はろーわーデパートと同じような感じでこの世界に合った感じの平屋。この世界の夜でも煌々と照らす光。
それがはろーわーコンビニの外観だった。
「いらっしゃいませ」
という店員の声と共に目に入って来た数人の客と一人の人物。
「おい」
「はい?」
うろちょろし出す前にティノに訊く。
「家には誰が居る?」
「え……、えっと……」
「リリーちゃんよ!」
「お姉ちゃんだそうです。じゃ、あたしは見つけに行って来ますっ」
ささっと逃げるティノ。だけど、入り口入ってすぐの所の雑誌コーナーで黙々と雑誌を読み続けるこの浴衣姿の白髪ロングの女、いや、少女……。
「おい」
「はい?」
「お前何でここに居る?」
「だから、リリーちゃんがね、おやつの時間ぐらいにテレポートで来て、ヨシキチさんはいらっしゃいますか? って言うから、まだ帰って来てないわね……って言ったら、じゃあ、待ってても良いですか? って言うから、じゃあ、私も先に出てったティノちゃんと一緒にあんたを探そうかなって」
「じゃあ、今家にはリリーさんが一人なのか?」
「そうそう……、私もね、たまには体動かさないと」
そこまで言っても雑誌から目を離さない。
「お前、こんな時間までここに居たのか?」
「そうそう、だって、出会ってしまったんだもの」
そう言ってチラッと隣の少年を見る。
大きな剣……それに彼は全身を完全に装備した、ん?!!!
「チート君!!!!!?」
「チート言うな!!! って言うと思いましたか? こう見えても十七年間は日本に住んでたんですよ。オレのこと知ってるんですか?」
「あ、まあ、ちょっと……?」
彼は確か、この前の夜のギルドで一番目立っていた日本からの異世界転生冒険者代表、石沢煌翔、十七歳……と香住ちゃんが酔っ払いながらも説明してくれた少年。
「天界の女神から授かった何かしらのチート能力を持ってるんでしたっけ?」
「そうです。まあ、そのチート能力の詳細は言えないんですけどね」
「そうですよね……って、おい、クレア。お前、この少年と今まで話してたんじゃないだろうな……」
「違うわよ! 雑誌読んでたら、日が暮れてて、帰ろうかな……って思ってたら、神の力を感じたから、ちょっと気になって……そしたらまた雑誌が気になって……」
お前はダメ神だ。
「驚かれました?」
何この少年、敬語がちゃんと出来てる!!?
「あ、あなたに会ったことに? それとも」
「そうですね、このコンビニが突然出来たことに、の方がオレとしては良いんですが」
「そうですね! 行きはテレポートで連れて行かれたので、分かりませんでしたけど、帰りに突如出来てて、モンスターがコンビニに化けているのかと一瞬思ってしまいましたっ……よ……?」
あれ、この冗談……冗談として通じてない? だから、急にこんなシン……としちゃった。
マジなの? マジでこれ……。
「くくくく……っ!!」
少年は無邪気に笑った。
「そうだと、オレもこんな装備して来た甲斐があるんですが、モンスター出てたら、こんな所に『はろーわーコンビニ』作りませんって!!」
「そ、そうですよね……ははは!」
「バッカね~、ヨシキチ! 彼はね、ここにコンビニを作ってくれ!! ってずっと言い続けて来たの! そういう努力の人なのよ!」
急に口を開いた! と思ったら、全ページを読み終わったらしい。その手にはもう雑誌がない。
「このキラト君はね、この十二年間ずっとそうやって来たの!」
「それじゃ、今、彼は……」
「何歳かってことは問題じゃないの! ここに居る彼はあんたよりも頑張っているのよ! 見習いなさいよ! 少しは!!」
まあ、まあ、まあ……とチート冒険者様が女神をなだめてくれた。
「……すんませんね……、こんな俺のパーティメンバーなんかにしちゃいまして」
「何よ! その言い方、もっと誠意を持って言いなさいよ!! 私はこれでも女神なのよ!! またプッツンして目潰ししてやっても良いんだからね!!」
可愛く言ったって、怒ってるじゃないか。この女神……。
「それにしても、何で今日だったんだ?」
「ちょっと、私の話聞いてた?! ねえ、ちょっと! ヨシキチ!!」
ギャーギャー言う女神はもう放っておこう。
「何かあるんですか? 今日って」
「ああ、コンビニの開店日に理由はありません。天気が良いから。ただそれだけの事ですよ。クエストだって、その倒すモンスターによって良い日を選ぶでしょ? 雨がダメだと聞けば、雨の日に行くし、晴れた時が一番良いって聞けば、晴れの日に行く。そういう日和を選んだだけです」
「なるほど~、で、そこの温泉の女神様は何やってるんだ?」
「放っておくって言うなら、いろんな
止めてくれ!! ティノだって買うのに~!! なんて、俺は騒がない。
こういう所で騒ぐなんて大人ではない。
「ふふ……」
「な、何よ! 買ってやるんだから~!!!」
そう騒ぐ女神に俺は言う。
「家に帰ったら、良い物を見せてやるよ」
「な、何よ」
恐々とクレアは言う。
「だから、その商品を全部戻せ!」
「え……、何よ、ないんじゃない! 良い物なんて! どうせ、火が出たとかそういうことなんでしょ! 知ってるんだからね! 全部リリーちゃんから聞いてます!!」
「だったら、早く帰るぞ!! 俺は夕飯がないと思ったからコンビニないかと言ったんだ。だけど、よく考えるべきだった。ここは日本じゃない! 異世界だ。ぽんぽん都合良くあるわけじゃない」
「あるじゃない。今ここに」
「たまたまだろ!!」
「まあまあ……」
チート冒険者の煌翔君は俺をもなだめ言った。
「この世界では敬語は大切なんですよ。お名前を存知ませんが、あなたはこの世界の事をどのくらいご存知ですか? この世界では貴族や王族、騎士、上位の身分にいらっしゃる方に対して、タメ口を言ったが最期、それはそれは厳しく罰せられるのです。こちらの女神様からはそうおっしゃっても良いと言われているのかもしれませんが、そうでない場合、あなたの首は何回はねられたでしょうね」
怖い事を言って収める系のようだ。この煌翔君は。
「本当、申し訳ないと」
「良いんですよ、オレに謝られても困ります。そうですね、そろそろクエストに行く時間なのでオレはこの辺で」
じゃ、と言って彼は出て行った。
「何なんだ? あいつは……よくあるコンビニで時間潰しか?」
「まあ、彼の言っている事も一理あるわ。あんた、自分より身分の上の人、この世界にはたくさん居るって知っといた方が良いわよ。まあ、首はねられただけだったら、この私がさっさと生き返らせてあげるから、安心して!」
「その前に止めて!」
ああ、何かいつも通りになって来た。
「あの……」
ティノがひょこっと……カゴ一杯の食料を持ってやって来た。
「こんなに要るか?」
「だって、安くて……」
それから……とジーッとこちらを睨んでいる男の店員さんに俺とクレアは謝った。
「すみません!!」
やっぱり、店で騒ぐのは良くない。