千春は翌日、学校のさくらの教室の前にきていた。 昨日泣かせたことを謝りたかった。 さくらは千春と同学年で、隣の教室だった。 さくらを見つける千春。 しかし、隣に男がいる。男が何か言ってさくらは笑っている。
(昨日泣いてたのに、もう笑ってるんだな…)
千春は、怒ったような苦しい気持ちになった。
(俺、嫉妬してる…?) いたたまれなくなり、廊下に出た。
廊下に出た千春を、桜と話してた男が追いかけていく。
「(さっきの…)なに」
「さくらちゃん、泣いてたよ。ずっと」
「泣かすなら、もらっちゃうよ?」
男は道化のようにおどけた。 カッとなって、千春は男の喉元をつかんだ。
男の胸ぐらをつかんだ千春を男はくんくんと嗅ぎ、
「きみは俺とおなじにおいがする…」
「はぁ?」
「シャンプー一緒とかか」 男は爆笑した。
「違うよ、人間性が、ってこと」 千春はどっきりした。
「千春君だよね」
「なんで俺の名前知ってるんだ」
「女子の間で君はすごく人気だよ。有名な製薬会社の御曹司でかっこいい、って」
「そんなの知らない」 「俺の事は知らない?」 「全然、知らない」
「俺も結構女の子の間で人気なんだけどな。俺の名前は暁」
「春眠、暁を覚えず、春は暁を知らない…千春君は俺の事知らないんだね」
謎めいたことを言う。
「知らなければ、知ればいい。俺たちは今日から親友だ!!」
「はぁぁ?」
なぜか勝手に親友宣言を受ける千春。
「千春」
「よびすてにするな」
その日の体育の授業で、おれのクラスと暁のクラスは合同で野球の授業していた。なるほど、暁は女子だけではなく、男子とも仲がいい。そのすべてを見通すような透き通った瞳で千春の方を見ていた。 女子の方を見ると、女子はソフトボールをしている。さくらの姿があった。
さくらと千春、シンクロするように、バッターに立つ。
(あ、さくらバットを振った。)
バットは球に当たり、さくらは一塁に走っていく。
(走り方、かわいいな) フフ、と笑う千春。
「はい、バッターアウト!!」
「あ」
千春はさくらにみとれて、アウトになってしまう。
そんな千春を見て暁が
「すきだーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」 叫ぶ。
「暁、うるさい」 クラスメイトから言われる暁。