十三時三十五分 ミーティングルーム
クマイアはエルとエムと別れた後、別の狭いミーティングルームに移動し、ノートパソコンをインターネットにつないで調べ物をしていた。クマイアは、もちろん調べ物をしたいからミーティングルームにいるわけだが、このミーティングルームに移動したのは別の理由もあった。
クマイアが使用しているにも関らず、マッカル人が一人入ってくる。
「姉ちゃん。いつまで占領しているんだよ。邪魔だどけ」
当然、使用中のミーティングルームをどく必要などない。後から入って来た方が譲るべきである。
クマイアは上目遣いで、マッカル人を見る。
「そのスーツケースの中にある爆弾を仕掛ける為にですか」
X線検査でもしない限り、中に爆弾が入っていることなど分からないはずなのに、あっさり言い当てられ、マッカル人は慌てる。
「なに」
マッカル人は懐から拳銃を取り出し構えようとする。しかし、クッマイアはそれよりも速く、剣を取り出しマッカル人の胸を貫き、壁に縫い付けた。
「ば、ばかな。さっきまで丸腰だったはずなのに」
「ワザと急所を外しています。でも、少しでも動くと大量出血しますよ」
クマイアはパソコンをシャットダウンする。
「貴様は何者だ」
「これでも魔術師です。そうですね~。今はクマイアと名乗っています」
クマイアはパソコンの電源が落ちたのを確認すると右手をパソコンに手を当てる。するとパソコンは消えてなくなる。
「パソコンが消えた」
マッカル人はそれを見て驚き言った。
「消えたわけじゃないですよ。しまっただけです」
「その魔術で剣をだしたのか」
クマイアは、マッカル人が持ってきたスーツケースを開けるとビニール袋を二つ取り出す。ビニール袋から爆弾を取りだす。
するといつの間にか出した工具で、起爆装置を解除し始める。
「どうして俺達が爆弾を持っている事を知った」
マッカル人は、想定外の出来事に信じられず、思わず聞く。
「どうしても何も、私は危険を見破る特殊能力があるんです。なにぶん長生きしているといろいろありまして。これでも、あなたが想像できるよりも長い時を生きてますし、いろんな修羅場を潜り抜けてきました」
クマイアはあっさりと二つの爆弾の起爆装置を解除してしまった。
「俺をどうするつもりだ」
「それはあなた次第です。あなた達の目的、仲間の人数、設置予定の爆弾の数と位置。洗いざらい話してくれるなら助けてあげましょう」
「ふざけ……」
マッカル人が動いた為、傷口から血が噴き出す。
「無茶すると本当に死にますよ。科学的医療ではあなたは絶対に死にます。生きたければ、魔術による治療が必要ですが、治癒魔術が使える仲間でもいますか?」
マッカル人は絶望した表情になる。
「私の治癒魔法なら死なずに済みますが、どうしますか?」
「仲間を売るもんか!」
そう叫んだ所で傷口から血が噴き出す。口の端からも血が滴りだす。
「仕方ない、苦しみを長引かすのも可哀想ですね」
そう言うとクマイアは躊躇なく剣を引き抜く。するとミーティングルームは血の雨が降り、床は血の海になった。
「このままでは戦いづらい。姿を変えますか」
胸元が開いた黒いドレスを纏った雰囲気のある美女だったはずが、スーツ姿の若い男に姿が変わっていた。
「さて、鬼退治に行きますか」
十四時 管制室
ロンは五人の手下と管制室まで来ていた。管制室の入り口に、二人のウルクス人の警備員がいた。
ロンはサイレンサー付拳銃で二人の警備員を撃ち殺した。ウルクス人の肌の色は緑色であり、血の色も緑色であった。その緑色の血が床に広がる。
管制室の扉を開けると、一気にロンを含めた六人が入り込む。
「な、何者だ!」
サイレンサー付拳銃で声を出した職員をロンは撃ち殺した。そしてターミナルビル内放送用マイクのスイッチを切る。
「我々の許可なしに動くな。勝手に動いたら殺す。こいつのようにな」
ロンが言った。
管制室には、二人のマッカル人と四人のウルクス人がいた。その内一人のマッカル人がロンの凶弾で死んだ。
「警備室の方はどうだ」
携帯電話で連絡取っている男が、親指を立てて返事した。
「よし。予定通りだ。アーマードバトルスーツ部隊に合図だ」
別のメンバーが管制室の無線を使い、アーマードバトルスーツ班のギャギに連絡を入れた。