ミユとユウトくんを何とかしてあげたい!
その気持ちに
だって、あんなに幸せそうだった二人が、このままダメになっちゃうなんて悲しすぎるから!
鼻息荒く拳を握る私の隣で、レンがボソッと口を開いた。
「何とかするのはいいけどさ、具体的に何をするワケ?」
「それは……!」
私は、拳を握ったままレンに振り返る。
「それは、これから考えますっ!」
「やっぱりプランなしかよ……」
深いため息をつかれてしまった。
でも、これくらいで
「今から委員会だけど、そのあと帰りながら一緒に考えよう! ね?」
「ったく……日野原は言い出したら聞かないからな」
やれやれと苦笑するレン。
その顔が、不意に真剣なものになる。
「だけど、俺もこのまま二人が終わっちゃうのは嫌だからな。何とかできるならしたいという気持ちはある。本人たちには、余計なお世話って言われるかもしれないけどさ」
「大丈夫! ぜんぜん余計なお世話じゃないよっ!」
「……日野原が言うなって」
そんなことを話しながら、私たちは委員会が開かれる教室へと向かうのだった。
それから一時間ほどが過ぎて、委員会は無事に終わりを迎えた。
教室からカバンを取ってきたあと、レンと二人で学校を後にする。
並んで歩く帰り道。
いつもなら、心が踊るシチュエーション。
でも、今の私には大切な使命があって、浮かれている余裕なんてない。
ミユとユウトくん、二人の仲を取り持たなくちゃいけないから!
「……と言っても、正直どーしたらいいんだろ?」
「俺も、こういうの得意なわけじゃないからなぁ……」
「やっぱり、ちゃんと謝るしかないんじゃない?」
「うーん……。でも、謝るのなんて、ユウトの性格からもう何回もしてるだろうし……」
「それでもだよっ!」
私はレンを見た。
「それでも、ミユが許してくれるまで謝り続けるしかないと思う。それが誠実さってことじゃない?」
「それは、そうかもしれないけどさ……。しつこい! って逆に怒らせちゃったりしないか?」
「う……。み、ミユなら大丈夫だと思うけど……正直、自信ない」
ぽりぽりと頬をかく私。
レンは頭の後ろで手を組むと、空を見上げた。
「……お互い、少し離れて冷却期間を設けるのも1つの手かもしれないな」
冷却期間……。
確かに、今、ミユはかなり頭に血が上っていると思う。
少し間を置くことで、冷静になれるのはあるかもしれない。
実際、私がそうだったもんなぁ……。
ショウ先輩と別れた直後は、勢いのまま恋免返納なんてしちゃったし。
でも今は、ある程度なら普通に話せるようになった。
でも、それって……。
私は、少し歩を緩めた。
瞳にレンの背中が映る。
それって、いつも隣にレンがいてくれるからなんだよ?
細身だけど
肩幅だって広くて、男なんだってつい意識しちゃう。
そんな背中に勇気づけられて。
そんなレンが大好きで。
レンの背中が——。
——不意に視界いっぱいに広がった!?
「わっ!?」
と、思ったときにはもう遅い。
レンの背中に、鼻を思いっ切りぶつけてしまった!
「〜〜〜〜っっ!!!」
すっっごく痛い!!
鼻血が出なかったのは幸いだけれど。
でもきっと、鼻は真っ赤になっていると思う。
「ちょ、ちょっと! 急に立ち止まらないでよ!」
「しっ!」
鼻を押さえて抗議する私を静止して、レンはどこかを指差した。
「あそこ、ユウトがいる」
「えっ? どこ?」
レンが指差す先、それは小さな公園だった。
そこにはブランコがあり、人影が見える。
それは——。
「……ユウトくんだ」
ブランコに座ったまま、うつむく彼。
その姿には、なんだかとっても哀愁が漂っている。
そんな姿、今まで一度も見たことがなくて。
本気で落ち込んでいるんだな……。
そう思うと、胸がズキンと痛んだ。
そのとき、ユウトくんに近付いていく二人がいた。
小学校低学年くらいの女の子と、そのお婆ちゃんかな?
二人はニコニコと満面の笑みを浮かべている。
「お兄ちゃん!」
ユウトくんはゆっくりと顔を上げた。
その瞳が大きく開かれる。
「あれ? 二人は……」
「お兄ちゃん、日曜日はありがとね!」
女の子はそう言うと、ユウトくんの手を取った。
ユウトくんの顔にも微笑みが浮かんだ。
「ううん、大丈夫だよ。あのあと、ちゃんと遊びに行けた?」
「うんっ!」
「わぁ、良かったねー!」
続いてお婆ちゃんが口を開く。
「お兄さん、私の方も日曜日はありがとうございました」
「お婆ちゃん! 体は、もう大丈夫なの?」
「おかげ様で、こうして孫と散歩もできております」
「それは何よりだねー!」
笑い合う三人。
その笑顔の前に、私たちは首を
「日曜日って、試験じゃなかったの?」
「どういうことだ?」
「ま、まさか浮気!? ミユという彼女がいながら歳下と歳上に手を出したの!?」
「……んなわけねーだろ。あ、見ろよ!」
「それじゃね」
と手を振るユウトくんに女の子はぴょんぴょんと飛び跳ね、お婆ちゃんは深々とお辞儀をする。
二人に見守られ、ユウトくんは公園を後にした。
「……私、あの二人に話を聞いてくるっ!」
駆け出す私。
レンも後ろからついてくる。
「あ、あのっ!」
私の声で二人は振り返った。
「はい、何でしょう?」
「私たち、今の彼の友達なんです! 日曜日、何かあったんですか?」
お婆ちゃんは女の子と顔を見合わせ。
そして、私に向き直ると優しく微笑んだ。
「私は先週の日曜日、この子は先々週の日曜日に、あのお兄さんにお世話になったのですよ」
日曜日……。
私たちの知らない何かがある!
レンが私にうなずく。
私もレンにうなずき返すと二人を見た。
「すみません。詳しく聞かせてもらってもいいですか?」