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第64話『ふたり』

 ミユとユウトくんを何とかしてあげたい!


 その気持ちに嘘偽うそいつわりはない。

 だって、あんなに幸せそうだった二人が、このままダメになっちゃうなんて悲しすぎるから!


 鼻息荒く拳を握る私の隣で、レンがボソッと口を開いた。


「何とかするのはいいけどさ、具体的に何をするワケ?」

「それは……!」


 私は、拳を握ったままレンに振り返る。


「それは、これから考えますっ!」

「やっぱりプランなしかよ……」


 深いため息をつかれてしまった。

 でも、これくらいでくじけてなんていられない。


「今から委員会だけど、そのあと帰りながら一緒に考えよう! ね?」

「ったく……日野原は言い出したら聞かないからな」


 やれやれと苦笑するレン。

 その顔が、不意に真剣なものになる。


「だけど、俺もこのまま二人が終わっちゃうのは嫌だからな。何とかできるならしたいという気持ちはある。本人たちには、余計なお世話って言われるかもしれないけどさ」

「大丈夫! ぜんぜん余計なお世話じゃないよっ!」

「……日野原が言うなって」


 そんなことを話しながら、私たちは委員会が開かれる教室へと向かうのだった。



 それから一時間ほどが過ぎて、委員会は無事に終わりを迎えた。

 教室からカバンを取ってきたあと、レンと二人で学校を後にする。

 並んで歩く帰り道。

 いつもなら、心が踊るシチュエーション。


 でも、今の私には大切な使命があって、浮かれている余裕なんてない。

 ミユとユウトくん、二人の仲を取り持たなくちゃいけないから!


「……と言っても、正直どーしたらいいんだろ?」

「俺も、こういうの得意なわけじゃないからなぁ……」

「やっぱり、ちゃんと謝るしかないんじゃない?」

「うーん……。でも、謝るのなんて、ユウトの性格からもう何回もしてるだろうし……」

「それでもだよっ!」


 私はレンを見た。


「それでも、ミユが許してくれるまで謝り続けるしかないと思う。それが誠実さってことじゃない?」

「それは、そうかもしれないけどさ……。しつこい! って逆に怒らせちゃったりしないか?」

「う……。み、ミユなら大丈夫だと思うけど……正直、自信ない」


 ぽりぽりと頬をかく私。

 レンは頭の後ろで手を組むと、空を見上げた。


「……お互い、少し離れて冷却期間を設けるのも1つの手かもしれないな」


 冷却期間……。

 確かに、今、ミユはかなり頭に血が上っていると思う。

 少し間を置くことで、冷静になれるのはあるかもしれない。


 実際、私がそうだったもんなぁ……。

 ショウ先輩と別れた直後は、勢いのまま恋免返納なんてしちゃったし。

 でも今は、ある程度なら普通に話せるようになった。

 でも、それって……。


 私は、少し歩を緩めた。

 瞳にレンの背中が映る。


 それって、いつも隣にレンがいてくれるからなんだよ?


 細身だけどたくましさも感じられる背中。

 肩幅だって広くて、男なんだってつい意識しちゃう。

 そんな背中に勇気づけられて。

 そんなレンが大好きで。


 レンの背中が——。


 ——不意に視界いっぱいに広がった!?


「わっ!?」


 と、思ったときにはもう遅い。

 レンの背中に、鼻を思いっ切りぶつけてしまった!


「〜〜〜〜っっ!!!」


 すっっごく痛い!!

 鼻血が出なかったのは幸いだけれど。

 でもきっと、鼻は真っ赤になっていると思う。


「ちょ、ちょっと! 急に立ち止まらないでよ!」

「しっ!」


 鼻を押さえて抗議する私を静止して、レンはどこかを指差した。


「あそこ、ユウトがいる」

「えっ? どこ?」


 レンが指差す先、それは小さな公園だった。

 そこにはブランコがあり、人影が見える。

 それは——。


「……ユウトくんだ」


 ブランコに座ったまま、うつむく彼。

 その姿には、なんだかとっても哀愁が漂っている。

 そんな姿、今まで一度も見たことがなくて。

 本気で落ち込んでいるんだな……。

 そう思うと、胸がズキンと痛んだ。


 そのとき、ユウトくんに近付いていく二人がいた。

 小学校低学年くらいの女の子と、そのお婆ちゃんかな?

 二人はニコニコと満面の笑みを浮かべている。


「お兄ちゃん!」


 ユウトくんはゆっくりと顔を上げた。

 その瞳が大きく開かれる。


「あれ? 二人は……」

「お兄ちゃん、日曜日はありがとね!」


 女の子はそう言うと、ユウトくんの手を取った。

 ユウトくんの顔にも微笑みが浮かんだ。


「ううん、大丈夫だよ。あのあと、ちゃんと遊びに行けた?」

「うんっ!」

「わぁ、良かったねー!」


 続いてお婆ちゃんが口を開く。


「お兄さん、私の方も日曜日はありがとうございました」

「お婆ちゃん! 体は、もう大丈夫なの?」

「おかげ様で、こうして孫と散歩もできております」

「それは何よりだねー!」


 笑い合う三人。

 その笑顔の前に、私たちは首をひねった。


「日曜日って、試験じゃなかったの?」

「どういうことだ?」

「ま、まさか浮気!? ミユという彼女がいながら歳下と歳上に手を出したの!?」

「……んなわけねーだろ。あ、見ろよ!」


「それじゃね」

 と手を振るユウトくんに女の子はぴょんぴょんと飛び跳ね、お婆ちゃんは深々とお辞儀をする。

 二人に見守られ、ユウトくんは公園を後にした。


「……私、あの二人に話を聞いてくるっ!」


 駆け出す私。

 レンも後ろからついてくる。


「あ、あのっ!」


 私の声で二人は振り返った。


「はい、何でしょう?」

「私たち、今の彼の友達なんです! 日曜日、何かあったんですか?」


 お婆ちゃんは女の子と顔を見合わせ。

 そして、私に向き直ると優しく微笑んだ。


「私は先週の日曜日、この子は先々週の日曜日に、あのお兄さんにお世話になったのですよ」


 日曜日……。

 私たちの知らない何かがある!


 レンが私にうなずく。

 私もレンにうなずき返すと二人を見た。


「すみません。詳しく聞かせてもらってもいいですか?」

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