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第17話

 銀河帝国歴三八四三年五月十三日


 ミーナ達一行は、定期便に乗っていた。乗ってきた宇宙船の燃料漏れの修理は、カーマン宇宙港のゴタゴタで一週間かかると言われた。その為、ミーナ達はカーマンから出ている定期便が出ている宇宙ステーション、バップまで行き、そこで歴史遺産・遺跡管理局の専用宇宙船の出迎えを受ける。別途、故障している宇宙船は、宇宙船用貨物船で歴史遺産・遺跡管理局に運ぶ手筈になっている。

 そしてエルとエムを加えた一行は今、バップへ向かう定期便のファーストクラスに乗っている。

「お前さん方二人には聞きたい事が多くあるのだが」

 ハチベイがエルとエムに切りだす。エルがエムの顔色を窺う。

「答えられる事なら構いません。難しい話なら、エルに聞いてください」

 エムはそう言うと腕組する。

「と言う事です」

 エルはニコリとしながら言った。

 するとステーブやレオポルドまで機関銃のように質問をぶつけて来る。

「一つずつでお願いします。クマイア様みたいに複数の質問を一回で聞き分けられませんので」

「クマイアって一体何者だ」

 ハチベイが聞く。

「クマイアと言うのは偽名で、本当の名前は私達も知りませんが、通り名はエルフなら皆知っている『長老』です」

「長老?」

 ハチベイが聞き返す。

「あ、あの人が長老様なのですか!」

 レオポルドが驚く。

「知っているのか?」

 ハチベイがレオポルドに尋ねる。

「エルフなら誰でも知っていますよ。と言うか正体は誰も知らないのですが」

「正体を知らなければ意味がないだろ」

「正体を知らないのは私達も同じです。あの方が私達エルフに長老と呼ばれている方であると保障します」

 エルが答える。

「そんな事を保障されてもな、地球人にどの程度の影響力があって、どんな能力を持っているのかが知りたい」

「影響力と言っても、権力はお持ちではありませんが、地球人なら大概長老様を敬愛しています。能力は変身する能力と魔法とほぼ不老不死ですね」

「そのほぼ不老不死ってどういう意味だ」

 ハチベイは頭を抱えて尋ねた。

「肉体を一瞬で蒸発させない限り死なないレベルの事をほぼ不老不死と定義しています。神に等しい不死性です」

 エルが真顔で言っているので、これ以上聞くのを止める。

「では、なぜミーナは起きない」

「この前説明したと思いますが、魔法力を使い果たし、スリープモードに移行したと思われます」

「なんだか曖昧だな」

「私達は医者ではありませんから、推測で答えるしかありません」

「それで、その魔法力を使い果たした、あのサイバーナーブパラライズの術は何なんだ? 敵にだけ効果があり、俺のクティーガルには影響が全くなかった」

「呪文を聞いていないので詳しくはわかりませんが、おそらく、サイバーエネミーナープパラライズの術だと思います。その術だと見方には影響なく使えます。サイバーナーブパラライズの魔法より、かなり高度なので魔法力を大量に消費すると思いますけど」

「それで魔法力を使い果たしたと言う事か……それじゃあ、最後、どうやったら起こせるんだ」

「起こしたいんですか?」

「起こさない訳にも行くまい。それにお前はこいつを導くのが任務なんだろ。起こさないでどうやるんだ」

「簡単ですよ。食べ物を与え続けるか、点滴で高カロリーのエネルギーを与え続けるしかありません」

「この前食べてたメルドネル人のお菓子を口に突っ込めば良いんじゃないの」

 エムが口を挟む。

「寝ている奴に食べさせられるわけないだろ」

 ハチベイが反論する。

「大丈夫よ。口に入れた瞬間に魔法エネルギーに変換されるから」

 この前宇宙港で買ったお菓子をレオポルドが準備する。そして、エルが無造作にミーナの口に突っ込む。

「確かに菓子が口の中で消えた」

 ハチベイも感心する。

「この調子でいろいろ突っ込んじゃえ」

 ステーブがお菓子をミーナの口に突っ込み始める。

 ミーナが全然目覚めないので、全部突っ込んでしまった。

「おい。全然目覚めないじゃないか」

 ハチベイがジト眼でエルを見る。

「おかしいわね」

 エルが首を傾げる。

「一つ、私の推論を言って良い?」

 エムが尋ねた。

「なに?」

「スリープモードが解除された後、そのまま寝ているだけじゃないかしら」

「お腹減ったー」

 ミーナが寝言を言った。

「まだ腹減っているんかい!」

 ハチベイが突っ込む。

 ミーナが目を覚ます。

「ここはどこじゃ。お腹が減った何か食べ物はないか?」

 仕方なくレオポルドがスチュワーデスを呼ぶ。

「ご用は何でしょうか?」

 スチュワーデスはニッコリほほ笑む。

「あれ、あなたはカーマン宇宙港の売店で売り子をしていませんでしたか?」

 ステーブが気が付く。

 スチュワーデスは、売店ヤスカロウで、ミニスカートメイド服で売り子をしていたピィだった。

「今は、この宇宙船の客席乗務員をしております」

 ピィはそう言うと、お得意の営業スマイルをする。ヤスカロウでメルドネル人用のお菓子を売り付けた事でクレームが付けられないか心配で仕方ないのに、頑張っている。

「メルドネル人用のお菓子とかないですか?」

 ステーブはピィの手を取り尋ねる。

「メルドネル人用のですか?」

 ピィは尋ね返す。

「はいはい~。お持ちしました~」

 チーデスがメルドネル人用のお菓子を持って登場する。

「あるだけ頂くよ」

 ステーブが景気良く買う。

「経費で落ちるからって、買いまくりやがって」

 レオポルドが言う。

 チーデスが全部持ってくる。

「結構置いてあるんだねえ」

 ステーブの額に汗が流れる。

 「あれ、君もカーマン宇宙港の売店で売り子やっていたよね」

 ステーブは驚きながら尋ねる。

 その会話の間にエルは、ミーナにメルドネル人用のお菓子を口に入れる。

「こら、金払う前に食べさせるなー」

 落ち着きのない一行にハチベイは溜め息を吐く。

 こんな感じにミーナ達一行の旅は続くのだった。

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