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第5話

 十三時三十分 ミーティングルーム


 クマイアが、エルとエムが待つミーティングルームへ戻って来た。

「もう済みました。自分の任務を果たしにいってらっしゃい」

 クマイアはニッコリしながら言った。

 エルとエムは、元気に返事をする。しかし、クマイアは浮かない顔をする。

「悪い風がこの宇宙港に吹き込んでいます。早めに接触してください」

「は、はい」

 宇宙港内は、空調が整っており、当然、風など吹いていないので、二人は不思議に思うが、ミーナの元へと急ぐ。


 十三時四十五分 待合ロビー


 ミーナとレオポルドとステーブの三人は、ハチベイと合流する為に待合ロビーのベンチに座って待っていた。ハチベイはロビーにきて、それを見つけるとミーナ達の傍まで行く。

「ハチベイ様。準備できましたか?」

 レオポルドが尋ねた。

「燃料漏れが起きているそうだ。どこから漏れているのか検査にもうしばらくかかる。修理はそれからだ」

 ハチベイが答えた。

 こんなわけで、ミーナ一行は宇宙港で足止めを食うことになった。仕方ないので、ハチベイの秘書のオウグィンことオウグィンニィが戻ってくるのを待つことにした。

「ところでオウグィン様はどちらへ?」

 レオポルドが尋ねる。

「燃料漏れの原因が人為的なものでないか、宇宙船の監視モニターのチェックをしてもらっている」

「それならすぐには戻ってこられないんじゃないですか?」

「なんでも何とかって言うソフトを使用すると数時間でチェックできるそうだ」

「はあ、そうなんですか」

 一行が話しこんでいると、神官エルフのエルとエムが近づいてきた。

「何者だ」

 ミーナの前に立ちはだかるようにハチベイがすごみながら言った。

「神官エルフのエル」

「同じく神官エルフのエムです」

「さっきの占い師の先生が言った通りだ」

 レオポルドが二人の神官エルフを見て嬉々として言った。

「そんなのさっきの占い師とグルかも知れないぞ」

 ミーナが後ろでお菓子を食べながら言った。

「ミーナ様。その空腹が治まらない理由が知りたくはありませんか?」

 エルがのんびりした口調で言った。

 二人の美少女の登場でもう一人の男ステーブも嬉々とした。

「お嬢さん。あの食いしん坊をどうにかできるのですか?」

 ステーブはそう言いながら、突然二人の元にやって来てエルの手を握ろうとする。

 ピシッ!

 エムがステーブの手を叩いた。

「俺を無視して話を進めようとするな。なんの目的があるのか知らないが、なぜミーナに近づく」

「私は、ミーナ様が正しい道を選択できるように導くのが使命です」

 エルが答える。

「正しい道とはなんだ」

「ミーナ様が選ぶ道です」

 エルの答えに、ハチベイは首を傾げる。

「ミーナが選ぶ道が正しい道なら、お前が導く必要はないだろう?」

「ミーナ様が本来の力を発揮できる状態なら問題ないでしょう。でも今の状態で正しい道を選べるでしょうか?」

「それでは、正しい道を選べるようにできると言うのか?」

 エルは肯く。

「ではそちらは?」

 ハチベイはエムに尋ねる。

「私の使命はエルの護衛です」

「え。ミーナ様の護衛ではなくですか?」

 レオポルドが突っ込む。

「ミーナ様は我々よりはるかに強いのに、なぜ護衛する必要があるのでしょうか」

 エルとエム以外は、考えられない回答に、理解が追い付かず、思考が停止する。

「良く分かっておるじゃないか。神を良く理解しておる娘じゃ」

 自分より年上に見えるエムに、ミーナが言った。

「とにかく、お前達が神官エルフとやらである証拠はない」

 ハチベイは二人を認めようとしない。

「二人は、ミーナ様の空腹が治まらない理由を知っているみたいだ。どうでしょう。ミーナ様の空腹を解消できたら、神官エルフと認めては」

 ステーブが珍しくまともな事を言った。ハチベイやレオポルドは肯く。

「ねえ、エムちゃん。アレをするとミーナ様の空腹が治まるかなあ」

 エルがエムに聞く。

「アレの後そのメルドネル人用のお菓子を食べれば、少しは腹の足しになるんじゃない」

 エムはあまり真剣に考えた感じではない。

「ちょっと待て、ミーナが食べているその菓子、メルドネル人用じゃないか?」

 ハチベイは、エムのセリフでミーナがメルドネル人用の菓子を食べている事に気づく。

「本人が上手いって言っているんだから大丈夫じゃないか」

 ステーブは関心なさげに言う。

「大丈夫じゃないだろ。メルドネル人用の食品は人間にはカロリー過多だろ」

 ハチベイが焦りながら言った。

「今のミーナ様ならその程度のカロリー、魔法力に変換してしまうから問題ないです」

 エムが断言する。

「それじゃあ、そろそろミーナ様をパワーアップしますね」

 エルはミーナの元に近付くと、ハンカチを出しお菓子で汚れた口のまわりを拭く。

「ごめんなさい」

 エルはそう言うとミーナの口に物を押し込む。おっとりしているようで大胆にやった。

「まずー!」

 ミーナの悲鳴が響く。

「な、何を喰わせた」

 ハチベイが驚き慌てる。しかし、ミーナが急に激しい光を放ち。あたりにいた者全員が視界を奪われた。

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