「えっ、あの、お父様……。少し、少し待ってください。お願いします……。今から帰宅をするって……。ど、どう言う意味でしょうか?」
父は私の長い髪を鷲掴みにしたまま、学園長室の扉へと引っ張りながら向かって歩き始めるのだ。
私とジョセフとの関係を今日で終焉にさせる為に歩き始めるのだ。父は多分私を婚姻の日迄屋敷で監禁……隔離する為……。
そう私がジョセフと駆け落ちでもして王都から逃げてでもしたら父が待ちに待った、女王陛下からの婚姻の話……。
彼の野望を叶える為の駒である私に逃げられてでもしたら父は目も当てられない状態へと堕ちるから。彼は昨晩を私の事を強引に屋敷へと連れて帰ろうとしたのだが。
私が髪と頭の痛みを堪え兼ねながら父へと待って欲しい! とにかく私の話を聞いて欲しいと嘆願を続けた。
「駄目だ! 今直ぐ帰るぞ! マヤ! もうこれ以上、この監視不届きな、学園等に嫁入り前の大事な娘を在学させる訳にはいかん!」
でも憤慨している父は私の言葉……。嘆願に耳を傾けてくれる訳でも無く。父の言いつけに背き、異性を愛してしまい、深い仲へと堕ちった親不孝者の娘を今直ぐ強引に屋敷へと連れて返ると。
「このままマヤ、お前をこの学園へと置いておいたら、明日にでも男と駆け落ちして逃げるだろうから。今直ぐ帰るぞ! マヤ!」
そうあの人も一応は私の親なので、娘の性格を少しばかりは理解をしているようで。昨晩あの人に髪を引っ張られ、強引に屋敷へと連れて帰らされそうになった時に、ジョセフと
「閣下……。娘さんにそれ以上酷い事をするのはどうかと思います? だから閣下、髪を鷲掴みされ痛がる娘さんが可哀想なので。ここは私の顔に免じて解放してあげてください。閣下お願いします」
私の悲惨な様子を見て、学園長が父を諫め、自由にしてやって欲しいと嘆願をした。