少女はいつも同じ絵を描き、心の中で話しかけて、遊んでいました。
スケッチブックに描かれた淡い月色に輝く、白いリボンをつけたウサギ。
名前はロア。
少女の好きな絵本に出てくる魔法使いの少年がつれているウサギです。
魔法使いの少年の友達で、広い世界を一緒に、どこまでもどこまでも旅をする――そんな物語。
繰り返し繰り返し読んだ絵本はボロボロです。それでも、少女はこの絵本を手放そうとはしません。
なぜならばそれは、少女を可愛がってくれた青年がプレゼントしてくれた大切なものだから。