カジュアルなロリータファッション。
それがこのお嬢様にはお似合いだった。
「ロサお嬢様!」
「ジイヤ、遅いぞ? さあ、自己紹介を! 眠たそうなツインテールの魔法使いにこの屋敷に入りたくない女神、聞いてくれ! ボクはラミア伯爵令嬢、ロサ! チュッてすることが大好きだ!!」
ジイヤに頼んでおきながら、自分で言ってしまった。
「今夜は月がないからこうして外まで出られている。そして、夜はボクの朝だ! 早速、キミにスーツになってもらいたいのだが、いつから始まることになっている?」
「内山様が参られてから、新たな契約を……とレナード侯爵が」
「あの方か……。そうだったな、あの方が関わっているなら仕方ない。キミにはちゃんとしてもらいたいからな、それが済んでから頑張ってもらおう。二か月ちょっとの辛抱さ。それが終わったらキミは自由になり、キョウコウ社(しゃ)のまたどこかに行くのだろう?」
ロサお嬢様が俺を見た。
「まずは部屋か。ジイヤ、案内してやれ。そして、そちらの女神にはこの屋敷の庭を、そこでその二か月ちょっと住んでもらえば良い。良いテントをキミは持っているからね。その旅行鞄は日本製か? 魔法が掛かっている。どんなに重い物でも軽くしてしまうものか。では、ボクは朝食に戻る。何かあったらこのジイヤに言ってくれ」
ロサお嬢様がこの場を離れるとジイヤはまず、文句を言い続けそうな女神を花の咲いていない広い庭に案内し、落ち着かせた。
「じゃあ、もう良いわ」
そう言って、クレアは俺からテントと寝袋を奪い取ると、あとは自分でやるから、行って!! と俺達を追い払った。
次にジイヤは眠そうなティノと俺を連れて屋敷の中に入り、どこに何があるのか言いながら客室に案内してくれた。
やはり、明かりがそんなにない。
俺は怖くてスマホの明かりを頼りに歩く。
二階の真ん中の部屋で止まった。
「ティノ様のお部屋はこちらです」
ジイヤが部屋のドアを開けてくれる。ティノはその中へ、ふらふらと入り、ベッドにでもボスンと寝転んだのか、それ以上の音をさせずに寝たようだ。
ジイヤは静かにそのドアを閉めると、俺に訊いた。
「電気の使用はなさいますか?」
「はい、仕事のやり取りとかあるので、常時使いますね」
「では、エトウ様のお部屋はこちらになります」
ティノの部屋から少し離れた階段近くの部屋のドアを開け。
「この部屋が唯一、常時電気の使える部屋でございます」
電気が勝手に点いた。
「お! どうやって電気を?」
「自家発電です」
「へえ……」
「内山様が来られるまでご自由にお過ごし下さい」
そう言って、ドアを閉めようとしてくれたジイヤに俺は言っていた。
「あ、すいません!! ジイヤさんは、その、アンデッドではないですよね?」
「ええ、この屋敷の使用人は全て人間です。ですが、ロサお嬢様が昼夜逆転の生活をなされているので、それに合わせた生活をしております」
「つまり、俺達もそういう生活をしろってことですか……。二か月ちょっと?」
「はい」
「じゃあ、昼夜起きてられたら、起きていても良いんですね?」
「起きてられるのなら、そこはご自分のご判断にお任せ致します」
ジイヤはそう言ってドアを静かに閉めてくれた。
改めて部屋の中を見る。そんなには明るくないが、ないよりは良い光と薄水色の壁、オレンジ色を基調とした木製のアンティーク家具。重厚なカーテン、天蓋付きのベッド。
俺は床に荷物を置くと、スーツを出して、いつ仕事になっても良いようにする。
どのくらいで内山さんは来てくれるだろうか。
軽い眠気に負けて、ベッドに入る。
客人がいなくても毎日掃除をしているのだろう、太陽の匂いが微かにする。
そのうちに電気が勝手に消えていた。
またスマホの明かりが必要になりそうだ。俺は枕元にスマホを置いて、朝の六時半には起きれるようにし、目を閉じた。