「ただいまー母さん。どうしたの?電気もつけないで」
暁が家に帰ると、暗い室内の中、暗い顔でソファーに座ってる暁の母がいた。
「あんたの私立の学費が払えそうにないの。東雲の給食費も滞納してる」
「俺のバイト代でなんとかならないの?」
「それでもちょっと足りなくて」
暁の母は思い出したように、「そうだ、この間泊まりに来た…千春君!!あの子の家って有名な製薬会社でお金持ちなんでしょ? 持ってきたお菓子も高級なものだったし。…あの子に手伝ってもらえない?」と言った。
「何言ってるんだよ、母さん。そんなことできるわけないだろ!!千春を利用しないで!!」
「利用だなんて人聞きの悪いこと言わないで。 あんた東雲がかわいそうじゃないの?」
暁はうなだれた。
暁に放課後の教室で家の事情を聴く千春。
「そういうことなら…父に頼まなくてもそれくらいの金は持ってる」
暁の顔が明るくなった。そしてまた暗くなった。喜んだ自分を恥じたらしい。
「いいよ、千春。俺がなんとかする」
「どうするんだよ。なんとかできないだろ。俺、金出すから…」
「いいって!!」
声を荒げる暁に千春は一瞬身構えた。
「ごめん、千春」
暁は千春を抱きしめる。
「誰もいないところに千春と二人で逃げたい」
泣いていた。
「そんなこと…出来ないよ」
千春も暁を抱きしめた。