ふー……と眼鏡を外し、目を揉む。疲れた……。
ドン! という音共に聞こえて来たのは。
「はわわわわ……」
「は?」
バッと後ろを見ると部屋のドアがいつの間にか開けられ、その手に湯気の出ているマグカップと甘そうな茶色いカップケーキを一つ乗っけた皿を持って固まっているティノが立っていた。
「どうした? そんな震えるほど何か居るのか? さては! 幽霊とか!!?」
「はわわわわ……」
それは怖い。言葉にできないほどなのか……。ずっとこちらを見ている。つまり、俺の背後に居ると……。
「マジなの!!!? ねえ、マジで! 俺の後ろに!!!!」
「いませんよ。いるわけないじゃないですか……幽霊なんて」
とってもクール。クールに言われた。香住ちゃん以来のクールさだ。
「で、何だ? その飲み物とお菓子は」
「食べます?」
「ああ」
「あれから何も食べてないじゃないですか、だから……」
「そうだったな、お前らが昨日、家に着くなり、スライムの面倒見てあげるからちゃんと寝て! なんて言って来て、そのまま何も食べずに寝て、朝起きたらああなって……今何時だ?」
「夜の九時です」
「ウソだろ?!!」
「いいえ、そのくらいの時間は経ってますよ」
「まあ、トイレ以外はずっとこの部屋に居たし、お前がドア開ける音さえ聞こえなかったしな……」
ふー……と再度、疲れた両目を揉む。ショボショボする。目薬と若さが欲しい……。
「そのくらい書くことがあったんですか?」
「まあ……な……」
考えていた。これからもきっとこんな感じだ。俺はその都度、こんな感じになるのだろうかと……。
「で、これは?」
「はい?」
コト、コト……とパソコンの隣に置かれた物を見る。マグカップの中身は見慣れない色の飲み物だった。てっきり、お茶か何かだと思っていたのだが。
「匂い的にはハーブティーだな……。カップケーキは
「残念ってことはないはずです! その赤い飲み物はですね! ハイビスカスティーです! 日本でも飲まれてます」
「どんな効能が?」
「今の江東さんにピッタシの効能がありますよ! さあ、飲んで食べて元気になって、明日お別れを!」
「そうだな……いただくよ……」
何か出てきそうだ……出て来ちゃいけないのが出て来そうだった。
「……泣きますか?」
「泣かねーよ!!」
俺はその後無言でそれらを全部飲み込んだ。