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頼りになるのは

 異世界に居てもネットが使えるパソコンでその派遣会社のホームページを開き、場所を確認する。王都の中だ。このマンションから歩いて五十分。

 車や電車があれば楽なのだろうが、この世界にはそんなものはない。馬車を使うにしても金が要る。

 だとすれば。

「やっぱり、歩きだな……」

 それから俺はティノに教えられたこちらの世界にもあるという派遣会社に電話した。いくら好きな時に行けると言われても来社予約をしなくてはいけない。

 電話はスムーズに終わり、運良く今日、今から行けばちょうど良い時間のが取れた。俺は早速、派遣切りという恐怖からいつでも持って行けるように書いておいた履歴書と職務経歴書を持ち、出かけることにした。

 王都、それはこの道を真っ直ぐ行けば着くらしい。

 クレアの書いてくれた簡単な地図を頼りに歩く。

 確か、この異世界に派遣の仕事で初めて来た時、ティノとクレアが言っていた。王都がどうのこうの……だから、その建物も頼りにすれば良い。

 うん、見えない。この街はそれほど高い建物があるわけではないのだが、反対の道を来てるとか? ……不安になりスマホを取り出し、地図アプリで場所を再度確認する。

 やっぱり、違っていた。もうクレアの書いてくれた地図に頼るのはそう。

 俺は手書きの地図をしまい込むとスマホの地図アプリを見て、その方向へと歩き、ようやく目的地に着いた。

 そう、最初からこうすれば良かったのだ! この世界でネットが繋がる場所は限られているが、日本人が多く居る場所ならこういった物も使えるのだ! だけど、最初からそれを使っていては異世界を楽しむことなどできない。だから、極力使わないようにしていたのだが、時間が時間だっただけに使ってしまった。

「ちょっとゴメンよー!!」

「あ、すいませんー!!」

 すごい速さで石畳の道を荷台馬車が通り過ぎて行った。危ない……。

 今までスマホの地図アプリばかり見ていたから気付かなかったが、周りに何もないマンションに住まわせてもらっている身としては、ここはとても賑やかな場所だった。東京に比べれば静かなものだが、あそこより良いと思ってしまう。

 この王都には『はろーわー』関係の買い物する所があったはずだ。登録した帰りに寄ろう……と俺は来社予約した派遣会社、ノイデフィに行く。

 登録はすんなりと一時間半くらいで終わった。まあ、派遣会社に登録するのも二回目だし、あまり変わりはない。スキルチェックの為のパソコンがあったが、この派遣会社では現地に行って仕事する系なので、パソコンを必要とする仕事は少ないようなのだが、あるにはあるということなので、俺はしてもらった。あとは動画を見たり、話を聞いたり、希望を言ったりだった。

 そうして、俺は商品券一万円を手にスマホの地図アプリでやっと見つけた王都の中央広場の近くにある一軒の大きな店に入った。

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