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疑似街 ロボット薬局実験中!
縁乃ゆえ
現実世界仕事・職場
2024年10月28日
公開日
25,250文字
連載中
未来の人間とロボットのお話。

未来での薬局で働く者達の日常のほほん時にドタバタ話。

※小説家になろうにも掲載しています。

疑似街にある薬局

 二一〇〇年を過ぎました。空はまだきれいな青で緑もまだあちらこちらに残っています。二〇一〇年頃とあまり変わらない生活を送っています。ですが、私のおばあちゃんはよく『二〇一〇年頃の時代では考えられないお話だ……』と言っています。

 それは近頃この国もロボットの開発、発展が凄まじく、医療の現場にも姿を現したからでしょう。

 と言ってもまだこの街だけの話ですが。

 そうなったのも医療事故を少しでも減らすための『医療ロボットシリーズ』がある会社から開発されたからです。このシリーズのロボット達の首辺りにはアサ科のつる性植物、ホップがデザインされた四角囲みのマーク、通称『ホップ印』が付けられています。でも、時々どこがその首なのか分からないのがいるのでとても困ります。

 さて、このホップ印が付けられた訳ですが、それは人間と同じような見た目をしている高性能なアンドロイドがこの『医療ロボットシリーズ』にいるからです。つまり、人間とはっきり区別するためのものなのです。ちなみにそのアンドロイドの総称は『叱られ屋さん』で男性型が多い気がします。もちろん、女性型もいるのですが女性型はあまりよろしくないらしく不評とのこと。それでも私が働いている所の薬局ではその女性型の叱られ屋さんを採用しています。かなりの美人です。人間の私から見てもです。

 これは上の人の好みですね。私も女性型の方が好きです。おとなしいので。

 それに伴いなのか……法も紆余曲折を経て今ではロボット大活躍を認める時代となりました。

 特にお薬関係ではすごいくらいです。人間の薬剤師さんもいるにはいるのですが五年ぐらい前から薬剤師ロボット『ハクイさん』が普及していたりします。これもまだこの街に限定される話なのですが。この街の名前は『疑似街ぎじがい』、様々な仕事を本当にそのロボットだけで上手く行くのかどうか実験するために造られた人工の街です。一見、普通の人間の街みたいですが、全然違うのです。この街にはロボットがたくさんいますが、起動していないのがほとんどです。実験を途中で止めたり……なんてこともざらだからです。

「なのでこの街の薬局数か所にしか『ハクイさん』とか『医療ロボットシリーズ』はいません。ころさんはいっぱいいるのに」

 そんなことをこの何もない青空がどこまでも続く黄緑色の草原が特徴の太陽の柔らかい光がとても気持ち良いと感じている私が働く『ロボット薬局』近くの公園で私がその草原に寝転びながら私の手の中にあるソフトボールくらいの大きさで本当にソフトボールみたいな感じの白い介護用ロボット『おしゃべりするスラ』……私はこれを『ころさん』と呼んでいます。ころころしているので、に話していたところ、

「おい、駒村。昼休みだからってそれを持ち出すな。見つかったら俺が怒られるだろ」

 と言うロボット整備の宮上修みやがみしゅうさんに見つかりました。自転車でここまで来たようです。徒歩二、三分程度の所なのに。

 こちらの二十代後半の男性、宮上さんは私が働いている『ロボット薬局』のロボット全てを一人で任されている方です。もちろん、人間です。ちなみに私は駒村こまむらりの、二十代前半の人間の女性です。このロボット薬局に勤める前は人間だけの病院で医療事務の仕事をしていました。転職先のロボット薬局でもそのような仕事をしています。はっきり言って自分で自分のことを「人間です」と言うのはおかしい気がしますがそうしなければならない時代です。そう言うのもアンドロイドがいるからです。本当にアンドロイドは人間そっくりでそのホップ印がなければ困る存在です。決して消せないホップ印、それが消えた時ロボットは自ら滅ぶようにプログラムされています。寿命が尽きる時です。そんな事態には今まで一度もなっていませんが、それはロボットがちゃんと自覚しているからです。ロボットだということを。アンドロイドだということを。その『信じる心』が彼らのホップ印で示されているのです。

「昼休み終わっちゃったんですね、もう」

 としんみりしていたら宮上さんに言われました。

「早く薬局開けろ。それしかお前の仕事はないだろ?」

「いえ、ありますよ! このころさんを一人前にすらすら喋るようにすることです!」

「それは介護用、お前自分がヘルパーの資格も持っているからって言っても使わないんだろ? それにそうなったらお前はそれと別れることになる。そして、それは『するスラ』シリーズの型となって終わりだ。それでもそう言うのか?」

「だって、それしか今のお仕事やってる意味ないじゃないですか! もう、味の仕事も終わってしまったし。叱られ屋さんを起動するのは昨日、宮上さんに禁止されちゃったし……」

「じゃあ、その話の続きは薬局で聞くことにするから戻るぞ」

 と強引に連れ戻されました。ああ、午後が始まる……と思うと憂鬱です。

 でも、そんなに患者さんは来ません。病院自体がこの街は少ないからです。門前も今のところありません。

 実験に参加してくれるのは大体決まっているんです。

 お金に困っている人かこの実験を期待している人、そんな一部の人達しかこの薬局には来ません。

 それは認められたロボットが全ての院外処方せんの受付、調剤、投薬などをするからです。ですが現在、万が一の時、誰がその責任をとるのかが大問題となっています。その投薬したロボットを処分するのかまたは人間の方が責任をとるのか……。人間の薬剤師さんの場合でもこれは想定されること。どうしたものかと悩む日々です。でも、人間の薬剤師さんよりかは頻繁ではない気がします。が……。処方せんの入力だって病院からそのままハクイさんにインプット転送され、自動で計算し、印刷、お会計もハクイさんだけで出来てしまいます。この薬局は電子カルテなのでそれもハクイさんがハクイさんの中で所持し、患者さんとの話を自動的にその患者さんの電子カルテに記録しています。だから、盗まれたらヤバイことになるのです。個人情報がぎっしり詰まっているので。でも、そう軽々と盗まれはしません。それは閉局したらハクイさんを電源オフにし、キーがない限り起動出来なくするからです。まるで二〇一〇年頃のパソコンのように。その状態のハクイさんを移動するのは容易ではありません。ちなみにハクイさんはアンドロイドではありません。普通にかわいい白い丸頭の円柱みたいな体を持ったロボットです。高さは人間の平均身長と同じです。その方がスムーズだったり人をそんなに雇わなくて良かったりとメリット、デメリットが多過ぎるのでそれをなくしていけるのかがハクイさんの実験対象となっています。

 なので、人間の薬剤師さんが活躍できるのはその監査の時だけとなりつつあるようです。ハクイさんのある薬局では、ですが。私が働いている薬局では人間の薬剤師さんがいないことを前提にしているのでそういうのがなく、本当にハクイさんだけを信じなければなりません。それを整備している宮上さんを、でしょうか。でも、宮上さんにはそんな知識がないのでやっぱりハクイさんを、ですね。

 私は何かがない限り出番なしです。事務の仕事もハクイさんでほぼ全て出来てしまうので。一応事務服着てますが、役立たずではありませんよ。

 着てるだけのことはします! 例えば、薬局で売っているお菓子類の味の確認だけは私の仕事となりつつあります。ロボットは味の細部の判断がまだ完全ではなく出来ないので。宮上さんだって出来るはずなのに甘いのは嫌いだからとやってくれません。

 だけど宮上さんは日々、増えているロボット整備で忙しくやることも多そうです。

 それを私が手伝います。と言うと「駒村は壊すからダメだ」と言って何も触らせてくれません。でも、それが正しいと私も思うので唯一触ることを許された『ころさん』との会話を楽しみます。それしか仕事がなかったりします……。楽なのも大変です。

 上手く行ったらこの先、人間の薬剤師さんに代わりこの薬剤師ロボット『ハクイさん』が各地の薬局に配置になるようです。そのために創られたのだから当然ですが。それもこの国の人口減少が原因でしょう。この国の人口が増えることはまずないと言われています。日々、人は恋をして結婚をし、子供を産むことに専念……出来れば良いのですがそれも出来ない今日、ロボットが人間を造るのは禁止されているし、アンドロイドが人間になることはないしで……切羽詰まっているのです。この国も。だから、こうしたロボット達を使った実験をぽつぽつとやっていたりします。この人工の街では。改善、改善の繰り返しです。年老いた人間ばかりになった時にどうするのか……これが最大の問題でしょう。


 *


「あー、疲れますね」

「まあ、熱いお茶飲んでるだけ、だけどな」

「それでも疲れますよね」

「……」

「ただ、こうして時間経つだけここにいて。それだけでお金もらえちゃう仕事も他にないですしね。ああ、そうだ。こないだ親に『こんな仕事いつまでしてるんだ!』って怒られました。最初はここに決まった時あんなにほっとしていたのに……。世間の波がそうしているんですかね、宮上さん」

「さあな。俺はここのロボットの整備しかやらないから分からん」

「まあ、私もここの薬局の事務として働いていることになってますが結局はこうしてこの薬局で一番偉いロボット、ハクイさんの下、こうしてくつろいで飲んでいるように見えますが本当はその訳が違うくらいに緊張してこの薬局で売ってるこのお茶を試し飲んでいるって訳ですよ!」

「ああ、そうなの?」

 宮上さんは消音でテレビを見ていたらしく、こちらの話をほとんど聞いていなかったようでした。

「駒村、ロボットのこと『ハクイさん』、『ころさん』って呼んでるの、お前と上の人だけだぞ。あのおじいちゃんいつもああ言って真実隠しちゃうんだもんな。困るよ」

「何ですか? その真実って」

 そう言って私は自分が座っていた席から身を乗り出しました。宮上さんの真実を訊くためです。

「いや、実際のロボットの名前」

 それだけか……と思った私はまたお茶を飲むことにしました。

 少し冷めてきています。

 この味を人間の私がおいしく判断し、その情報を『ハクイさん』や市販薬等販売ロボット『しーさん二号』に送り、それをハクイさんやしーさん二号が買いにいらした方に直接説明し、購入していただくという感じです。

 そのため、医療事務の私、駒村。ちゃんと資格持ってます。宮上さんは整備知識しかありませんが駒村は医療事務からそのロボットさんを助けるための資格等々ロボット薬局で働けるだけのものはしっかりあるんです。こう見えて。

 ということでただ今も疑似街にて実験中のロボット薬局で働いている私、駒村です。

「長い自己紹介だったな、駒村」

「そうですか? でも、そうじゃなきゃ新しく来る『ころさん二号』に失礼だと思って考えたんですが」

「まあ、頑張って明日それを二号に吹き込むんだな」

「もう! ちょっと宮上さん、『二号』って省かないでくださいよ!」

「良いだろう、簡潔の方が」

「もう……せっかく寝ないで考えたのに」

「そういう時間、お前はたくさんあるんだからそう言うな」

 そう言うと宮上さんは作業場に戻って行きました。

 残った私はこの休憩室でころさんに言いました。

「ころさんはどっちが良いと思いますか?」

 でも、ころさんはころころするだけでした、やっぱり。



 仕事が終わると人は普通、自宅に帰ります。飲み会なんかもその前にありますが。

 それはこの疑似街で働いている人もそうです。

 別にここで暮らしているわけではないからです。

 まあ、実験の関係で夜の仕事だったり帰れなかったりする人がいますが私と宮上さんは帰れる人なので帰ります。

 その時、ロボット達は出歩かないようにちゃんとオフ状態にします。

 節電も兼ねてです。自然エネルギーを使って動いているそうでとってもエコ的です。

 その自然エネルギーは主に太陽だそうです。詳しい話を聞いてもいつもちんぷんかんぷんで終わってしまうのですがたぶん、私が思うにあのホップ印の所から充電していると思われます。

 だって太陽に当たっている時のロボットやアンドロイド達のホップ印はいつもキラキラ光って輝いているからです。虹色です。だから、大事な場所なんです。



 疑似街から帰る時、来る時、絶対にこのガードの下を通ります。ガードの上はもちろん電車が、そのガードの下の道には車道と歩道があります。誰でも自由に行き来しています。無料なので。帰る時はああ、帰れる……来る時はああ、これが疑似街か……。といつも思います。このガードは通称、『疑似街ガード』と呼ばれています。そのままですね。なんて宮上さんに言ったら覚えやすくて良いと言われました。

 まさにその通りです。

 駒村はバスで通勤していますが宮上さんは晴れていたら自転車、雨だったら歩きやバスが多いです。時々自家用車で来る時もありでバラバラなのですが今日は歩いて帰るそうです。なのでバス停まで一緒に歩きました。

「明日は新しいロボットが来ますね!」

「そうすると会社の人が来るのか……。そしたら言うかな」

「何をですか?」

「もっと作業場広くしてくださいって、どんどん増えてるんだよ新しいのがここ最近」

「そうでしたね、誰が見てもそう思いますよ。あそこ……、新しい実験しないと追いつかなくなってるんですかね。この前、そこの疑似街のお花屋さんに行った時に新しい店員型アンドロイドが増えててびっくりしました。防水の実験してるそうです」

「ああ、あれな。まあ、今までのでも大丈夫だったけど少し不安点があって改良したんだろ? あれも確かホップ印だったよな。手の甲に付いてた」

「そうなんですか? 今度行った時ちゃんと確認してみます!」

「それは良いけど失礼のないようにな」

「はい! 任せて下さい! その辺はお茶の子さいさいなので!」

「そんな特技いらないけどな」

「別に特技とは思ってないんですけど……、特技になりますか……やっぱり」

「さあな」

 宮上さんはいつもこんな感じで逃げます。バス停に着いたからでしょうか。

「じゃあ、お疲れ様でした。宮上さん」

「お疲れ、明日はしゃぐなよ」

「はしゃぎませんよ、この歳じゃ」

「そうか。なら、良い」

 そう言って宮上さんは歩いて行きました。ガード下の方に向かって。

 残った私はバスを待つしかありませんでした。内心、少し怒りながら。

 ちょっとひどい話をされたからです。そんなにグラついていません、今はまだ。



 今日も朝から元気に……暇潰し、いえ、お仕事を終え、母が作った昼食のお弁当を薬局の休憩室で食べ、ころさんとお喋りをしていたところ、

「こんにちはー」

 という声にびっくりしたところで気が付きました。

 今日は新しいロボットさんが来るのです!

 ということで今、宮上さんはその『こんにちはー』と言った男性とお話し中だったりします。

 私が出て行っても何の役にも立たないのでこうして店の奥から二人の様子をこっそりと観察中だったりしているのは……私の自由です、よね?

 そんなことを思っていると何やら二人の話がどんどん、どんどん悪い方向に進んでいるようでした。

「こちらの方はお貸し出しできますけどね」

 と今、誰もいないこの薬局でこの男、と言ってはいけないのですがちょっとチャラい男なので……仕事向きじゃないんではないか? と思われる……『会社の人』と私達は呼んでますが、本当にこの薬局にあるロボットやアンドロイド……他にもいろいろなロボット達を作って売ったりしている会社の人なのでそう呼ぶしかないのです。に、何か無理難題を言われてます。宮上さん。困ってますよ! 確実に!

 というのも数日前、上の人……この『上の人』は私達、ロボット薬局での偉い人です。もちろん、人間の男性の方です。あんまりお店の方には顔を出しませんが……。それはかなりのご老体だからでしょう……に聞いていた話とは違う展開になってます。何故ですか? 宮上さん! と問い詰めたくても出来ない状況です。このまま物陰から見てるだけじゃ……。

 全然話が終わりません。駒村、困りましたぁ!

「いや、そういうことでなくて」

 宮上さんは尚もその会社の人に抗議しようとしていました。なのに、この会社の人ときたら……。

「あ、髪切りました? 宮上さん。この前よりもさらに短くなってる気がしますよ」

「いや、元からこのくらいだけどな、里仲」

 あーあ、名前言われてしまいましたね。会社の人。

「まあ、で、どうします? これ、持って来てるのこれくらいしかないんですよね、今日」

 態度悪いです。会社の人。

「っていうか最初から持って来る気なかったんだろ? ころスラ、じゃなかった……『するスラ』、介護用だもんな。変な話だと思ったんだ。最初から。二号って言ったらうちじゃ『しーさん二号』だしな。いくら駒村がころスラ育ててるからってもう一つってこともないだろ。本人としては全然そんなこと気付かないくらいにただの暇潰しでしてることだし」

 私が物陰から見てるからってこんな話をしているとは! 

 後で文句言います! これでも一生懸命働いているんだと!

「ですがね、どうしてそうなったのか僕も分かんないんですよ。やっぱ、あれですかね……」

 会社の人はそれ以上何も言いませんでした。

 まあ、言わなくても言わんとしている事は大体分かります。

 うーん、そうだろうね。と言うしかなさそうです。これは……。

「じゃ。この件はなかったことにしましょうか。こちらの手違いで、処理させていただきます」

「ああ。それで、今日も取るのか? アンケート」

「ああ、アンケート……。やります?」

「やってもあんまり変わらないな……」

「じゃあ、最後にご要望は?」

 そう言って会社の人は宮上さんに訊きました。

「作業場広く」

 最大限の省き言葉要求でした。

 それなのにその会社の人は、

「分かりました。言っときますよ。うちの若社長に。そんなに送るなって」

 と、解釈してしまいました。

「まあ。そんなにって言うか『もう』なんだけどな」

 と、宮上さんも普通に話してます。

「もう、ねえ……。無理でしょ。そりゃ……大体、この疑似街出たら今、どうなってるか知ってるでしょ? アンドロイドは旧型ばかりだし、人は恋してるか働いているかのどちらかだし……。まあ、両者とも楽しんでるとは思いますけどね、それをですよ。まだ足りないからって次から次へと下手したら危ない橋渡らないかって今からヒヤヒヤですよ。俺……まだ将来残ってるのに」

「……それはここでする話じゃないだろ」

「それもそうなんですけどね。店員型、どうです?」

「お前、それ俺に売る気か?」

「いえ、言ってみただけですよ。『ああ』って言ってくれたら最高だったのに」

「里仲、やっぱ売る気か……。だったら駒村にしろ。あいつ、絶対ノリで『うん』だ」

「ああ、でも……駒村さんは買ったその日に壊しそうだから止めときます」

「賢明だな、それは」

「どういうことですかぁ!」

 私はいてもたってもいられなくなって物陰から出てしまいました。

「そのままの判断だ」

 宮上さんの的確なその態度に……消失感、でした。私としては。

「そうそう、最新のアンドロイド……あの『叱られ屋さん』にも搭載されてる『鳥の目効果』ってご存知ですか?」

 急に会社の人がそう言いました。何ですか? その話題転換。

「ああ、カラス等の鳥達にロボットやアンドロイドを透明イコール、いない物として攻撃させないように認識させるやつだろ。確か、旧型にも付いてたよな、それがどうしたって?」

「いえね、近頃その機能を空き巣達が使う、使わないって噂あるでしょ? だから、それを除いたのを出そうか、どうしようかって話なんですよ。まあ、人間が使えるものじゃないからこんなバカバカしい話に時間かけるのもどうかって思って。それについて宮上さんに訊きたくて」

「別に俺には関係ないよ。整備しかしないからな。これでお前も一つ仕事が増えたな」

「まあ、そう言うと思ってもう僕の意見は決まってますけどね。これを言えばどちらかがまた仕事量増えるでしょうね。じゃ、今日はこの辺で失礼いたします。ありがとうございました」

 そう言って彼は帰って行きました。

 そして、また同じような時間が始まりました。今日の午後は予定が狂います。確実に。だって、『ころさん二号』が絶対に来ないことが分かったからです。

 ああ、せめてもう少しお話をしていてくれればこの誰もそんなに来ない薬局の暇潰しが出来たのにと思ってしまうこの頃でした。

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