「狼藉三昧もいい加減にしなさい」
ミーナの声がターミナル内全域に響く。
爆発したソードチャリオットから立ち上る煙の中から巨大な人型、アーマードバトルスーツの影が現れる。
敵味方関係なく、声のする方を見る。
「な、なにあの影は!」
五十八番ドックで見ていたハチベイの秘書オウグィンが言った。
煙が薄れ、本来そこにあるはずのソードチャリオットではなく、キラキラ輝く美しいアーマードバトルスーツの姿が明らかになる。
「あ、あれは、伝説のアーマードバトルスーツ、ゴットオブゴッズ……」
ステーブがポツリと言った。
あまりの美しさに一同驚いている。
ゴットオブゴッズが何処からか巨大な杖を取りだした。
「反省し、出頭するなら許そう。まだ狼藉を続けるならお仕置きだ」
いつものミーナの口調とは違うが、声はミーナの声だ。
「ギャーハッハッハッハッハ!!」
ドドリアンのパイロット達が笑う。
「状況をわかってないバカがいるようだな。わからないならもう一発だ」
管制室のロンが、爆弾のリモコンスイッチを入れようとした。その時、壊れた扉の穴を通して、リモコンスイッチを持ったロンの腕をエムが撃った。その為、ロンはスイッチを落とす。
管制室には、まだもう一人ロンの仲間がいる。その仲間が機関銃でエムに反撃する。
「そろそろお仕置きタイムだ」
ゴットオブゴッズは杖を掲げる。
「カーツ!」
そう言うと杖は消える。数秒間、間が空く。
「ハチベイさん。後は任せましたよ」
そう言うと、ゴットオブゴッズは五十八番ドックへ歩き出す。
「ま、まて」
ドドリアンがゴットオブゴッズを制止するため、動こうとした時、ドドリアン九機全機が膝を突いた。
「う、動かない。ドドリアンが動かない。何が起きたんだ」
ドドリアンのパイロット達が口々に言う。
「あっちの勝負はついたようね」
そう言うとエムは、隙を見てスイッチを銃で撃ち抜いた。
「チェックメイトよ。銃を捨てて投降しなさい」
エムは投降を呼びかけた。それに対し、ロンはニヤリとすると、もう一人の仲間に目配せする。
「わかった、わかった。お前のがんばりには呆れるぜ」
ロンは銃を捨て、両手を上げてエムに近づいてくる。もう一人も機関銃を捨てる。
「そっちも手を上げなさい」
そっちにエムは銃を構える。
「今だー。キンやれ」
ロンがエムの銃を持つ手に飛びかかる。その隙にもう一人の仲間キンがリモコンスイッチを取り出し押した。
ロンもキンも勝ち誇った顔をした。
しかし、何も起こらず数秒経つ。エムはロンの顔面に肘鉄を喰らわせた。その為、ロンは床を転がる。
「あ、そうそう。使った魔法は、アーマードバトルスーツの動力を麻痺させるだけでなく、爆弾のリモコンも不能にするから、ターミナルビル内の狼藉者もとっとと捕まえなさい」
そう言うとゴットオブゴッズは、五十八番ドックの中へ消えて行った。
ロンもキンも爆弾を爆発させられない事を悟った。そして銃を構え撃とうとした時、エムの銃が二度吹き、弾き飛ばした。
「勝負あったわね。それとも生き恥をさらしたくないのかしら」
遠まわしな言い回しだが、エムは投降を呼びかけている。
ロンとキンは銃を撃つ。エムは壁に隠れやり過ごす。
その後、ロン達のターミナルビル内で活動していたメンバーは抵抗を続けたが、エムとクマイア、宇宙港の警備員によって制圧した。
十四時二十分 五十八番ドック
ゴットオブゴッズが五十八番ドックに入る手前で足を止める。
「あ、そうそう。使った魔法は、アーマードバトルスーツの動力を麻痺させるだけでなく、爆弾のリモコンも不能にするから、ターミナルビル内の狼藉者もとっとと捕まえなさい」
ミーナはそう言ってから、中へ入って来た。
「す、凄い。これが伝説のゴットオブゴッズ、神が着る鎧。伝説に違わない」
ステーブが言った。
「さっきの魔法は本当にサイバーナープパラライズの術か!」
サイバーナープパラライズの術とは、アーマードバトルスーツの動力系統を麻痺させる魔法である。
「ミーナ様に確認したら良いんじゃないか?」
レオポルドが言った。
「夢をみているのかしら」
オウグィンが言った。
するとさらに目を疑うような事が起きる。目の前のゴットオブゴッズが、光に包まれたかと思うと、光の中からソードチャリオットが現れた。
「なによ。ゴットオブゴッズがまたソードチャリオットになった。どうなっているの」
オウグィンが混乱して言った。
皆の驚きに全く気にもせずにエルがソードチャリオットのコックピットへ行く。ハッチを開けると、ミーナはコックピットで熟睡していた。
「あらあら」
エルは見かけに寄らず力があり、ミーナをあっさり抱き上げると、ソードチャリオットから降ろした。
「この子一体何者?」
遅れてやって来たオウグィンが尋ねる
「ミーナ様は女神です」
エルは当然と言わんばかりに言った。
「そんなこと知っているわよ」
「わかっていないから疑問に思うんです」
エルの言葉に、オウグィンは愕然とするしかなかった。