咲夜はその日、ある私立学校の前に立っていた。 ここに、「あいつ」の大切な、大切な「あの子」が通ってる。 千春が出てくる。呼び止める咲夜。そこに運転手陽向の運転する車が止まった。
「咲夜、なんでここに」
「このこ、借りてく」
「は?」
咲夜に引きずられていく千春。 喫茶店に入った。
「パフェでも食べる?若いからこんなところじゃなくて肉系でも食べたかったかな」
「甘いのは食べれない。アイスのパフェがいい。すっぱいの」
パフェがきて、つつきながら、
「で、なんで俺はここにつれてこられたわけ」と、千春が問うと
「実は、陽向とお付き合いさせてもらってる」
咲夜が言った。千春はあんまり信じてないようだった。
「陽向と知り合いなんだ」
「いつ知り合ったの」
「大学生の頃だよ」
こんな春の日だった。陽だまりが自分の中に溶け込むような暖かい日だった。大学の校舎で友達と歩いていた。不意に声をかけられた。
「すいません。白い羽がついてますよ」
「はい?」
咲夜の寝ていた布団は、安っぽい羽毛布団で、縫い目が浅いのか、その間から羽毛の羽が出てくるのだ。部屋は、羽毛だらけになっていたのだが、それが衣服にもついていたらしい。
「すいません」
「白い羽つけて、天使にあったかと思いました」
それが陽向との出会いだったーーーーーー
「陽向って、冗談言ってるのか、本気なのかわかんないよな」
黙って聞いていた千春が口を挟んだ。
それから咲夜と陽向は大学内で会うようになった。 陽向は、一つ上の学年で、同じ心理学の学科を取っていた。陽向に言わせると、お世話になってるバイト先の息子が心病んでいることがきっかけらしい。
「君にずっと会ってみたかったんだよ」
咲夜は微笑んだ。