暁の訃報後、さくらはずっと千春に寄り添ってくれた。
いつしか、千春は、さくらに惹かれ、さくらも千春に惹かれ。千春の感情が、少しずつ出始める。
悲しみや怒りをさくらにぶつけることも少なくなかった。
自分の気持ちに整理がつかず、悩み、裏庭の桜にいかなくなってしまった。
…
そして、桜の季節が終わり、桜はすべて散ってしまった。
「いいんですか?さくらさんのところにいかなくて」陽向が千春に問いかける。
「さくらといると、怒ったり、悲しくなったり、苦しいんだ」
運転手・陽向は千春を抱きしめる。
「それで、いいんですよ。…あなたは彼女に恋をしたのだから」
「もうごっこ遊びはおわりにしましょう」
陽の光で雪が解けるように、美雪が消えていく。
「あれは、現実ではありません、あなたが作り出した幻想です」
8年前、姉、美雪が病気でしんだ。
ひとりぼっちの千春が、姉を失い、自分の感情をすべて失わせ、かりそめの美雪をつくった。
回想シーンで、ひとりでしゃべっている、千春。
それを運転手は見守っていた。
千春を抱きしめ、涙する運転手・陽向。
(ずっと一人だと思っていた。でも一人じゃなかった。見守ってくれる人がいた…そうだ、暁もいたんだ。俺は…!!)
「俺、さくらのところにいくよ」
「いってらっしゃい」
陽向はいつものように千春を送り出す。
さくらのもとに走り出す千春。
(俺の中、ぐちゃぐちゃだ…。でもどんな怒りも悲しみがあっても、どんなに苦しくても…君を想う、この優しい感情は失いたくないから…)
さくらがいつもの通り、裏庭でまっている。
桜は、すべて散っている。
「さくら!!」
「千春…」
千春は、さくらがいつもやっていたように、桜の花びらを両手で頭の上に降らせるしぐさをした。
すべての桜の木々に、花々が咲くような光景が一瞬広がる。
「これが愛ってわかるよ」
さくらは、胸にこみあげるものにこらえきれず、涙を流した。
不器用な千春の告白が分かったようだった。。
千春も、暖かい感情に胸がいっぱいになった。
寄り添う二人。
「大丈夫だよ、千春。桜は来年の春も咲くから」
「うん、また、一緒に見よう」