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第7話

 遡って十時三十分 ロモーシ町


 ロモーシ町は、カーマン宇宙港の北、電車で四十分ぐらいに位置している町である。

 カーマンでは大きな方で、三十万人程度の人口で、カーマンでは発達している町である。

 そのロモーシ町の裏通りの廃屋ビルの地下室にマッカル人が三十四人集まっていた。そして、最後の三十五人目が来た。

「遅いぞ」

 リーダーのロンが言った。

「すみません」

「全員集まったな」

 ロンは、人数を数え始める。

「昨日、各々の役割を話した。A班の二十五人は車で宇宙港へ行き、決められた各所に爆弾を仕掛けてから事を起こす。B班の十人は、アーマードバトルスーツで所定の場所まで行き待機、合図があったら事を起こす」

 ロンはニヤリとして言った。メンバーは全員相槌を打つ。

「よもや自分の役割を忘れた奴はいないな」

 ロンは、ギロリと一人一人の目を見て行く。

「お前ら、わかっているな。これは我々マッカル人から富を奪う地球人と、その地球人と組む堕落したマッカル人にお灸をすえる為にするんだ。悪は奴らだ」

「おー!」

「俺たちは正義だ」

「おー!」

「怖気づいた奴はいるかー」

「ブー!」

「いくぞー」

「おー!」

「お前らいくぞー」

「おー!」

 A班は武器や爆弾の入ったスーツケースを大型バスに積み込み、B班はマイクロバスに乗り込むとさっさと出発する。


 マッカル人達は、宇宙港を襲撃し、定期便の宇宙船強奪を企てていた。その計画は次の通りだ。

 十一時に、A班は武器や爆弾を積み込み大型バスでロモーシを出発、B班はアーマードバトルスーツでロモーシ外れの廃工場を出発。

 十三時に、A班は宇宙港ターミナルビルに到着、ターミナルビルに爆弾を設置開始。

 十四時に、A班ターミナルビルジャック開始、B班ターミナル警備アーマードバトルスーツに攻撃を開始。

 十四時十分に、宇宙港全体を制圧。

 十四時三十分に、到着する定期便を奪取、宇宙へ逃走後、宇宙港を破壊。


 大型バスに武器や爆弾を詰め込むとA班が出発したころには、B班はロモーシの外れにある廃工場へ到着していた。

 その廃工場は超大型の農業用ロボットの生産工場だった為、大きなスペースがあった。そのスペースに、体長十八メートル程度の人型ロボットが十機置いてあった。そのロボットこそ人間が搭乗し操作する戦闘ロボット、アーマードバトルスーツである。

 マッカル人達のアーマードバトルスーツは、パワー重視のマッカル人用でドドリアンと言う。見かけはずんぐりとした機体だが、強力な火力を持つ名機である。

 しかし、このドドリアンを設計および製造しているのは、主に地球人であることは、彼らは気にすることなく、使用している。

「どうした。準備終わったのか?」

 B班の班長ギャギがボーとしているメンバーの一人、ランバに聞いた。

「いいえ、ですが、宇宙港を本当に爆破していいものかと」

 ギャギはランバの顔をグーで殴る。

「ここに来て怖気づいたか!」

 ランバの口の端から少し血が滲む。

「マッカル人の富をだまし取る、地球人を殺すのは何とも思いません。でも、我々の同胞のマッカル人まで巻き添えになる」

 宇宙港で働く職員は地球人より、マッカル人の方が圧倒的に多いのだから、ランバの言い分ももっともである。

 さらに言うと、地球人はマッカル人と正当なビジネスをしているだけで、だまし取ってなどいなかった。だまし取っていると、彼らが勝手に思い込んでいるだけである。

「少々の犠牲は止むを得ない」

「ですが、地球人に鉄槌を下すだけなら、他の施設を狙えば良いじゃないですか」

「リーダーを信じろ。考えるな。俺達の未来はロンの導く先にあるんだ」


 カーマンは、先住のマッカル人によって開拓された惑星である。しかし、工業も経済も開発が遅れ、貧しい惑星だった。

 そこに新風を入れたのは地球人だった。

 地球人はまず、豊作で余った農作物を購入することから始めた。

 マッカル人は、どうせ腐らせるぐらいならと思い、地球人に売った。

 地球人は買った農作物を他の惑星で売り、お金に換えた。そのお金で他の惑星で売れそうな農作物を作ってもらえるように、農家のマッカル人に依頼し、作ってもらう。それをまた、他の惑星に売りに出して……

 これを繰り返し、地球人は先住のマッカル人から信頼を受け、富を築いた。一方、先住のマッカル人にとっても、カーマン内で売るよりも利益が出るし、地球人がカーマンのインフラ開発も進めてくれるので、地球人との取引を歓迎した。言わば、共生が成り立っていた。

 そこに現れたのが、移住組のマッカル人だ。

 近くの惑星で戦争があり、傭兵として雇われていたが、終戦と同時にお払い箱になったマッカル人だ。

 徐々にインフラ整備が進み、将来性があるとされているが、まだ貧乏惑星にすぎない。その貧乏惑星に大勢のマッカル人が移住してきた。初めは受け入れていたが、キリがない上に、少しできた余裕も彼らの為に使い果たしてしまった。

 それだけでなく、元軍人の能力を利用して犯罪に手を染める者まで現れ始め、先住マッカル人にとって、移住組は疎ましい存在に変わっていった。

 それを感じ取った移住組は地球人に八つ当たりし始めた。

 そのとばっちりで、地球人と先住組の間までキグシャクし始めた。

 ここで地球人に去られると『折角発展しかけたカーマンがまた元の貧乏惑星になりかねない』と感じた先住組が新たなマッカル人の受け入れを拒否したり、素行の悪い移住組の一部を惑星外追放したりするようになった。

 この三十五人は、その移住組のマッカル人であった。

 ランバは言い含められて、ドドリアンに乗り込んだ。



 再び十三時 宇宙港バスターミナル


 マッカル人達A班は、宇宙港バスターミナルに到着した。メンバーはぞくぞくと大型バスから大きなスーツケースを持って降りて、ターミナルビルへと入っていく。

 リーダーのロンが指を鳴らす。

「ようし。はじめるぞ」

 A班はターミナルビル内に入っていくと自分の役割を果たす為に散らばって行く。

 バスターミナルからの入口傍のトイレに一人のメンバーが入っていく。大便用の個室に入るとスーツケースを開ける。スーツケースの中には六つのビニール袋と、機関銃一丁と拳銃三丁入っていた。ビニール袋を取りだすと、目立たない場所に置いて、スーツケースを閉じる。

 ビニール袋には遠隔操作で爆発させる事ができる爆弾が入っているのだ。

 男はそのままトイレを出て行く。

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