やっと着いた。俺はこの二か月で準備して来た荷物をその辺にドサッと置く。
久しぶりに聞く音――安全、安心、テレポート魔法陣!
「まだかな……パーティメンバーの子、
そんな淡い期待の方がこれから始まる仕事の不安より強い。
今、日本は秋に入ったばかりだが、暑い。きっと異世界に行けば真逆のとっても寒い冬の季節だろう。
そんな事を考えながら俺は待つ。あれから数回、ノイデフィの営業の
「ほら~、いたいた!」
ちょっと遠くの方から声が聞こえる。少女のような女性の声。
「待ってください!」
うん、敬語の少女の声ね。
俺は彼女達を見た。ゲ!!
「よっろしっくね! ヨシキチ!」
「いや~、何か月ぶりですか? 江東さん」
「お前らッ?!」
何で? という顔をしていると、チッチッチ! と白髪ロングの浴衣姿のあの温泉女神様が言う。
「私は異世界に居る間の江東良吉を守る! っていう仕事をしているのよ!! ヨシキチ、感謝しなさい! この温泉の女神、クレアにまた守られることを!! 長期だからね! またいっぱい持って来たわ~!!」
そう言って大荷物なの~っと見せてくる。
まったく……。
「酒だろ? どうせ……温泉は適当に出せるからな……お前は……」
「何よ! 何か言った?!」
「いいえ、何も……」
「まあまあ、江東さん。あたし達はそういう訳で江東さんが異世界で派遣社員として働く限り、パーティメンバーとして付いて守りますので」
いつもの魔法使いの少女の格好をしている前の時よりも大荷物となったツインテールの茶髪のティノがこの場を収めようと頑張る。
「メンバーが代わることは?」
「ない!!」
二人に同時に言われた。
「何だよ……俺の淡いドキドキとワクワクの期待感を返せよ!! お前ら!!!」
「まあ、良いじゃない!! また同じ所に住めるわけではなし、お気楽な方が良いでしょ? それとも知らない子の方が良いって言うの!!?」
「そ、それじゃあ、何であの時お別れに賛成したんだよ!」
「だって、この家ともこれで最後か……って思って」
「俺のと違う~!!」
「あー、勝手にそう決め付けてたんですね……、江東さんは私達とのお別れだと」
「だって、そういう感じだったろ!!」
もう、新しい出会いを求めていたのに! 新しいかわいい子を求めていたのに!! もしくは
「ねえ、ヨシキチ、聞いてるの?」
「聞いてますよ……」
ふてくされながら言ってやると女神がぽつりと。
「やってやるわよ、こんっの! 現代っ子がぁ!! って。この指で」
俺の目に映るようにクレアの右手がチョキになる。
あ、やばい。
俺はシャキン! となる。
「さ、行きましょう! 温泉の女神様に魔法使いの少女!」
「違います! あたしは大人で!」
そんなティノの声を聞かず、荷物を持って歩き出した。
そう、俺達はまたあの異世界へと行くんだ。