『まだ呪詛をかけている怨霊の類は、相当に力が弱まっているが、フラフラと家や工場、事務所に、居座り続けている…』
3度目の呪詛騒動で、それを確信した私たちは、防戦から反転攻勢に出ることにしました。
本題に入る前に、うちの環境を少し詳しく説明しますと、家の事情が特殊でして、『私の実家』は、亡くなった父の跡を継いだ工場の隣にあります。
そして、私の家は、その家から歩いて、すぐの場所にあるのですが…。
私は、大好きで可愛すぎる妻と、20歳代のうちに結婚をしましたが、実家は2世帯じゃないし、独身の弟もいることから、結婚当初は実家の近くのアパートに住み、その後に実家の近くの土地に家を建てて居を構えたのです。
ド田舎で、土地が安いからこそ、できる技ですがね…。
実家には、今までは独身の弟と、両親が暮らしていましたが、父が末期の肺癌で3年前に亡くなり、最近になって母が敗血症性ショックになった影響で、今は弟が1人暮らしの状態です。
もう、母親は、足腰の奇跡的な回復が無い限りは、家に戻るなんて厳しいでしょう。
うーむ…、悲観的な話をしすぎました…。
話を戻すと、怨霊の類が実家から少し離れた場所であっても、長男の私に呪詛を飛ばすのですから、よっぽど、その力が強すぎるわけです。
母が敗血症性ショックになって、家に帰れない現状ですから、工場と隣接している私の実家は、独身の弟以外は誰も住んでいません。
私の家は、何かあれば、数十秒で工場に駆けつけるぐらいの場所なので、私の家にも怨霊が飛んできているのは間違いありません。
私たちは、呪詛や怨霊を弱める為に、家の中を徹底的に掃除をしながら、お清めの塩やお清めの砂を使って、できる限り『悪いモノたち』を追い出すことにしました。
『悪いモノたち』と、複数形で呼んだのは訳があります。
あの呪詛を仕掛けている女(メインの怨霊)がいることで、色々な悪いモノが、次々と新たな悪いモノを引き込んでくる感じがして、私たちはソレを怨霊集団と呼んでいる訳です。
『せめて、あの女を追い出せなくても、周りの取り巻きを一掃することで、女の力を弱められるはず。』
その作戦を実行する数日前に、弟と仕事をしながら、その件を事務所で話していた時に、私はあるコトに気付きました。
『例え、大掃除をして、塩や砂で家や周りを清めても、しばらくしたら、怨霊集団が入ってくるのは確実だよな?』
私は、ある程度の怨霊集団を追い払ったとしても、再び寄りつかないようにする護符や御札の類いがないか、ネットで検索をしていきます。
お清めの塩やお清めの砂を撒いた程度の力で、あの女が追い払えるなんて考えていませんし、力を弱めたとしても、絶対に実家に居座るでしょう。
そんなことを思いながら、色々なその手のサイトで、自己流でアイツの力を弱めるような手がかりを調べていきます。
『うーん、どうしよう…』
怨霊を追っ払って、近寄らないようにする手段に関して、ネットで、その手のサイトや動画を見ると、様々なことが書かれていますが、直感的に色々とイマイチなのです。
特に、有名通販サイトなどで売られているような御守りや護符の類、それに、カルト宗教系の類は、とても胡散臭くて怪しすぎて、私としては信用がありません。
何度も書きますが、あの呪詛をやってきた、怨霊の頭目(女)は、たぶん、意地でも家に居続けるでしょうから、怨霊や呪詛の力を、今までより力を削ぎ落とすことが、私たちにできる精一杯の対処方法なのです。
私たちには、その手の能力者に高額なお金を払う資金力もないですし、信じるアテもない状況ですから、少しでも力を弱めるコトが大切だろうと思ったからです。
仮に、その手の類の人に、お金を払える資金力があっても、信頼がおける人物なのか…という、基本的な問題もありますが。
その問題について、ある人物?が、突然に答えてくれました。
-それは-
私だけしか気付けませんでした。
弟と例の対処を相談している時に、強い力と同時に、温かみがある雰囲気を漂わせながら、白檀系のお香の匂いが漂ってきます。
それは絶対に、怨霊の類ではありません。
『ん?、この匂いは、豊川稲荷東京別院の奥院のお香の匂い!!』
これで、答えは決まりました。
要するに『吒枳尼真天様がいるから、お前たちは安心しろ』というコトです。
そこに吒枳尼真天様がいるのは分かりますが、私も弟も、ガチで神仏と対話する力なんて、持ち合わせていません。
しかも、弟は全く見えていませんから、吒枳尼真天様は、私に向けて訴えかけているのでしょう。
時折、私は、こんな『匂い』で、何かがいることを感じるコトが希にあります。
亡くなった父が居るときは、ヘビースモーカーだった父のタバコの匂いが、プンと漂うことがあります。
悪い霊の類いは、何とも言えぬ異臭がすることがあります。
私は、そのお香の匂いのするほうに意識を集中して、心の中で吒枳尼真天様に話しかけます。
「吒枳尼天さま、それは、とてもありがたいですが、私たちは厨子を頂く(要するに、豊川稲荷と契約を結ぶコト)のは難しいです。未来永劫、私はともかく、私の子供や孫の代以降まで、吒枳尼天さまを常にお祀りする自信が、本当にありません。」
自分の家に稲荷様を呼んで、神棚で祀ったり、家の庭にお社を作って祀りたい場合は、稲荷神社で招聘の儀式が必要です。
それと同じような感覚で、豊川稲荷で、それと同じ事をしたい場合、豊川稲荷は仏式なので、吒枳尼天様の厨子(本尊)を頂いて、迎え入れる訳です。
でも、稲荷を招聘するのと同じ感覚で、末代までキチンと祀らないと、大変なことになるケースが多々あります。
余談的な説明は置いといて…。
私が、そこまで申し出たところで、まだ、吒枳尼真天様がいる気配があります。
「私は、吒枳尼真天さまが本当に好きです。だからこそ、安易な気持ちで厨子を頂くことはできません。しかし、近々、そちらに行って祈祷をして御札を頂きます。その御札で、お力を頂く事は可能でしょうか?」
吒枳尼真天さまが、私の言い分をシッカリと聞いてくれた気が、なんとなくします。
そのあと、休日の1日目は掃除や塩や砂を撒く日と決めて、2日目の休日は、私と弟だけで豊川稲荷東京別院に朝一番のご祈祷に行き、会社、それに私と弟の御札を頂くことを決めました。
豊川稲荷東京別院では、早朝の祈祷のほうが御利益があるようなコトが書かれていますから、そこに異論はないのですが、早朝から家を出発することに関して、家族全員で行くのは、5歳の娘にとって相当にキツイ現状もあります。
それに、娘が長い祈祷に耐えられない可能性が高いので、ここは、妻や娘、息子のご祈祷は、後日…という流れにしました。
『さてと、どうなることやら…』
これをやったところで、この呪詛騒動に関しては、長期戦になるのは必然となるのです…。