目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
ロボット薬局実験中!

 その日の午後、会社の人の「こんにちはー」と言う威勢の良い挨拶と共に待ちに待っていた『ころさん二号』がやって来ました。

 これはどんなクリスマスプレゼントよりも嬉しい限りです。

 プレゼントはいくつになっても嬉しいもので、来年は何ですかねぇ? って言ったら宮上さんが「楽しそうで何よりだな」と言って仕事をしていました。

 私だって仕事があったら仕事をしますが……ないのです。そのうち真面目にしますが……。

 そんなスーパーロボット整備、宮上さんにもしてはならないことが最近増えました。

 それは薬剤師ロボット『ハクイさん』の整備です。

 ハクイさんはこれから自動更新に切り替えだそうです。

 何でも責任の所在を明確化しようという動きから……との噂です。

 こうした事も疑似街では日常茶飯事です。

 宮上さんは「これで少しは楽になる」と言っていました。

 ということは……今度は叱られ屋さんのシカコさんが大事にされそうです。この私、達に。

 それから数日後、今年最後の月初の医療事務最大の仕事というか毎月ハクイさん頼みのレセプト作業確認もたった今、無事に終わり、私は何もやることがなくなりました。

 はあ、レセプト……日々の入力、確認がちゃんとしていれば何ら問題がないのがレセプト。返戻……一つの数字が間違っていただけでも戻って来るもの、一つのミスが最大のミス……。

 医療事務最大の仕事……と言っても過言ではないとかって数十年前は言ってましたが、今ではそれはロボットの仕事です。それでも、お金の問題になってくるのでレセプトは慎重にやらないといけないのです。

 人間の私の仕事と言えば、それに関する限り、その書類に不備がないかを最終チェックするくらいです。

 それが私の最大の仕事でもあります。と言うのは声を小さくして言います。働いてないって言われない為です。

 そして、いつもの通り、宮上さんは奥でロボット整備してます。宮上さんはこういうの全然ノータッチなのでいなくても大丈夫なのです。

 でも、ハクイさんが壊れたら即、呼ばせていただきますけど……。

 はあ、やることがないとつまらないですね……。

 患者さんが来てもやることないですし、会社の人が来ても話は全部宮上さんに……ですし、きれいにしたいと思う掃除場所もないですし、ころさんとシカコさんは今、宮上さんの所だし……。

 壊れたわけではないです。ただ、一応念のためのメンテナンスだそうです。

 よく分かりませんが。

 はあ……、あ! そうです。あの会社の人が先日持って来たあのパンフレットを読みましょう!

 良い暇潰しになります。きっと――。



「そして、あのパンフレットを読み、いくつか該当し……、それで怖くなりました。もしかして……? というやつです。なので、ちゃんとその病院に行ったら……、案の定、私は『アンドロイド疑い』でした。そして、選りに選ってその対象者となった人は、『宮上さん』でした。でも、宮上さんは全く動揺していませんでした。何でも過去二回ほどその『アンドロイド疑い』の対象者になっているそうです。その話が聞けたのは昨日の夕方、二回目の通院でその病院に一緒に行って今後どうして行くのか……の話し合いに行ったからです。そして、今日の今、夕方までかかってしまった三回目の通院で帰りがけのバス停にてあなたにこうして出会ったんです。会社の人さん。どうすれば良いと思いますか?」

「そう言われちゃうと治すべきですね、とことん。と言うしかないですね。全てを話されてしまったなら完治を望みますよ。僕としては」

「そうでしょうね」

 私がそう言った隙に会社の人はバスが来ないかと一瞬、確認しました。でも、来そうもないようで話し続けました。

「一人目は若社長の妹さん。二人目はなんか良い感じだった女性ひと。そして、三人目の今回は……」

「誰がなったかなんて興味あるんですか? 会社の人、さん」

「ないですけど……そう呼ぶのやめてほしいですね。今、会社帰りなんで、俺。それに駒村さんと俺、そんなに年、変わらないんですよ」

「そうですか。じゃあ、言いますけど……どうやってその人達は完治したんですか?」

「ああ、一人は風邪で、もう一人は夏バテで治ったそうです」

「それで治っちゃったんですか……」

「ええ、治ってしまったようです。どんなのかは僕にも分かりませんが」

「そうですか……」

「信じられないでしょうがそうなんです」

 そう言い終わるとまたちらっとバスを確認しました。

 まだのようです。

「私、全く予期していませんでした。自分が『アンドロイド疑い』になってしまうなんて……。今でも信じられません。自分が初期のアンドロイド疑いなんて……。そう思ってもそうなのです。確実に。だって、それが判明したのは……病院に行ったからです。かなり困りました。だから、『他人迷惑病』だなんて言うんですね」

「そんなに考え込んでも仕方ない病気ですよ。これは……。それに宮上さんは駒村さんよりも経験豊富なはずです。だから、信じれば良いんですよ。宮上さんを」

「それが出来ていたらこうならなくて……良かったんですけどね」

 そう言ったところでバスが来ました。

 私はバスに乗らずに帰りました。

 空を見ながら歩きたかったからです。

 泣くためではありません。気持ちをそっと晴れやかにするためです。



 今日も何もなく、一日が過ぎていきそうです。

 どうしましょう……。

 そう思って何となく辺りを見回せば、ロボット薬局の休憩室に置いてあった一冊の分厚い紙の辞書が目に入りました。

 これは……手に取るべきですね。

 日頃、辞書を引くというのは……あまりやりません。

 だって、そんなに困らないからです。

 誰かに訊けば教えてくれますしね。

 でも、今は……誰にも訊けない状態です。なので、引いてみました。適当に。

 そしたら、三つほど自分が気になる単語が書いてありました。

 自分なりに意味を解釈して読んでしまいましたがこれで少しは分かりました。

【アンドロイド疑い】――あんどろいどうたがい。人間をアンドロイド? と思ってしまう人間の心の病気。一種の人間不信に陥っている状態。大抵の場合、対象者が何かしらの病気(風邪、骨折等の入院……といったアンドロイドでは到底そうならないと考えられる状態、状況)になればその人のことを人間と思え、元通りの日常生活が送れるようになる……という厄介な病気。医師から「あなたには『疑い』がある」と言われても隔離はされない。

 対象者となった人はずっとその患者が「この人は『人間』だ」とはっきり思ってくれるまでしつこく何かをさせられる危険性がある。ので、直ちに逃げるか本気で一緒に完治するまで付き合うかのどちらかを選ばなければならない。

【他人迷惑病】――たにんめいわくびょう。人間の心と身体(眼)の錯覚が原因と思われる。心の錯覚が一番重症とされている。『アンドロイド疑い』の別称。

【栄次社】――えいじしゃ。会社の人、宮上さんが勤めている(た?)会社の通称。正式名称は『株式会社栄次』、社名の意味は『次に栄える為にある』という意味があったりする。今は若社長が頑張っている。ロボット、アンドロイドの開発、販売、貸し出しが主だが修理等もやっている。業界一の大企業になりつつある。

 と、そこまで読んでいたら仕事を終えた宮上さんが休憩室に戻って来ました。

 私は何とはなしに宮上さんと話をし出しました。

 お医者さんの話では少しでもギクシャクしないように注意すること……と言われたからです。

 それはたぶん完治に至るまでの間に今の関係を悪くしないようにという配慮でしょう。そして、私が完治した時に少しのわだかまりを持たないためでしょう。

 でも、わだかまりが残ってしまったら……、私は間違いなく今の仕事を辞めるしかありません。

 そんなのは嫌です。

 いや、仕事をそんなにしなくて良いとかそういう問題ではありません。

 好きな人探しをしなくてはならないからです。

 別に結婚が嫌いなわけではありませんが……。こんなことで仕事を辞めたくはないのです。

 それだけです。

 でも、対象者の宮上さんにとっては『こんなこと』ではないはずで……。

 だから、私はアンドロイド疑いの話をしませんでした。自暴自棄になりたくはありません。

 だから、他愛もない話です。

「宮上さんってその名前だからロボット整備の職に就いたんですか?」

「は? この時代、この仕事が一番稼げるからだ」

「そうですか。私はもっと楽な仕事ないかなぁ……って思ったからです。そしたら、こんなに暇でちゃんと月給もらえる仕事就けたんです」

「それは駒村だけだ。普通はもっと大変なんだけどな……、疑似街以外の所で働いてる人達はこの実験の苦労知らないである物をそのまま使うだろ」

「ふんふん」

「楽だよな、一番。だって働いてるのは大抵アンドロイドだろ」

「そうですよね……。私の家、それダメだって言ってこうして私は働かされてるんです。人口増加よりも大切なことがあるって。自分達親は看てくれる人いるから良いだろうけど私はいないじゃないですか! どうしてくれるんですか! 私の老後」

「そのためのロボット、アンドロイドだろ」

「あ! こういう感じのコマーシャルこの前やってましたよね? その後やはりその恋人役の人達はあのまぶしい」

「あ、客」

 良い所で宮上さんはそう言いました。

「え? 患者さんですよ! 宮上さん」

 そう言って私も耳を澄ましました。

 何やら店の方から人の声がします。

 でもどこかで聞いたような声です。

「ああ、そうか。そう呼ぶんだっけ? 客のこと」

「だから、患者さん!」

 そう言って私は気になり、お店の方に行ってみることにしました。

 もしかしたらハクイさんやシカコさん達が壊れてしまっていて対応が上手く出来ていないかもしれません。

 でも、お店の方に行くとそこには……。

「あ、どうもこんにちは。患者さんじゃなくてすみませんねぇ」

 と言う会社の人がいました。

 また今日もちょっとチャラいです。スーツですけどチャラいです。たぶんその雰囲気がいけないのでしょう。

「今日もアンケートの方、よろしくお願いします。とロボット整備の宮上さんに言って来てくれますか?」

「あ、はい。分かりました。少々、お待ちください」

 今日も少し態度が上からでした。

 とは付け加えない感じで休憩室にいる宮上さんに言いました。

「会社の人です。今日もアンケートだそうです」

「そうか。……同い年、なんだっけ? その会社の人と駒村」

「そうみたいですが全然関係のない人ですのでその結びつきはしないでください。あの人は都会の人、私はここの人です」

「ここねぇ……。まあ、いいや」

 そう言って宮上さんは会社の人と話すためにお店の方に行きました。

 あんまり好みの人ではないので良いのです。こんな感じで。会社の人とは。



 私は宮上さんがお店の方に行ってから今一度考えてみることにしました。

 この休憩室で。

 どうして私が『アンドロイド疑い』になってしまったかを――。

 確かあの喫茶店に行った頃からだと思います。

 宮上さんの行動を目の前で見ているにも関わらず見ていない感じでした。

 これが始めだとすると……結構な時間が経っているわけですがどうしてそんなことになってしまったのかと言えば……結局私は宮上さんに興味がなかったわけですね……。

 だから、ちゃんと見ていなかったのかもしれません。

 その上、宮上さんは仕事を全然休みません。

 かなりの健康を持っている人です。

 風邪とかも全然ないようですし……。

 見るからに健康。それはロボットなら当然のこと……。

 ここの思考が間違っていたのかもしれません。

 原因は私の思考の思い込みといったところでしょうか。

 私以外の人ならばそう考えないのでしょうがそう考えてしまったらもうおしまいかもしれません。

 自覚はなしに。

 だから、私はまた休憩室に戻って来た宮上さんにぶつけてしまいました。ぶつけたってどうにもならないことを。強く。

「宮上さん、健康過ぎるから。だから、私、アンドロイド疑いになっちゃったんじゃないんですか?」

「そうかもな」

 あっさりと普通に宮上さんは肯定しました。そして、微笑みました。

 別にそういう状況ではなかったのに、どうしてでしょうか?

 腑に落ちません。

「駒村、そう考えるな。考えたら考えただけますます深くなっちゃうんだから。この病気は」

 宮上さんは自分のことよりも私のことを言ってくれました。

 心配してくれているのでしょうか、自分が私の対象者なのに。

 逃げる人もいるくらいの病気の対象者なのに。

「そんなこと考えたってもうそうなっちゃってるんだから、だったら今をどうするべきか、今後をどうして行くか……考えるべきじゃないのか?」

「今後……そんな前向きなこと、考えられるんですか? 宮上さん」

「そうだ。いつ俺が健康でいられなくなるかなんて自分でも予想がつかない。そうだろ?」

 こくんと私は頷きました。

「だから、そういう原因とかはもう、分かってるんだ。あとは一緒に治して行くだけだ。完治を目指して。面倒だとかはもう、俺は考えないようにしてるんだ。この件に関しては。考えただけでバカらしくなる病気だからな。これは。あっという間にそれになったらあっさりと治るんだ。いつもそうだ。他人に迷惑かけたって良い病気なんだよ。この病気は。そうじゃなきゃ治らない病気なんだから」

「そうですけど……」

「ずっとそうやってぐるぐる考えることになっちまうぞ。そんな感じじゃ。お前、そういうの苦手だろ」

「そんなことはありませんよ」

「でも、そうなるんだよ。これは逃げじゃない。完治させるための第一歩だ。終わってから思い出せば良い事だ。そんなこと。そうしたらけろっと『どうしてこんなことで私、悩んでたのかしら?』ってなるからさ。大丈夫だよ」

 まだ微妙な顔の私に宮上さんは言いました。

「お前の面倒はこれだけじゃないだろ。いつもどっさりってこともないけどあるだろ? あれが。それに比べたらまだ良い方だ。これは」

 そう言って私を一人残して宮上さんは仕事へと戻って行きました。

 私は完治しなきゃいけない人間です。早く完治して対象者である宮上さんを楽にしてあげなければなりません。それが私の目標です。


 *


 その日は年明け、数日後のことでした。

 寒い冬の日です。

 でも極寒というにはまだ早い感じでした。

 その日の宮上さんはいつもの白い薄汚れた作業着ではありませんでした。

 なんと、スーツでした! 黒のスーツです! ビシッとネクタイまでしています。

 どこに行くのでしょうか?

 と私が心の中で怪しんでいるとその手の中に何故だか『ころさん』が見えました。

 店から出て行こうとする宮上さんを私は急いで呼び止めました。

「待って下さい。宮上さん。その手の中にある物は何ですか?」

 宮上さんはすぐに答えました。

「ころさんだが?」

「どうして……。っていうか、どこに行くんですか? その格好で」

「会社だ。当たり前だろう。じゃなかったらこんな格好するか。それに駒村には先日、『ころさん二号』が来ただろう? だから、これは返却して来る。いくらお前が話をしていたところでずっとこれじゃあな……。全く意味のないロボットだ」

 そう言われてもころさんはずっところころしているだけでした。

 頑張って宮上さんの手の中で体の部分をころころさせています。

 出来る限り。

 とっても健気です! ころさん!

 だから、私は抗議をしました。宮上さんに。

「もうちょっと待ってくださいよ! 宮上さん! もしかしたら……があるかもしれないじゃないですか!」

「そうは言うがな。駒村、どうしたって新しい方がハイテクだ。旧型は蓄積しかできない。それ以上はどうしても新型が勝っちまうんだよ。だからな、俺だって、お前がこいつのことをすごく、ものすっごく好きなの知ってるさ。寝てる顔見てたら分かる」

「そんなの! そんなの、いつ見たんですか! 宮上さん!」

「いつも大体お前は寝てるだろ? 昼休みとか午後とか……休憩室とかで、寝過ぎだ」

 注意をされ、沈んだその隙にころさんは宮上さんに連れて行かれました。

 宮上さんが戻って来た時、もうころさんは私の所に戻って来ないでしょう。

 絶対に。

 だからって宮上さんをえい! なんて言って殴ったりしません。

 そう、宮上さんの心を殴ったりしません。

 ……私はもう大人です。人間です。我慢が出来ます。だから、悲しいです。

 そうしたら、そんな気持ちが伝わったのでしょうか?

 ころさん二号が急にウィーン……と起動しました。

 まさかそんな!

 今まで全然そんなことなかったのに……。これはもしや、壊れたのですか!

 私が触ると大体の物が壊れるというあれですか!

 内心はどうしましょう。どうしましょう! 宮上さん! です。

 でも、もういません! 頼れる人はこの薬局にはいません。

 いつもひょっこり現れる会社の人も来そうにないですし……、どうしましょう! です。

 そんなことをやっているところさん二号が私の手の中で言いました。

「整備、順調?」

「整備?」

「うん、整備順調」

 そう繰り返しただけで会話終了。それ以降全く何もありません。動きません。

 これはやっぱり……、壊れてしまったようです。普通に完全に。はあ……。

 ころさんは言葉を一言も発さなかった代わりにころころするだけで順調でしたが……。

 これは宮上さんが戻って来たらひどく叱られることでしょう。……この私が、です。

 理由、考えなくては。壊れた理由。そして、代えの物をお願いしなくてはなりません。まずは……。

 宮上さんに連絡が最優先なんでしょうが……怖くてできない私です。

 やっぱりここでも『どうしましょう』が続いてしまいました。



 こっくりこっくりしているうちに気付いたらなんと二時間も経っていてびっくり!なんてことは今日が初めてのことです。本当です。

 は! とした時、会社からすでに戻っていた宮上さんがじーっと私の方を見ていました。

 何だか気恥しいです。

 でも、宮上さんがじーっと見ていたのは私の前に置いてあった完全に壊れたころさん二号でした。

 宮上さんはいつもの調子で言って来ました。

「これ、壊れてるだろ? 駒村」

「え」

 びくっとしながらも私は頑張りました。出来るだけ。

「何だそのいかにもな反応……」

「いえ、これはその……そう、ころさん二号も冬だからと冬眠をなさっているのですよ」

「どういう言い訳だ? それは」

 宮上さんがとっても怖くて私はすぐに正直に言いました、というか即刻謝りました。

「ごめんなさい。すみませんでした! 宮上さん。壊れました。ころさん二号……たぶん」

「さっそくか……」

 そんな私にそう言って宮上さんは少し頭を抱えて数秒黙って考えましたが。

 さっさと対応していました。

 そして一時間もしないうちにあの『ころさん』が戻って来ました。

 今までこのロボット薬局にいたころさんです!

 これは宮上さんと会社の人のおかげです。

 ありがとうございます! お二人とも!

 と言いたい気持ちでいっぱいで……。でも、それを言ったら私が責められるのは分かっていたので顔だけで表現していました。

 そうしたら宮上さんに不気味な奴だな……。と言われました。

 どういうことですか! それは! などと問い詰めているうちに会社の人はころさん二号を持って帰って行きました。

 そして、落ち着いてみると普通にさみしい感じになりました。

 今まであったものがぽっかりとなくなると本当にぽっかりしてしまいます。

 そんな心の状態の私に宮上さんは優しくガツンと言ってくれました。

「駒村……、ちょっと良いか? 軽度のアンドロイド疑いを遥かに超えたものがそれだ! 駒村。お前が今、いや、正確には数時間前か? それをやったことでこうなってしまった。一体俺の行動は何だったんだろう? ってことになってしまった。だがしかし……。まあ、駒村も無自覚でそうなってしまうからさほど責める気はないが……。極力、こうならないように努力してほしいものだな」

 それは無理です……。という顔を返したら、宮上さんは、

「分かってるよ。そのために俺がいるんだろ? この俺が」

 と自信あり気に言いました。それはそうなのですが……。

 何だかとってもずるい気分になりました。

 それでも今日もこのロボット薬局は実験中! なのです!

 もちろん、明日も! 明後日も毎日この疑似街では実験をしています!

 それは人のためで、休みは無しなのです! 一時も!

コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?