第65話 世界最初のハネムーン (8)
【シルフィーヌ】
「……ん? 俺かシルフィーヌ?」
「えぇ、そうです、殿下……。あなたさまでございます」
「俺ならばちゃんとお前達……。妃の事は精神から身体の病の事……。予防するにはどうしたら良いかまで、シンチョウ国の漢方医術迄学んだ医師もこの船には載せているしなぁ、大丈夫だぞ。あっ、ははは」
私の初恋……。幼い頃からルドア兄さまの妃になることを夢見てきた可愛い私なのですが。当家の親族だけでもルドア兄さまや私と年頃が変わらない従姉妹も多く……。本当にライバルが多々いる私だったので、まさかルドア兄さまの御妃さまになれるなんて夢にも思わず……。
私よりは和の国のシマズ伯の従姉の方がルドア兄さまとは幼馴染に等しい関係で仲も大変によいから。私そうだとばかり思っていた。
だから女王陛下の書状をお爺さまから受け取り歓喜した。もうそれこそ? バンザイ! バンザイ! と叫びたくなるぐらい。
でもそんなことをすれば、お爺さまは笑って許してくれると思うけれど? 我が里にいる沢山のお婆さまが伯爵家の娘なのにはしたないと叱ってくると思う? 私のお母さまも、だ。そしてルドアお兄さまにはしたない娘だと思われて嫌われますよと、脅しをかけられ諫められるだろうから。私は声を大にして万歳三唱を上げるのを辞めたぐらい大好きな王子さまなのだが。
私の王子さまは、幼い頃からやんちゃで悪戯っ子……。他人を揶揄して喜ぶ悪癖があるから私はジト目で愛する王子さまを見詰め無言でほんとですか? と尋ねた。
でも私の王子さまはちゃんと妃達のことを考えていると言うから。そうなのだろうと思うけれど。
私も本当はマヤさまの意見に賛成だ。我が国──インドア帝国の旗艦ルナ号の甲板で、こんな卑猥なビキニ水着姿……。特に私は我が家の血筋で胸が大変にふくよかに育つタイプなので。王子さまが私のためにと用意をしてくれた真っ赤な紐で結ぶタイプのビキニ水着は。今にも胸がはみでそうで、私自身も大変に恥ずかしいのでございます……。
でも私の王子さまが、「シルフィーヌは伯母上達によく似てオ〇パイが大きいからよく似合うな! 俺の見立て通りだ!」と喜んでくれましたから。
私としても愛する王子さまに、夜に御側へと呼んでもらいたいので、御機嫌取りも兼ねて、喜んで! と着衣をした訳なのですが。
まあ、夜伽の方は、妃同士で喧嘩にならないようにと順番制なので、王子さまの御機嫌取りをする必要はなかったわよね、と私が少しばかり嘆き、不満を脳内で漏らすと。
「……それに先程マヤが危惧した通りに。俺の妃である大変に麗しいお前達の魅惑的な水着姿を見て欲情をする兵達は多々居ると思う」
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