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夜叉姫~あなたが私にくれた永遠の愛~
みゆき
現代ファンタジー異能バトル
2024年10月29日
公開日
34,803文字
連載中
【ネオページオンリー】
現世で巡り逢う二人。

惹かれ合う心は、偶然か必然か。

そして、口伝のように伝えられた昔話。

時を越えて、何度も出逢う二人の恋。

しかし、それは決して報われない愛。

愛おしく想うほどに、その恋は引き裂かれるもの。

はたして、この因果関係はいかに?

切なくも愛おしい、恋愛物語。



この物語の世界観はですね、日本を舞台としたもう1つの世界。
実在する滋賀県の白髭神社から始まります。

ベースは日本神話が少しばかり入っており、最終的にはどうして日本という場所ができたのか。
日本に無数に存在する鳥居、これは一体なんのために必要であったのか。

その謎を解きながら旅をしていく主人公。
そして魂魄という道教の概念である魂は天に昇り、魄は地に帰る。

輪廻転生という形で魂を送るわけではないですが、地に落ちた魄をもある条件により人のような姿で蘇らせるのが主人公の烏兎。
それを可能にさせるのが「紅鏡・こうきょう」と呼ばれたもう1つの世界です。

1話では天国をイメージするかも知れませんが、それ以降は現代と並行して存在します。
ですが、そこへ行くには限られた者しか行くことは出来ません。

そんな不思議な世界を行ききする恋愛ファンタジーです。

第1話 永遠の命

この物語は、むかーし昔のお話。


あるところに、万物の創造主である一人の神がおりました。その名は天神あめのみなか

そしてこれに仕える神使しんしと呼ばれた二人がおったそうな。


神使しんしの仕事は、神のめいに従い人間を天から導くこと。

そのためか、風貌もよく似ており、人と同じような言葉も話すという。


何よりも同じとされたものは、偉大なる神から与えられた名前と性別。


男の名は『那岐なぎ』。

神から授かった陽の力によって、全てのものに温かな安らぎの光で人々を導き示す。


女の名は『那美なみ』。

神から授かった月の力によって、全てのものに静かな優しき輝きで人々を導き示す。


二人は最も天神あめのみなかに近い存在。


けれど、いくら幾年もの時を仕えようとも所詮は神使しんし

神の領域にはたどり着けるはずもなく、足元にも及ばなかったらしい。


とはいうものの、病気や貧困で苦しむ者達をこの手で一人でも救いたい。

このように願うも、神使しんしの力程度では助けるどころか死人しびとの数を増やすばかり。


未来を導くことはできても、人々の生死は神のみぞ知ること。

神使しんし達にはどうすることも出来ず、幾日もの間、己の無力さを嘆き悲しんだという。


ところが、ある時。

二人の脳裏に、一筋の光明こうみょうが差す。


『もしかして……天神あめのみなかしか存在しないが故に、全ての人々が救われないのではないのか? であるならば、私達が神になることで、少しでも苦しみから解放できるかも知れない』


こう考えた神使しんし達。善は急げとばかりに、早速どうすればよいか天神あめのみなかに願いを乞う。

しかし、返された言葉は予想と異なる哀しみに満ちた憂い悩むこえ。


『人間を導いてゆくのが神使しんしの務めならば、二人を守り支えるのが神の運命であろう』


この言葉に、最初は意味が理解できなかった二人も、天神あめのみなかの雰囲気から一つの情景が思い浮かぶ。

それは神使しんし達のことをいつも傍で見守り、温かい想いを与えてくれていたこと。


これにより、物事が持つ存在価値や重要性。心の想いという在り方。

決して、神の領域には踏み込めない道理を知ることになる。


それから幾年の時が流れたのだろうか……。


二人は神使しんしの務めを全うするも、どこか表情は優れない様子。

やはり諦めきれないのであろう。


生と死の狭間で生きる人々。

この現実をずっと眺めてきた神使しんし達には、過酷な日々だったに違いない。


こうしていつの日か想いも薄れてゆき、所望も諦めかけようとした頃――。


神使しんし達は何気に天上から人々を眺めていると、何かを愛おしそうに見つめる人間を発見する。

それは玉のようなものを嬉しそうに抱きしめた老夫婦。そっと両腕で優しく包み込む。


この様子を静かに窺っておれば、聞こえてきたものは言葉ではなく大きな叫び声。

動物の鳴き声にも思えるが、どちらかといえば人間の泣き声に近いだろう。


こうした状況に、老夫婦が抱えたものを遠くから見守る神使しんし達。

そこには団子ほどの掌を、ゆっくりと伸び縮めするあどけない表情。


小さな身体で何かを表現しているのだろうか、怒ったり。泣いたり。笑ったり。

一生懸命に訴えかけた様子からは、まるで自分はここにいるよ。そう言っているかのようだった。


そんな姿に、老夫婦は天を仰ぎひざまずくと、涙を流しながら声を発する。


『神様から授けて下さった尊き命。私たちのような者に、このような素晴らしい奇跡をありがとうございます』


老夫婦から発せられた命や奇跡という言葉。

これを聞いた神使しんし達は、なにかを察したかのように小さく呟く。


『もしかして、人間界にこそ私達が求めるすべがあるんじゃなかろうか』


神に近づくためには、地上へ降り立ち人間を知る必要がある。

こう考えるも、二人の表情は固く足取りが重い様子。


何故なら、神使しんしが人間と触れ合うことは許されず、天神あめのみなかからは禁忌きんきとして警告を受けていたからだ。


理由は言うまでもなく、人と神使しんしは相容れない存在。

人が持つ負の念に侵されれば、やがて清らかな心は失ってしまう。


この禁忌とされた行いは二つ。


一つが地上への降臨。

にもかかわらず、神使しんし達は高みを目指すために何度も禁忌の行いを犯す。


これにより、ついには天上を追放された二人。

罰として、地上の大地よりも、南西の場所に位置する磤馭慮島おのころじまという小さな孤島に隔離されてしまう。


そこは結界でも張り巡らされているのか。もしくは、人払いがされた場所なのであろうか。

容易に大陸からは抜け出すことも叶わず、住んでいた者達は異形いぎょうの風貌をした人間達。


ある者は、耳や尻尾が生えた獣人。またある者は、牙や角が生えた鬼人。

これらの種族以外にも色々と存在はしたが、どの異形も不思議と意思疎通はおこなえたという。



こうして幾年もの時を地上で暮らす内に、二人は恋に落ちてしまう。

それが、もう一つの禁忌である神使同士の情欲。


この事に激怒した天神あめのみなかは、二人に最も過酷な重い罰を与えた。


那岐なぎ』には、死ぬことが許されない永遠の命。愛する者の死を何度も受け入れさせる罰。

那美なみ』には、記憶を残したまま永遠の転生。愛する人との別れを何度も受け入れさせる罰。


なんとも過酷な運命であろうか。

とはいえ、この永遠の因果を断ち切れる唯一の手段があるとされた。


それは神が落とした涙の雫、死魂しこんの宝玉である。

これを手にしたものには、二つのどちらかの願いが与えられた。


一つは、闇へといざなう破滅の死。もう一つは、他者を圧倒する破滅の力。


伝承によれば、永遠の命を終わらせることができるのが破滅の死。

不死と転生は一対いっついのようなもの、どちらかを終わらせることにより永遠から解放されるというもの。


つまり『那岐なぎ』の死によって、『那美なみ』の記憶も消え去るであろう…………。


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