本当にあの時、はむはむされれば良かったと思いながら夜道を歩く。
ティノは少し先を歩きながら、まだ食べ残っているお菓子をもしゃもしゃと食べている。
あげませんから! という意思表示なのだろうか、ちらちらとこっちを見てはさっさと動く。
「食わねーよ!」
「本当ですか?」
「ああ」
ふう……と今度は味わって食べ出した。
思えば、昼も食べてない。早くテレポートとかで帰りたいのだが。
「なあ、ティノ。テレポートはダメか?」
「ダメです!」
そうか、そんなに一人で食いたいのか……。
家に帰ったら何かあるだろうか……クレアは何をしているだろう。
考える前に『温泉』という二文字が浮かんだ。
「なあ、この辺にコンビニはあるか?」
「ん?」
リスみたいに両頬を膨らませた顔でティノがこちらを向いた。
「コンビニ!!」
俺は先を行くティノに大声で言った。
「ああ、コンビニですか……」
ティノはきょろきょろしたかと思うと一つの店を指した。
「この店?」
「ええ、そうです。ちょうど良かったですね。王都からもうかなり離れてますが、ここがあって」
「ここは何の店だ?」
「はろーわーコンビニです」
「はろーわーコンビニって、いつもないぞ?」
「ええ、ですから、もぐ……」
「食べ終わってから喋ろ」
「あい……」
どんだけ食べたいんだ、お前は……。
ティノは全てを食べ終わってから話し出した。
「江東さんを探しに行く時に出来たようなのです! こんな何にもない所にですよ! これはすごい事ではないですか!!」
「もしかして、それのせいでお前は金欠だったのか?」
「はい!!」
何と潔く返事をするのだろう、この子は。
「で、日本のコンビニと変わりは?」
「ありません!!」
「ほう……」
「入って行きますか? 今日は開店日ということで、どれもこれもお安くなっておりました。まあ、魔法でちょちょいのちょい、でこんな建物なんて簡単に出来てしまいますよ」
「お前はここの従業員か!?」
「そんなわけないじゃないですか! クレアさんもここまでは一緒に来たんですよ」
「は?」
「だけど、ティノちゃん、私はこの後もここでゆっくりと時間を潰すから、ヨシキチ探しお願いね! と言われまして。でも、もう帰ったと思いますので、さっさ、入りましょ! そして、また奢ってください!!」
「お前……」
もう言葉もない。
ぼうぼうの草と道としてその草を刈った所しかない、こんな所にここが出来たのはちょうど良かった。夜を照らしてモンスターが集まるということもないだろう。
ここはそのくらい安全な場所。王都と俺達の住む所の中間地点みたいな所に位置している。急に出来たのには訳があるのか、お店の人に聞いてみたいが止めておこう。変な事を聞いて、ここに来たくない……とかは嫌だ。
「さて、何がありますかね……」
そう言って俺はティノと一緒にその店に入った。