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第53話 女王陛下からの招待状(32)

「お父様~! お父様~! 何卒! 何卒! 気を静めてください。お願いします。おお願いします。そして私の話を聞いてください」


 私は昨晩父へと嘆願を続けた。


 でも父の荒ぶれた気は収まる事も無く。


「ならぬ! ならぬ! 今直ぐ両者を儂の前へと出せ学園超ー!」


 父は私が全部悪いのに学園へも非を求めようとする。


 だから私は何度も父に自分が全部悪い。悪いのだから。学園に責任を問うような事……。担任の先生に害を加えないで欲しいと嘆願……。


 そしてジョセフや彼の家族に危害を加えるような事は辞めて欲しいと何度も嘆願を続けた。


 すると父の荒い息遣いが少し落ち着いたような気が私はしたので。


「お父様、私は逃げも隠れもしません。そして自害もしませんから。屋敷に戻るのはもう一日だけお待ちください。私も友人達とお嫁に行くからとお別れをちゃんと告げてから。この学園を去りたいと思います。だから最後に娘の我儘……。娘へと慈悲を頂けませんか? 私は嫁に行っても家の恥を晒すような安易な行動は致しません。ちゃんと夫に使え、良い妃を頂いたと言われるように夫へと尽くし、精進を致しますから。何卒、最後の娘の我儘を聞いてください、お願いします……」


 私は涙を流しながら父へと嘆願をした。続けた。


 しかしあの人は、そんなに甘い人物ではないから。


「ならぬ、ならぬ」

「駄目だ! 駄目だ!」

「許さぬ!」と何度も私へと荒々しく返してきたが。それでも私の方が何度も粘り強く、父に頬をあれから、二、三度叩かれたけれど。あの人の足へと捕まり、へりくだりながら根気良く嘆願を続けた。


「分かった、マヤ……。明日の正午には迎えにくる。だからそれまでに友人、知人とのお別れを告げるように。良いな、マヤ~! 約束だからな……」


 父は最後に私へと逃げるな! と。逃げても無駄だ! 地の果て迄儂は探すからな! と釘を刺してきた。


「はい、分かりました。お父様……。本当にありがとうございます……」


 私は泣きながら父にお礼を告げた。


 そして愛する人ジョセフへも何時の間にか、泣きながら同じく説明をしていた。お別れ……。


 彼へのサヨウナラも涙を流しつつ、「ジョセフ、これで永遠のお別れになるけれど。ごめんなさい……。私は異国へとお嫁に行きます……」と最後の別れを告げた。


 でもジョセフは「今から二人で逃げよう。そして隠れて二人で暮らそう」と涙をながしながら私を誰にも渡したくないと言ってくれたけれど。

 私はジョセフ本人だけではなく、彼の一族にも迷惑を掛ける事に必ずなるから、自分の首を振り、再度「さようなら」と別れを告げたのだった。





◇◇◇



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