リリーさんのテレポートで俺達は魔法学校の運動場に着いた。
空はまだ青い。リリーさんは校長に俺達が来たと報告しに行くと言い、女神は。
到着ね! と言ったまま、魔法学校の運動場に生えていた立派な大木に近付くとぽん! とその根元に足湯を出した。
「お前!!」
「何よ、疲れちゃったの。だから、足湯。文句あるの? あ~、お酒持って来るんだったわ~」
こうだろうと思ったよ……。
「さあ、ヨシキチは魔法の練習して来なさいよ!」
私はこの木の座り心地の良さそうな根元に座って足湯するから~ってことか。まったく……。
「お前は良いな、羨ましい」
「え? 入りたいの? だったら、頑張って来なさいよ。リリーちゃんが現れるまでおんぶしてくれたごほうびに入らせてあげる。まあ、足湯だから足だけだけどね」
「本当か!」
「ええ」
「じゃあ、やって来るかな……、そろそろリリーさん戻って来ると思うし」
何故、俺がまた魔法学校の運動場に居るのかと言えば、先日、俺の派遣の仕事の対象モンスターと勘違いしてしまったせいで、サキュバスのお姉さんに粗茶まで出し、不覚にもぐっすり眠らされたわたしに出来る事は何でしょうか!? ということで、それを詫びる為にこうしてリリーさんは俺の魔法の練習に付き合ってくれている。
「フレイム!」
女神との足湯! おんぶも良かったのだが、女神のわがまま付きというのがいただけなかった。けれど、今度は!
浴衣姿のまま、ギリギリまで濡れないようにした太ももまで見える女神との足湯!! 水着とは違う楽しみ方! いや、待て、俺は大事な事を聞くのを忘れた。入る時は女神も入りますか? その湯は新しいのにしないでそのまま入れますよね? それを聞くのを忘れたー!!!
「フレイム!!」
ちらっと女神の美脚が目に入る。
おお!! 何故だろう、何故。今まで俺は気付かなかったのだろう。
あんなに美しい足をしているなんて!!
「フレイム!!」
「ヒッ! あの、ヨシキチさん? ちゃんと出す所は確認してから」
「すみません、つい、出す所が見えてませんでした!!」
リリーさんを見ればドキドキしていた。そんな危ない所に出してしまったんだろうか。
「疲れてます? でしたら、一度休憩にした方が」
「え? いや、もっとやりますよ! せっかく、ショボい火からちょっとマシな火になったんですから!」
「まあ、あの火からだと……可愛い火になりました」
落ち込んで来る褒められ方。
「あの……、休憩して良いですか……」
「はい、どうぞ。わたしは飲み物を持って来ます」
そう言ってリリーさんは校舎の方に行ってしまった。
俺はチラチラと見えていた美脚女神の方に向かう。
「何、休憩?」
「ああ」
俺はちらちらと足湯を見る。
「入れば良いじゃない」
「え、でも、お前が入ってる!」
「良いわよ、足湯なんて、皆一緒に入るでしょ? それとも何、水虫とかあるわけ?」
「ないです! あったら選ばれませんよ」
俺はついぽろっと言ってしまったが、女神は気付かない。ふう……。
では、運動靴を脱ぎ、靴下を脱ぎ、濡れないようにズボンを膝まで上げ、足湯に入る。
何だろ……この気持ち良さ、自然の腰掛けに座って自然に出て来たわけではない足湯に入り、ぬるい温度のお湯。
「はあ、気持ち良いなぁ……」
木陰というのもなかなか良い。
億劫さもなくなる。
「ねえ、ヨシキチ」
「何だよ」
「鳴ってる」
女神の言葉で俺はスマホが鳴っているのに気付いた。
「出ないの?」
「出るよ」
誰だ……。俺はスマホを見る。
「ハァあ!!!!」
「どうしたの? 早く出ないと切れちゃうわよ?」
「えっと……」
出たくはなかったけれど、いつかは出なくてはならない。それが常識。
「はい江東です」
『ニホンイセカイの棧です』
派遣会社からの電話はいつも突然やって来る。