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第3話

 同時刻十三時 土産物屋、ヤスカロウ


 ピンクのミニスカートメイド服を着た二人が売り子をしていた。一人は地球人の少女で、もう一人はネバーラン人だった。

 地球人もネバーラン人も惑星カーマンでは少数派である。

 元々、惑星カーマンには、知的生命体は住んでいなかった。そこに惑星カーマンを発見した、マッカル人が移住し、開拓を始めた。そして、大農業惑星となった。

 大した歴史がある惑星ではないが、その為、この惑星の人口の八十パーセントがマッカル人だった。


 土産物屋ヤスカロウには、二人も売り子が居いるが、全く暇そうである。それもそのはず、宇宙港の広さに対して人が少ないのだから。

「あ~。暇」

 地球人で、赤い髪のショートヘアの少女ピィが愚痴る。

「楽してバイト代出るんだから良いじゃない」

 ネバーラン人の少女チーデスが試食品用のお菓子を食べながら言った。

 ちなみにネバーラン人は、地球人に似ているが、地球人よりやや小柄、髪は金髪、耳は尖っていて、華奢な体つきをしている。

 ネバーラン人の特徴もあってか、地球人の感覚からすると幼女に見えなくもないが、人間に換算すると十五、六歳ぐらいで、ちゃんとアルバイトができる年齢だ。

「あんたは本当に呑気ねえ。商品が売れてボーナスが出るように頑張ろうと思わないの?」

 ピィは溜息を吐く。

「でも、この店の店長に商才がないって言ったのはピィじゃない」

 別にピィに商才があって言っている訳じゃない。ピィにはまともな知能と判断力があるだけである。

「普通商品は、売れそうな分だけ仕入れるでしょ? あの店長そう言うのお構いなしじゃない」

「そうなの?」

 チーデスの答えにピィは呆れる。

「おーい。バイト二人こっち来い」

 マッカル人の店長が呼ぶ。

 マッカル人は、百三十センチメートル前後の身長でずんぐりした体形をしており、皮膚が真っ赤である。アゴの犬歯が尖っているのが特徴だ。

 地球人的には、凶暴そうに見えるが、特にそんなことはなく、個体差はあるので一概には言えないが、普通は温厚な種族である。

 二人は店長の元へ行く。

「お前達に朗報だ。この宇宙港にメルドネル人が来ているのを知っているな」

「はい」

 ピィが答える。

 ピィは宇宙船のドックから、メルドネル人二人と大勢の地球人が降りてくるのを見ていた。

 メルドネル人は、大からの種族なので、惑星カーマンに居たら、まず目立つ。

「それでメルドネル人用の土産を仕入れた」

 そう言うと、ピィに納品伝票を見せる。商機と見ると動きが速いのは良いのだが、その動きは常に暴走であった。ピィはその納品伝票を見て唖然とする。

「この商品ってそこにある箱がそうですよね」

 ピィは恐る恐る尋ねる。

「さすがピィ。地球人は頭が良い」

「ええ。地球人の平均並みに頭良いと思います~」

 ピィは上辺だけは繕っているが引き攣り笑いだった。

 一箱二十五個入りで五十箱も仕入れている。それに対して購入する可能性がある人物はたったの二人。どうやっても売れ残るのは必至だ。下手すると一個も売れないかもしれない。ピィはそれを理解しているだけで、このバカ店長は理解していない。

 ちなみに、マッカル人みんながバカなわけではない。この店長だけの特徴である。

「この商品を全部売ったら、ボーナス出すからな~。ガンバって売ってくれ。一箱は試食用に使っても良いから」

 そう言うと笑って奥に行ってしまう。

「四十九箱も売れるか!」

 ピィは怒る。

「メルドネル人が来ているって言っても、二人だけだもんね。確かに四十九箱は売れないわ~。別の種族に売っちゃえば。例えば地球人とか」

 チーデスが言う。

「売れるわけないでしょ」

 種族によって食性がまったく違うのだ。メルドネル人に食べられるからと言って、他の種族も食べられるとは限らない。ただ、メルドネル人の食料は、比較的多くの種族でも食べることができる事で有名ではあった。が、問題はあった。

「でも、メルドネル人の食べ物は地球人も食べられるんでしょ」

「毒じゃないけど、カロリー高すぎ。これ一個二千キロカロリーもあるのよ。これ一個で成人男子が一日で摂取するカロリーなんだから」

「つまり食べるととっても太っちゃうって事?」

 ピィは沈黙で肯定する。

「大変だね。これは何がなんでもメルドネル人に売り付けないとね」

 チーデスが悪戯っぽく笑う。

「でも、どうやって」

 ピィはジト目でチーデスを見る。

「あいつらの仲間に地球人の子供がいたじゃない。その子供を利用するのよ」

「だからどうやって」

「あたしがどうにかするから、ピィは周りにいる大人をどうにかしてよ」

「トラブルは起こさないでよね」

「わかっているって」

 二人は持ち場にもどる。

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