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第6話

「な、なにをした」

 ハチベイが戦闘態勢を取る。それに呼応するようにエムも戦闘態勢をとる。

「もう少し美味しい物はなかったのですか?」

 声はミーナの声であったが、口調や雰囲気は全然違った。

「それしかなかったんです。次からは蜂蜜つけましょうか?」

 エルが聞いた。

「そうしてください」

 ミーナとエルがどことなく穏やかな空気に包まれているのに、それとは対照的に、ハチベイとエムはピリピリした空気で張り詰めていた。

「何が起きたんだ。ミーナ」

 ハチベイが聞く。

「レディを呼び捨てにするべきじゃありませんわ。ハチベイさん」

「レディー」

 ハチベイ、レオポルド、ステーブの三人の声が揃う。

「慌てる必要はありません。セーフティモードからパワーセーブモードに移行しただけです」

「なんだ、そのセーフティモードからパワーセーブモードに移行したって」

 ハチベイが突っ込む。

 ミーナが口調こそ大人っぽくなったが、大食いは変わっていないらしく、メルドネル人用の菓子を食べている。

「これだけ食べても全然お腹の足しになりません。お腹の足しになるものないかしら」

 ミーナはハチベイの突っ込みをスルーした。

「パワーセーブモードでは、食べ物の七十パーセントが口内で魔法力に変換されますから、もっとカロリーの高い物を食べたらどうかしら」

 エルののんびりした口調から信じられない単語が並ぶ。

「そうしましょう」

「まだ食うんかい」

 レオポルドとステーブが突っ込む。

「だから、パワーセーブモードってなんだー」

 しつこくハチベイが突っ込む。

「ミーナ様の基礎代謝は二十万キロカロリー。地球人成人男性の百倍食べ続けないと飢え死にしてしまいます」

 ミーナの代わりにエルが、のんびりした口調で説明する。

「大食の俺達メルドネル人でも一日あたり、一万キロカロリーなのにか!」

 ハチベイが驚きながら言った。

「その膨大な基礎代謝を抑える為に、いくつかのモードがあるんです」

 エルは、動じることなく、のんびり口調で解説する。


 ミーナには以下の五モードがある。


 ・通常モード

 ・エコモード

 ・パワーセーブモード

 ・セイフティモード

 ・スリープモード


 通常モードは、ミーナの本来の能力を思う存分使用できるモードで、基礎代謝が二十万キロカロリーとなる。

 エコモードは、本来の六十パーセントの能力しか使えないモードだが、基礎代謝が十二万キロカロリーとなる。

 パワーセーブモードは、本来の三十パーセントの能力しか使えないモードだが、基礎代謝が六万キロカロリーとなる。

 セイフティモードは、活動が可能な最低限のモードで能力も普通の少女なみの能力しか使えない。その代わり、基礎代謝は二千キロカロリーとなる。

 スリープモードは、生命維持する為のモードで仮死状態になり、基礎代謝はほぼゼロに近いカロリーとなる。


「ミーナ様にそんな機能があるとは知りませんでした」

 レオポルドはエルの長い説明に感服している。

「機能とは人聞き悪い。わたしはロボットではありませんよ」

 少し不機嫌そうに、ミーナは言った。

『な、何者だ!』

 館内放送がそこで途切れる。

 一同は、全員落ち着いているが、空気は急に張りつめる。

「なんでしょう。今の放送は?」

 ステーブが誰に聞いたのか分からないが、質問するかのように言った。

「確かに気になるな。一応、問い合わせてみよう」

 ハチベイが言った。

 ハチベイは、エリートであるにも関わらず、とにかくフットワークは軽く、実直だ。

 今回も、ハチベイはすぐに行動に移った。

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