でも私は祖父から聞いている。神父さまは魔法の基礎を教えるのが大変にお上手な方だとね。
だって私の叔母さまが東の最果ての国の公爵さまの許へとお嫁にいく時に付き添った領民達の子供達も。この寺院がある小さな町の出身者なのだが、みな貧しいながらも学費をとらない、この寺院で魔法の勉学、技術……。そして算術に文字を学べたことで、叔母さま達や叔父さま達の許で執事やメイドとして使える訳ではなく。
みなさんサムライウォリアーやメイジとなり戦場で戦果をあげる活躍をして、実家に金貨や銀貨……。作物の種を送れるほどの裕福な暮らしができる高級士官へとなっているのだと私はお爺さまやお父さまから聞いている。
それにこの寺院に通い、良い魔法師や算術、政治等の技能士へと育てば、我が家に神父さまが声をかけてくれるので、私の父か祖父の臣下か、海を渡ってインドア帝国や和の国の叔母さま達や叔父さま達の臣下となり。我が一族を支えてくれているのだとも聞いてもいます。
だから私は自分のことを取るに足らない者だと告げる神父さまへと、そんなことはないですよ! と告げようとすれば。
「シルフィーヌさん?」
シスターが私へと声をかけてきたのだった。
「シスター、何でしょうか?」
私は首を傾げ尋ねた。
「今日は楽しみにしている来客があるのだと。朝に言っていませんでしたか?」
するとシスターは私がすっかりと忘れていたことを教えてくれた。
「あっ! そうでした!」
私はシスターの教えを聞き、驚嘆をする。
だって今日は東の遠方から海を旅して来客が訪れる。それを私は以前から心待ちにしていた。
だから私に教えてくれたシスターも神父さまも「ふっ、ふふふ」、「はっ、ははは」と驚愕している顔を見て微笑み始めるから。
私の顔は真っ赤に染まるのだ。
だって神父さまやシスター達も私は以前から心待ちにしていた来客が、憧れの
「シルフィーヌ、今日はルドア殿下がお見えになるのでしょうから、昔話はここらで辞めて、貴女はさっさとお屋敷に帰宅しなさい。この町からお屋敷迄は結構な距離があるのだから」
神父さまは下を向き、照れ恥かしそうにしている私へと優しく告げてくれた。
「は、はい。わかりました、神父さま!」
私は俯いていた顔を上げ、元気よく返事を返すと。
「ではみなさん、シルフィーヌは、今日は帰ります!」と告げ、慌てて寺院の出入り口へと駆け足で向かう。
「あっ!」
でも出入り口へと向かう私は、あることを思い出して驚嘆すれば。
「神父さま~! シスターさま~! ルドア兄さまは、今日は屋敷へとお泊りされるので~。明日の勉強はお休みしますね~」と嘆願する。
「はい、はい、分かりました」
「シルフィーヌさん、気をつけて」
「落馬をしないように気をつけて」と。
この後もシスターや子供達が慌てて出入り口へと向かう私へと優しい言葉をかけてくれたから。
「バイバイ、みんな~。ちゃんと勉強をするのよ~」と。
私は後ろに手を振りながら大きな声を出しつつ、寺院の出入り口を抜ける。
◇◇◇
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