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第7話

その日、俺は暁の家に泊まり込みで遊びに行った。 暁の母親が出迎えてくれた。暁の親は、片親で母親は水商売をしていた。派手な人で、暁に似て目が透き通っていて、すべてを見通すような瞳をしていた。千春が菓子折りを渡すと、「気を遣わなくてもいいのに」と笑った。

晩御飯はすき焼きだっだ。

新鮮な卵を小さな器に入れ、ほぐす。すき焼きは、いわゆるお鍋のようにグツグツ煮込むものではなく、肉や具材そのものをそれぞれの絶妙な加熱加減で楽しむもの。具材を一気に鍋に入れてしまわず、1段階目はねぎをまず焼き、砂糖を下に引いて肉を絡めながら焼く。割り下を注ぎ、2段階目はほかの具材を楽しむ。

それが、暁の家のすき焼きのルールだった。

すき焼きをあまり家で食べたことのない千春には新鮮だった。


「千春の口に合うかわからないけど。でもこれでもいつもよりは高い肉なんだよ。母さん、千春来るから、奮発したみたい」

東雲という暁の妹も一緒に鍋をつついた。 小学生にしては、色っぽい子だった。 でも千春に緊張しているのか終始無口だった。

「東雲、千春かっこよくて照れてるみたい」

肉を千春によそいながら、暁は笑った。

晩御飯がすんで、暁の母親が店に出勤していなくなった。居間では、東雲がクレヨンで何か書いていた。 太陽だった。

「東雲、なんで太陽黄色くかくの?太陽って赤じゃない?」

「お外でみる太陽は、黄色いもん」

東雲がクレヨンをぐりぐりしながら太陽を描いている。

「外で見るのは黄色いかも。惑星自体は赤いのかもしれないけど」

東雲がしょんぼりしたような顔で、暁に問いかけた。

「暁お兄ちゃんも、離婚して別に暮らしてるお兄ちゃんも太陽の名前なのに、なんで東雲は雲なの?お父さんが違うから?」

泣きそうだった。千春が口を挟んだ。

「東雲も太陽だ。太陽の名前だよ」

東雲は満足したようだ

寝る時間になって、暁の部屋で2つの布団をひいて横になった。

「人の家の布団って、不思議なにおいがする」 千春がそういうと、

「俺はべつになにもにおいしないけどね」

暁も布団のにおいを嗅いだ。

「-千春は俺と同じにおいがしたよ」

前も言ってたけど、どういう意味なんだろう。

「ふーん」

千春はそのまま眠った


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