さぁ、まずは状況を整理してみようじゃないか。
まずは俺こと、神崎八尋(21歳)。日本に暮らす平々凡々なゲームが好きな、ただの一般人のゲーオタだ。
そして俺の妹の陽菜子(14歳)。極度の人見知りで引きこもりだが、実は好奇心旺盛なことを除けば、こちらもただの一般人のオタクだ。
そして幼なじみの和泉伊織(16歳)。文武両道で、引きこもりな妹の家庭教師をして貰ってる。自慢のできる幼なじみだ。ちなみに、こちらは非オタクだ。
そんな俺たち三人はある日、突然現れた謎の少女Aから渡された箱を開けてみたら、なんとゲームソフトが入ってた! 好奇心旺盛な妹は、早速起動しちゃうよね! そしたらビックリ! 気づいたらファンタジーな異世界に飛ばされた!!
訳も分からずに立ち往生してたら、妹の姿がなくて俺はもう焦る焦る。そしたら妹ったら、謎の木の化け物に追っかけられてて。(もー何してんだよコノヤロー☆)
色々あったが木の化け物、改めキミーとは和解に成功! めでたしめでたし!
……なーんて上手いことは行かず、今度はキミーが見つけたのは、気絶した白装束の人物。頭から血を流してて大変! 手当して介抱してたら目が覚めて、話をしてみたら凄くいい子! なんとこのセージくん、王都で神官をしてるんだって! (わーすごーい)
でもでも、まだ苦難は続くの。なんとセージの話によれば、日暮れまでに森を出ないと、危ない魔獣たちが出るんだって! なんてこった!! (パンナコッタ!!)
セージの探し物を手伝いつつ、森を抜けようって話になったんだけど、ここでも大問題! なーんと! セージは目的地につけても
地図はあるけど、誰も読めない! 今いる場所も分からない! もー絶体絶命! どうなるの俺たち!?
え? なんでこんな口調なのかって? そんなの決まってるじゃーん☆
「現実逃避だよ!!」
俺は全身全霊を込めて、この森に響き渡るくらいの声量でそう叫んだ。そして遅れて、微かに山びこのように返ってくる。
妹は不振な顔をし、セージは驚いて目を大きく開いている。
「ヒロくん、誰に言ってんの?」
「えっと、大丈夫ですか? ヤヒロさん?」
約数十分前にセージのマイペース&マイナスイオンオーラにより、セージへの警戒を多少解いた妹は、二人で全然目覚めない伊織の様子を心配そうに見つつ、近くに生えてる植物をキミーを含めて共に眺めて解説していた。
「全然大丈夫じゃねーよ! なんだよこの状況! 絶望的すぎんじゃんか!?」
好奇心旺盛なトラブルメーカーな妹に、未だ起きない幼なじみ! さらに謎の植物(?)の化け物のキミーに、帰省本能が皆無な迷子の神官!!
はー地図読めねぇ! 字も読めねぇ! GPSがあるわけねぇ! 電波なんて無いからさ、検索かけてもグールグル! なんなら四方の方角なんざ、全くもってさっぱりだ!
「オラこんな状況嫌だ! オラこんな状況嫌だ! 森の外へ出るんだ! 森の外には、街があるんだ!!」
とうとう現実逃避しだした俺に、妹が冷静な声で諭す。
「落ち着きなよヒロんくん。あまり大きい声を出すと、キミーが怯えちゃうよ」
『ガウゥッ……』
「すまんキミー! だがお前ら、あまりにもマイペースすぎるだろ!? このヤバい状況を何とか打破するための方法を、少しは考えろよ!!」
「す、すみませんヤヒロさん……!」
セージが謝り出そうとするのを、妹はセージの目の前に手を伸ばして制止した。
「だってイオがまだ起きないから、移動しようにも出来ないよ?」
「それはそうだが、森から出る方法を考えることは出来るだろ!?」
俺の言葉に妹は、ふっと目を閉じて首を横に振る。
「ヒロくん……別に私はセージさんとキミーと共に、ずっと遊んでたわけじゃないよ」
「そ、そうなのか妹よ?」
俺はセージとキミーをチラッと見る。一人と一匹は互いに顔を合わせては首を傾げ、見るからに頭の上にハテナマークを浮かべている。
「おい、本当なのか? 妹よ……?」
「勿論!」
俺は妹の提案を聞くために座り、代わりに妹は勢いよく立ち上がって腰に手を当ると「ふっふーん!」と鼻を鳴らし、「さぁ聞くがいい!」と指先で天を指す。
「ここは森の中! しかし、セージさんの話によれば昼間は行商人や街の人が通れるほど、安全との事! つまり探せば必ず
妹は『ドヤさぁ』とドヤ顔をしながら、俺を見下ろす。
「どうですかお兄様! この完璧な妹の考えは!!」
「先生ー、質問いいですかー?」
「何ですか? ヤヒロくん?」
「その街道は一体どこにあるんですかー?」
「………………!!」
妹はセージから地図を貰うと「どこですか?」、「ココですよ」と教えてもらった。
「こ、ココだよヒロくん!」
「はい、先生ー。そもそも、ココはどこ何ですかー?」
「ぬっ……!!」
妹は再びセージから地図を貰うと「
そんな妹を冷ややかな視線で見る。当の妹と言ったら、額に手をかざしながら「ふっふっふっ……」と格好つけている。いや、意味がわからない。
「君のような勘のいい大人は、嫌いだよ……」
「いや、普通に考えれば分かるだろ。つか、それ言いたかっただけだろお前」
妹は地図をポイッと投げると「わー! いい考えだと思ったのにー!!」と地面に突っ伏し、悔しそうにジタバタと暴れだした。
俺は地図を拾いあげて見てみる。あぁ、サッパリ分からんなコレ。
「もういい! キミー! 遊ぼう! 現実逃避だよ!」
そう言いながらキミーの枝に乗って、きゃっきゃと遊び始める。この妹の切り替えの速さといい能天気さに、冷静さを取り戻した俺は何度目かのため息を着く。
「はぁー。イオなら少しはこの状況を何とか打破するための方法を、思いついてくれないだろうか……」
この中で一番優秀で賢い幼なじみに願いを託しながら、俺は気絶する伊織の隣に座る。
そんな願いを託された幼なじみが起きたのは、この数十分後であった。