この物語は、むかーし昔のお話。
あるところに、万物の創造主である一人の神がおりました。その名は
そしてこれに仕える
そのためか、風貌もよく似ており、人と同じような言葉も話すという。
何よりも同じとされたものは、偉大なる神から与えられた名前と性別。
男の名は『
神から授かった陽の力によって、全てのものに温かな安らぎの光で人々を導き示す。
女の名は『
神から授かった月の力によって、全てのものに静かな優しき輝きで人々を導き示す。
二人は最も
けれど、いくら幾年もの時を仕えようとも所詮は
神の領域にはたどり着けるはずもなく、足元にも及ばなかったらしい。
とはいうものの、病気や貧困で苦しむ者達をこの手で一人でも救いたい。
このように願うも、
未来を導くことはできても、人々の生死は神のみぞ知ること。
ところが、ある時。
二人の脳裏に、一筋の
『もしかして……
こう考えた
しかし、返された言葉は予想と異なる哀しみに満ちた憂い悩むこえ。
『人間を導いてゆくのが
この言葉に、最初は意味が理解できなかった二人も、
それは
これにより、物事が持つ存在価値や重要性。心の想いという在り方。
決して、神の領域には踏み込めない道理を知ることになる。
それから幾年の時が流れたのだろうか……。
二人は
やはり諦めきれないのであろう。
生と死の狭間で生きる人々。
この現実をずっと眺めてきた
こうしていつの日か想いも薄れてゆき、所望も諦めかけようとした頃――。
それは玉のようなものを嬉しそうに抱きしめた老夫婦。そっと両腕で優しく包み込む。
この様子を静かに窺っておれば、聞こえてきたものは言葉ではなく大きな叫び声。
動物の鳴き声にも思えるが、どちらかといえば人間の泣き声に近いだろう。
こうした状況に、老夫婦が抱えたものを遠くから見守る
そこには団子ほどの掌を、ゆっくりと伸び縮めするあどけない表情。
小さな身体で何かを表現しているのだろうか、怒ったり。泣いたり。笑ったり。
一生懸命に訴えかけた様子からは、まるで自分はここにいるよ。そう言っているかのようだった。
そんな姿に、老夫婦は天を仰ぎひざまずくと、涙を流しながら声を発する。
『神様から授けて下さった尊き命。私たちのような者に、このような素晴らしい奇跡をありがとうございます』
老夫婦から発せられた命や奇跡という言葉。
これを聞いた
『もしかして、人間界にこそ私達が求める
神に近づくためには、地上へ降り立ち人間を知る必要がある。
こう考えるも、二人の表情は固く足取りが重い様子。
何故なら、
理由は言うまでもなく、人と
人が持つ負の念に侵されれば、やがて清らかな心は失ってしまう。
この禁忌とされた行いは二つ。
一つが地上への降臨。
にもかかわらず、
これにより、ついには天上を追放された二人。
罰として、地上の大地よりも、南西の場所に位置する
そこは結界でも張り巡らされているのか。もしくは、人払いがされた場所なのであろうか。
容易に大陸からは抜け出すことも叶わず、住んでいた者達は
ある者は、耳や尻尾が生えた獣人。またある者は、牙や角が生えた鬼人。
これらの種族以外にも色々と存在はしたが、どの異形も不思議と意思疎通はおこなえたという。
こうして幾年もの時を地上で暮らす内に、二人は恋に落ちてしまう。
それが、もう一つの禁忌である神使同士の情欲。
この事に激怒した
『
『
なんとも過酷な運命であろうか。
とはいえ、この永遠の因果を断ち切れる唯一の手段があるとされた。
それは神が落とした涙の雫、
これを手にしたものには、二つのどちらかの願いが与えられた。
一つは、闇へといざなう破滅の死。もう一つは、他者を圧倒する破滅の力。
伝承によれば、永遠の命を終わらせることができるのが破滅の死。
不死と転生は
つまり『