目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
第9話

「ただいまー母さん。どうしたの?電気もつけないで」

暁が家に帰ると、暗い室内の中、暗い顔でソファーに座ってる暁の母がいた。

「あんたの私立の学費が払えそうにないの。東雲の給食費も滞納してる」

「俺のバイト代でなんとかならないの?」

「それでもちょっと足りなくて」

暁の母は思い出したように、「そうだ、この間泊まりに来た…千春君!!あの子の家って有名な製薬会社でお金持ちなんでしょ? 持ってきたお菓子も高級なものだったし。…あの子に手伝ってもらえない?」と言った。

「何言ってるんだよ、母さん。そんなことできるわけないだろ!!千春を利用しないで!!」

「利用だなんて人聞きの悪いこと言わないで。 あんた東雲がかわいそうじゃないの?」

暁はうなだれた。



暁に放課後の教室で家の事情を聴く千春。

「そういうことなら…父に頼まなくてもそれくらいの金は持ってる」

暁の顔が明るくなった。そしてまた暗くなった。喜んだ自分を恥じたらしい。

「いいよ、千春。俺がなんとかする」

「どうするんだよ。なんとかできないだろ。俺、金出すから…」

「いいって!!」

声を荒げる暁に千春は一瞬身構えた。

「ごめん、千春」

暁は千春を抱きしめる。

「誰もいないところに千春と二人で逃げたい」

泣いていた。

「そんなこと…出来ないよ」

千春も暁を抱きしめた。


コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?