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東京からのメール

 女神のぞわぞわ感を頼りに日本からのテレポートで着くはずだった村に着いたのはお昼時。

 午前中には着いたはずなのに着かなかった原因は不明だが、無事に着いたのだから良い。

 その村はそれほど大きな村ではなかったが程良く日本化していた。

「このくらいの規模の村で宿があること自体が珍しいのよ。あ、女将さん! 三名は三名なんだけど、男女で別にしてちょうだい」

 きちんと交渉し、そういう部屋を取るクレア。

「では、食事に行きましょうか」

 ティノはもう腹ペコです~と言って、さっさと行こうとする。

「ねえ、ヨシキチ! お金よ、お金!! 今回はそういうのを含めた交通費出るんでしょ?」

「ああ、まあ、でも全額じゃないからな。贅沢は禁物だ」

「何? 一緒に寝たいって言うの?」

「違う!」

「王都やその周辺の町なんかではお高いお宿が多いですが、この辺はリーズナブルですよ」

「本当か?」

「そうだよ、アンタ。うちは良心的な店さ。さあ、荷物を置いて行きな! 邪魔だろ、そんなの持って行くなんて! 誰もったりなんかしないよ! そんな大荷物」

「そうですよね……」

 愛想笑いをしておこう、この三十代くらいの肝っ玉母さんみたいな女将さんには。

 俺達は荷物を置き、昼食をこの村で二番目に美味しいと言われている店で済ませ、それぞれの部屋に行き、明日の準備をしながらのほほんと過ごしていた。明日の朝にはもうこの村を出て、二つ目の村に行く。そして、歩いて歩いて……現地。

 俺は一つの心配をしていたが、まだ言えずにいた。

 本人は知ってるかもしれないからだ。だから、言わないでおこう。

 言ったとしたって、何? 心配してくれるの? 大丈夫よ! 私にはバリアがあるから!!! なんて言うに決まってるし。損な事はしないでおこう。

 俺は荷物の中から今回の仕事内容が書かれた紙を眺めた。地図の作成はせずに日本の事だけを教えること。

 そんなにふかふかではない木製のベッドの上に寝転がる。

 うーん、不味ったか。長期とは言っても、この仕事が終わったらまた新たな契約を結んで……というもの。教えるべき者もその都度変わるという……。

 ふいにスマホの音が鳴った。メール……。

『江東さん、お久しぶりです。お元気ですか。本日、江東さんが保護されたホビットが独り立ちする目処が立ちました。それに伴い』

 東京から……このスマホすげーな! なんて軽く感動し、起き上がる。

 海外に行った時と違い、異世界からだと料金が上がるとか、国番号が必要とかがない。

 普通に国内でするようにすれば出来る。だから、バレないはず。

「にしても、久しぶりのメールがこれとはね……」

 行けるのはいつになるか分かりませんって言ったら、向こうは怒るかね……。まあ、休んで行くにしても行けないし。目処が立ったと言っても、すんなり行かないしな……分かってくれるだろ。俺は曖昧な返事をした。

 またメールの音。

『承知いたしました。江東さんの薄情者!! こちらで勝手にやらせてもらいます!!』 

 あいつ、完全に怒ってやがる。あの顔で……。ふふ、なんて笑ったって、誰も見てないわけだし。彼女は今もあそこで正社員として働いてるわけか……。

『報告は逐一させていただきますよ?』

 少し面影が香住ちゃんに似ている……、いや、香住ちゃんがあいつに似てるのか……。清楚系美女と言われ慣れてるあいつに派遣なんて言ったら、どういう顔をするだろうか。

「よろしくお願い致します!! っと、さて、魔法の練習でもするかな」

 またメールの音。

『江東さん、私、今、冒険者レベル5になりました。では! 来れる時に顔出ししてください。その時にいろいろやってもらいますから!!』

 東京でレベル5?!! 相当強くなってるはずだ! あの子がね……、いろんな資格を持っている人は違うってことか。

 コンコン……というドアを叩く音で俺はスマホをしまう。

「はい?」

「江東さん、姉からなんですけど、ちゃんと魔法の練習してますか? と」

「ああ、分かってる! してるって言ってくれ!」

「それと……」

 何だよ……今度はお前か……と俺はドアを開けた。

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