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糸吐き虫

 走る音が響く。

 暗闇かと思えば、そこは初心者ダンジョン! 明かりは常にあるらしく、昼間のように松明に火が灯され燃えている。

「ちょっと! 待ちなさいよー!!!」

 ぎゃーぎゃー騒いでいたクレアとティノが後を追って走って来た。

「何だよ? 虫が嫌なんだろ?」

「そうよ! あれは森で蜂蜜風呂をやった時! たくさんの虫や虫モンスターが一気にやって来てしまったわ! それ以来……私は虫が嫌いよ! 樹液と勘違いする不届きな虫達にはこうよ!」

 女神は目に入って来た一匹の寝袋ぐらいの芋虫のような糸吐き虫に向かって言う。

「戦慄のボッチャンオリジャ!!!」

 それは一瞬のうちにその糸吐き虫の下に出現し、毒々しい紫色の泡や水、湯気で出来た大きな水たまりみたいなもので、逃げ場をなくした糸吐き虫をその水中へとおとしいれた。

「見たか! これが『ボッチャンオリジャ』の威力、一度その湯の中にボッチャン! と入ってしまったら二度と出て来られないわ!」

 危険だ、この女神はとても危険だ。女神様じゃないみたいだ! 森でそんなのやるな! とか言えなくなった。

「ここは調子の出て来たクレアさんに任せましょう! あたし達はこの下の一階層に向かいましょう! そこの階段から行けます! フレイム!!!」

 通せんぼしていたさっきのより少し大きい糸吐き虫を二匹まとめてボッとティノは杖を突き出す形で焼き消した。

「ティノ、すげぇ……そんな杖でも、フレイムすげー! ボッチャンオリジャよりスッゲー!!!」

「何ですって! ヨシキチ、覚えときなさいよ! ボッチャンオリジャ!!!」

 あの一匹から始まった水たまりみたいな『ボッチャンオリジャ』の連呼で今ではその辺り一面が水辺のようになっている。

「ボッチャンオリジャ!!!!!! はあ、はあ、どこから出てくんのよぉー!!! この虫達はぁああああ!!!」

 女神の悲鳴を背に俺達は階下へと向かった。

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