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進む方向

 まず、ティノが日本からのテレポート後に進んでいた方向には行かないことにした。

 明らかにおかしいからだ。

 その抜け道を通った時と真っ直ぐ俺達が歩いて来た道、歩幅なども計算に入れてみても俺とクレアが歩いて来た道の方が早かった。もしかしたら、その道中のどこかでティノの気がれる事があったのかもしれないが、それはない! とティノが断言したのでそういうことになった。

 そして、そのまま俺達が歩いて来た方向に行っているのだが、本当に一本道しかない。

 迷う事はないのだが、こんなに歩いても何もないと逆に不安になる。

「ねえ、本当にこっち? もしかして反対だったんじゃないの?」

 そんな事を言う女神様。

「雪が降らなければ良いのですが……クレアさん、風邪引かないでくださいよ? 薬買うお金なんてないんですから」

「分かってる、ティノちゃん大丈夫よ。前の仕事のお金どのくらい入ってた? ヨシキチだってきっとそんなにもらってないはず」

 そんな話を聞きたくなーーーいっっっ!!!!!

 あー、完全に困った。迷ったのかも分からない。

 日本からテレポート出来る一番近い所がその村で、そこからなら一本道で一週間歩けば次の村に着き、その着いた村からまた二週間歩けば目的地となる場所に着くのだが、そもそもその村までの地図はどこにもないのだ。そこから先もきっとない。だからこそ、その地図を作るというのも今回の仕事内容に入っており、時給もその時々の状況で万から都合によっては数百万となる、日本のやり方にそぐわない異世界らしい内容になっており、その派遣先である会社はこの異世界からあの十年前の台風で日本に来てしまった貴族様が社長を務める異世界初の会社だ。そんな事が出来るのも、そのくらいここら辺がまだ全然日本化されていないからだ。一応、電気はその村の人達の頑張りで通ってはいるようだが、奥地おくちと呼ばれる方へ行けば行くほど、そんなのはなく、本来あるべき姿で生活をしているという。

 つまり、現代日本化されてないのは当然で、未開の地なんて呼ばれてたりする。そこら辺に美人が多いと言われるエルフ達が居たりして、こんな仕事がたくさんあり、時給も百万円からという、命の危険もあったりする稼ぎの良い仕事に大変身するのだが。

「困った」

「困りましたね」

 頼りになるはずのパーティメンバーは寒さや方向音痴でやられ、使えない。内山さんに電話をしたくても他の仕事があって現地集合となっているのだし、ここは自力で頑張るか、一応、内山さんに電話して対処してもらうか……。スマホに頼りたくても頼れない状況、どうするか……。人に聞くしか手立てがないような場所なのだが、こんな天気のせいで人っ子一人として居ない。

「どうするべきなんだ!!」

 現地にはあのモンスターが居るし……いや、これで行こう。

「なあ、クレア」

「何?」

「何か、ぞわぞわしたりしないか?」

「え? ぞわぞわ?」

「そうだ、スケルトンの時みたいにさ」

 うーん……と感じ出すクレア。

 これがダメならお手上げだ。ちゃんと内山さんとかに電話してどうすれば良いのか聞こう。

「強いて言えば、こちらの方から何となく、そんな気がするわね」

「じゃあ、こっちに行こう」

 山の方……、きっと正解だろう。

 ここは女神様を信じて歩こう。

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