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第11話

 十四時十分 五十八番ドック


 ハチベイは、ドックから外のターミナルを見た。

 大破した宇宙船が炎上しており、十機のアーマードバトルスーツがターミナルビルに爆弾を仕掛けているのをハチベイは確認する。

「なんて奴らだ」

 また、ターミナルビルの方から爆発音がする。

「ターミナルビルのどこかで爆発したみたいね」

 エムが言った。

「ひとごとのように言いやがって、罪もない人が殺されているんだぞ」

 ハチベイが食ってかかる。

「それがどうした。可哀想だと憐みを感じれば、助けられるとでも言うのか」

 その時、放送が流れた。

『今の爆発は我々が仕掛けた爆弾のものだ。同じモノをターミナルビル中に仕掛けた。死にたくなければ降伏し、武器を捨てて待合ロビーに集まれ』

「な、なんて事だ」

 レオポルドがうろたえる。

「どうしましょう。ここにも爆弾が仕掛けられていたら」

 ステーブが怯えて言った。

「ゲートの電源が落とされて、閉じられていたんだから、こちらに爆弾があるわけないでしょ」

 エムが呆れたような表情で言う。

「では、しばらくここは安全なのですね」

 エムは肯く。

「それなら、ハチベイさんはアーマードバトルスーツで外の敵を倒してください。エムさんは内側の敵を倒してください」

 突然ミーナが言った。

「あなたの指示に従う気はないわ。私の使命はエルを守ること」

 突然、エルがエムの口に人差し指で押える。

「私は大丈夫よ。本当はエムちゃんも人質にされている人達を助けに行きたいのでしょ」

 このような状況でも、のんびり口調のエルが言った。

「そうだけど、私が行った所で、人質を盾にでもされたら手だしのしようがないわ」

「それなら問題ありません」

 ミーナが突然口を挟む。

「どうして?」

 エムが聞く。

「さっきの放送はどこからされたものでしょうか?」

 ミーナが突然質問した。

「多分管制室じゃないかしら」

 エムが答える。

「敵のリーダーもおそらくそこにいるでしょう。そして、爆弾のリモコンスイッチも」

「それじゃあ、管制室に行って、敵のリーダーを倒して、リモコンスイッチを奪えと言うの!」

「それしか、状況を打破する方法はありません」

「銃を持った連中はどうするのよ」

「それはクマイアとか言うのに、任せると良いでしょう。連絡をとる方法はあるのでしょう?」

「携帯電話があるけど、向こうが出られるかわからないじゃない。戦闘中なんだし」

 そんな会話中にエルは電話を掛けていた。

『もしもし』

 クマイアはあっさり電話にでた。

「クマイア様。お願いがあります」

 緊張で張りつめた空気に似つかわしくない、のんびり口調でエルが言った。

『なんだ』

「これからエムちゃんが、管制室へ敵のリーダーをやっつけにいきますから、ロビーの人質を守ってください」

『わかった』

 そう言うとクマイアは電話を切った。

「えー。一人でそんなことできるんですかー」

 電話の会話を聞いていたレオポルドが言った。

「クマイア様は、神にもっとも近いエルフだから」

 エルはそういうとニッコリする。

「なんで私が管制室に行くことまで約束するのよ」

「がんばって来てね」

 エルがニッコリすると、エムは諦めた表情をする。

「危なくなったらすぐ私を呼び戻すのよ」

 エムがそう言うとエルは肯く。するとエムは走り去る。

「本当にあいつ等だけで大丈夫なのか?」

 ハチベイは言った。

「今は信じるしかありません。ハチベイさんは早くアーマードバトルスーツで出てください」

 ハチベイは宇宙船のハッチに向かう。宇宙船の中に格納されているアーマードバトルスーツ、クティーガルに乗る為に。

「ハツィイヴェーイルシュライン様。おかえりなさいませ」

 身長二メートルでナイスバディのメルドネル人の女が出迎えた。彼女はハチベイの秘書のオウグインことオウグィンニィである。

「オウグィンニィ。クティーガルをだす」

 ハチベイは、廊下を歩きながら、後からついて来るオウグインに言った。

「しかし、武装解除されたままですが」

 オウグインは言った。

「非常事態だ。外のドドリアンを殲滅する」

「了解しました。すぐ準備に取り掛かります」

 レオポルドとステーブはオウグィンに着いて行く。

 ハチベイはクティーガルのコックピットの封印を解除すると乗り込む。スイッチが入るとユーザ認証し、起動する。

「ロックを解除してくれ。クティーガルでる」

 オウグィンは、クティーガルのロックを解除すると宇宙船のハッチを開ける。

 クティーガルは宇宙船を降りると、ドックのゲートを開けるスイッチをひねる。ゆっくりとゲートが開いていく。

「武器を全然持っていないのに大丈夫でしょうか。ドドリアンと言えど十機もいるのに」

 レオポルドがオウグィンに聞く。

「聞くだけ愚問です。あなたのお友達はハツィイヴェーイルシュライン様の勝利を確信しているみたいですよ」

 レオポルドは横で目を輝かせているステーブを見た。

 ステーブの本業は、アーマードバトルスーツの技師であり、目の前で銀河最強と言われているクティーガルの戦闘が生で見られるからだ。

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