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俺が間違ったネトゲ廃人を転生させた話し
藤倉崇晃
異世界恋愛ロマファン
2024年10月29日
公開日
13,087文字
連載中
彼女が欲しい大学1年生・香取正太郎は、同じ文学部の村家沙織だけはお断りだった。
ある日合コンで惨敗した正太郎は、女子大生達から「男は経済力だ」となじられてしまって~?

アルバイトをしようと正太郎は一念発起してコンビニのフリーペーパーでゲーム会社の求人に応募した。
そこは「トワイライトジェネシス―西風の魔物とプリンセス―」というブラウザゲームのデバッグを受注した零細IT企業だったのだ!

第1話「俺が間違ったネトゲ廃人を転生させたった日」

ある日。

大学1年生の香取正太郎は、昨晩の合同コンパを後悔していた。

相手は都内の女子大に通う女子大生グループ。

初対面の彼女達に言った言葉。


「好きな女性のタイプは!勇者が出てくる漫画の!強いキャラです!」


正太郎は背も高く、どちらかと言うとイケメンの部類なのにも関わらず、全く相手にされなかった。合コンなど嗜む女子大生とは、経済力のある紳士的な男性と充実したリアルを過ごしたい。社会人や学生起業家が基本的なターゲット層で、そもそもズブの大学生など興味がないのだが…。


それにしても正太郎の発言は特に酷かったと言える。


その翌朝である。


♪~♪


着信音。

正太郎が携帯電話のメッセージアプリを開く。

着信の通知が2件来ていた。


「香取君。昨日の合コンはどうだったの?」

「香取君。カッコつけないほうがいいよ」


メッセージの送り主は村家沙織という同じ学部(文学部)の女子だ。漫画研究部に所属していて、あだ名は何故か「エモン」だった。


「エモンは優しいな。ありがとう。じゃあまた…」


正太郎は彼女が欲しかったがエモンだけは眼中に無かった。エモンはオタク女子で腐女子だった。ノーメイクで眼鏡に黒髪。背も低い。エモンは正太郎が気に入っている様子だったが。


正太郎は、

「バイトしよ!財力!経済力!」

と言うと、コンビニのフリーペーパーで手頃なアルバイトを探した。昨晩は女子大生達から散々釘を刺されるような事を言われてしまった。正太郎は真に受けていた。確かに親の仕送りだけで大学生活を送るのは少し無教養な気もしていたが。


正太郎は、ゲームプログラマの求人を見つけた。


「javascript?」


正太郎は、将来を見据えてプログラミング言語の勉強をしていた。クライアントサイド言語でHTMLやCSSと合わせてWEBデザイナーが使えると仕事の幅が広がると、親切な同級生に言われて少しかじった言語がjavascriptだった。


「未経験者歓迎!学生歓迎!」


求人は未経験の大学生も歓迎だった。専門学校生や高卒者に混じって狭いオフィスでゲームのデバックの仕事をする。ゲームのデバッガーと言えば実際にプレイしてバグを探すものが多い。この求人はインターネットブラウザ上で動くRPGゲームのデバックで、javascriptを書いてデバッグを自動化する系統の仕事だった。


正太郎は早速求人の電話番号に電話をした。

「お忙しい中、恐れ入ります。私は香取と申します。貴社求人を拝見いたしまして、応募させて頂きたくお電話致しました。突然のご連絡で大変申し訳ございません」


正太郎は、奇跡的に簡単な面接でアルバイト入社を許された。


「ありがとうございます」


その日の夕方に雇用先オフィスに見学に行った正太郎は、数名しかいないフロアの奥の席に座る社長と談笑して、雇用契約書にサインをした。会社はブラウザゲームのデバッグの仕事を受注しただけの零細IT企業だった。


「香取君」


「はい!」


「…うん。香取君は『トワイライトジェネシス―西風の魔物とプリンセス―』で遊んだ事はあるかな?」


「…無いです!!!」


「…そうだね。ブラウザゲームで遊ばなそうな人だもんね。…いいよ」


正太郎は漫画は好きだがオンラインゲームやブラウザゲームは全く興味が無かった。漫画は誰でも読むが、ネトゲは廃人が嗜むもの。


その日は数時間パソコンに座らされて作業の説明を受けた。


その後、正太郎は大学の講義が無い日や時間帯にオフィスを訪れては1円でも多く稼ごうと熱心に働いた。




ある日の夜。


正太郎は現実世界と異世界の間にあるオキテを知る事になる。


残業をして退勤が深夜になった。


帰宅途中に近所のコンビニに立ち寄った正太郎は、雑誌コーナーで不思議な装束の人に出会う。


「ハロウィンでも無いのにコスプレなんかして…どうしたんだろう…あの人」


すると不思議な装束の人は正太郎に気が付いてゆっくりと歩み寄って来た。


正太郎は、

「なんですか?」

と聞いた。


不思議な装束の人は、


「香取正太郎ですね?」


と言う。


「…はいそうです」


「貴方がデバックしている『トワイライトジェネシス―西風の魔物とプリンセス―』で自殺者が出ました」


と言った。


そういえば今日データベース周りの障害が発生した。デバッグを受注しただけの正太郎の会社まで動員して対応に追われ、SQLにあまり詳しくない正太郎まで駆り出されて緊急対応したのだった。


そのせいで深夜まで残業したのだが。


「貴方は村家沙織のデータを誤って消しましたね。村家沙織は重課金の廃人だった為、思わずリストカットして本当に死んでしまいましたよ」


「え?」


「現実世界と異世界の間にオキテがあって、ゲームで自殺した人は異世界に転生して命の大切さを学んで貰います。その際、自殺の原因となった人は転生者と同じゲームに異世界転生して、ゲームで遊ぶ人の気持ちのほうを学んで貰います」


「はぁ?!」


そしてワープ魔法のようなものをかけられた正太郎は光に包まれた。


「ちょっとまってくだ…ゲームなんかで自殺する間違った人の責任で…なんで俺が異世界転生し…」


正太郎の叫びは虚しく。


香取正太郎と村家沙織は「トワイライトジェネシス―西風の魔物とプリンセス―」の世界に転生した。


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