結婚式から月日は三年流れた。
その日、僕は不思議な手紙が彼女宛に届いてるのを見つけた。
差出人は、どうやら僕らしい。
でも、僕には手紙を出した覚えがない。
僕の膝の上には、僕たちの子どもである
僕たちはあの後たくさん話し合い、不妊治療をすることを決断し、無事に子どもを授かることができた。
「ダメー」と笑顔で結菜から手紙を遠ざけていたけど、内心「もしかしたら誰かのいたずらかもしれない」と、僕は少し怖かった。
僕の臆病なところは、簡単には治らないようだ。
でも、このままにしとくわけにもいかないので、手紙を開けてみることにした。
「五年後の花音ちゃんへ。
そちらでは、僕たちは結婚していますね。
なぜなら、僕が花音ちゃんのことを誰よりも好きだからです。
この手紙が無事五年後に届くことを祈っています。
瑞貴より」
手紙は、何と『五年前の僕』からだった。手紙を出した日付も五年前の今日だ。
僕はハッとあることを思い出した。
彼女が「瑞貴ちゃん、未来に手紙を送ることができるのだよ! 素敵だよね。私ももらってみたいなあ」とかなりはしゃぎながら言っていたことがあった。
でも、僕の記憶では彼女がその話をしたのはたった一回だった気がする。
それを五年前の僕が覚えていて、さらに行動に移したことに、自分のことなのに驚いた。
五年前といえば付き合っていた頃で、僕は彼女のことを全然理解してなかった。
だから、彼女には申し訳ないけど、この手紙は五年前の僕の気まぐれだろう。
それでも、きっと僕なりに彼女のために何かしようと思ったのは、なんとなく文面から伝わってきた。
でもきゅんだけじゃなく、いろいろなものが足りていない。
僕は、今日話そうと思っている壮大な新婚旅行のお話が終わった後に、この手紙を彼女に見せて、この思いを共有しようと考えた。
「パパ、まだ?」と結菜は諦めていないようだった。
「これは、パパが大事な人に書いた特別な手紙だから、結菜には見せてあげられないのだよ。ごめんね」と申し訳なさそうに言った。
結菜は言葉の意味はわらなくても何かを感じたようで、「私も私も」と大声を上げていた。
「結菜にも、きっとあっと驚くような手紙をくれる素敵な人が将来現れるよ」と、僕は結菜の頭をなでた。
そうしているうちに、彼女が料理を終え僕の方に来たので、「花音ちゃん、すっごいお話があるのだけど聞いてくれる?」と抱きしめたのだった。