぬか?」


 すると、光秀の声が響く。


「あ、呼ばれちゃった。じゃあ……」


 一瞬、おさとは時田から目を離す。

 ほんの一瞬。

 しかし、視線を戻したその先に、寝転がっていた筈の時田の姿は無かった。


「え……」

「おさと、どうしたのだ?」


 光秀も様子を見にその場に姿を現す。


「光……光が、居なくなりました……」

「……何?」


 どこの戸も開けられておらず、開けられる程の間も目を離していない。

 消えた。

 その言葉が最もふさわしかった。


「確かに……確かにここにいたのか?」

「は……はい。ここで寝転がっていて……十兵衛様に呼ばれて一瞬目を離したら……もう……」


 光秀は考える。

 しかし、まるで理解の及ばない出来事に、何の推測も出来なかった。


「……神隠しにでもあったのか? とにかく探せ! 遠くには行っていない筈だ!」

「は、はい!」




「ん?」


 時田が目を開けると、先程まで日が暮れていた筈なのに、今は明るい。

 そして、先程まで隣りにいた筈のおさともいなかった。

 一瞬の瞬きの隙に、状況が一変していた。

 時田は外に出て空を見上げる。


「……朝? どうして……」


 まったく意味のわからない状況に少し混乱するが、とあることに気が付く。

 この現状、既視感があったのだ。


「まさか……またタイムスリップした……?」

「……え」


 すると、背後で物音がする。

 振り返ると、涙を浮かべた女性が立っていた。

 足元には、物が散らかっていた。

 時田を見つけ、驚き落としたのだろう。


「お……おさと? どうしたの?」

「光!」


 涙を浮かべた女性はおさとであった。

 おさとは時田に抱きつく。


「今までどこに行ってたの!? 何してたの!? 心配したんだから!」

「え……えぇと……」

「あ、そうだ!」


 どうしようか迷っていた所、おさとに質問攻めにされる。

 どう説明したものか、と考えていると、おさとが何かを思い出し、時田から離れ、駆け出していく。


「十兵衛様! 十兵衛様! 光が! 光が帰ってきました!」

「ちょ、ちょっと!」


 そのまま、おさとの姿は見えなくなった。

 取り残された時田は、途方に暮れる。


「……どうしよ」


 ただ、直感的に分かっていたことは、またタイムスリップしたという事。

 それをどう説明したものか時田は悩んでいたのだった。

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