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第63話 夢のような時間①


 そして理玖くんとの約束の土曜日。


 あたしは近くの公園で理玖くんが迎えに来てくれるのを待っている。


 買物をして理玖くんの家に自分で行こうと思っていたのだけど、それを伝えたら理玖くんが一緒に車で買物に連れて行ってくれると言ってくれたのだ。


 最初は車で連れてってもらえてラッキーくらいに思って、その時は軽く喜んで返事をしたけど。


 よく考えたら、ちょっとこれ軽くデートっぽくない⁉


 てか、それって理玖くんの車の助手席にあたし乗れるわけでしょ!?


 一緒にカート押して買物出来るわけでしょ⁉


 えっ、ヤバい。それちょっと昔から憧れてた買物デート!


 理玖くんにその気がないとはわかっていても、降って湧いたようなその嬉しい状況は、テンション上がらずにはいられない!


 家まで迎えに来てくれると言ってくれてたんだけど、家族にバレたくもなくて、とりあえずは理玖くんも知ってる近所の公園で待ち合わせにした。


 ちょっと外の景色見ながら気持ち落ち着かせること出来てちょうどいいし、今となればホントに理玖くん来るのこんなにドキドキして待ってる自分がいるとかなんか可笑しく思ってしまう。


 この公園では、昔理玖くんと颯兄がよく連れてきてくれて、あたしと茉白ちゃん遊ばせてくれてたんだよな。


 その時は面倒見のいい颯兄のお友達のお兄ちゃんくらいに思ってたのにな。


 でも、ホントいうと、颯兄が初めて理玖くん連れてきた時、そのカッコよさに一瞬目を奪われたんだよな。


 不思議と颯兄大好きな自分のはずなのに、理玖くんにも懐いてた自分がいたから、もしかしたら幼いながら、そんな初恋的な感覚少しはあったのかもしれないな。


 もう随分昔の話で、あたしがどこから理玖くんに懐いたり惹かれたりしてたのかは、もうわからないくらいだけど。



「沙羅!」


 すると、公園前に車が止まり、運転席から出てきた理玖くんがベンチに座っていたあたしを見つけて遠くから手を挙げて声をかける。


「あっ、理玖くん!」


 あたしは理玖くんに返事と共に笑顔で手をブンブン振って返し、急いで理玖くんの元へ駈け寄る。


 えっ、ラフな私服姿の理玖くんめちゃめちゃカッコいいんですけど!


 だけど、ラフすぎずシンプルなのにオシャレを感じる着こなし。


 スタイルの良さと背の高さが際立つセンスで、いつものスーツ姿より更にカッコよさが増している。


 てか、こんなカッコよかった⁉


 それとも恋するフィルターかかってるせい⁉


 あたしは思ってた以上の理玖くんのカッコよさにすでにドキドキしてしまう。



「お待たせ」


「うーうん。全然! こっちこそわざわざありがとう!」


「ん。じゃあ、助手席乗って」


「了解!」


 あたしは理玖くんと会話したあと、助手席に回って座る。


「えっと。ナビどこ入れよっか。結構買うモノたくさんある?」


 運転席に座った理玖くんが確認をしてくる。


「あっ、うん。何品か作ろうと思ってるから」


「そっか。ならなんでも揃ってる大きめのスーパーのがいいよな?」


「うん、その方が助かる」


「了解。なら適当にそういう感じのとこ向かうわ」


 あたしに確認してナビを設定する理玖くん。


「あっ。そうだ。出発する前に一つ確認させてもらいたいんだけど……」


「ん。何?」


「理玖くん家に、今まで誰か料理作りに来た女性っていたりする……?」


「えっ。なんで?」


 ナビを入れる手を止めて、あたしを見て聞き返す理玖くん。


「あっ、えっと、作りたい料理があって、調理道具とか食器とか揃ってるのかな~って思って。それをまず最初に聞いておけばよかったんだけど、ごめん今更」


 余裕があればそれも気付いたんだろうけど、昨日ママに言われてそういうのが揃ってるのかと聞かれて、料理慣れしてないあたしはようやくその時点で気付いたのだ。


 ただ理玖くん家で料理を作れると単純に喜んでいただけで、そういう肝心なことをすっかり忘れていた。


 確かにそうだ。


 うちの家では全部揃ってるから作れるけど、普段料理しない理玖くんの家はキッチンとスペースがあっても、鍋とか食器とかそういうのなければ作れない。


 でももうそれは昨日の今日で諦めた。


 もう直接聞けばいいやって思って、今確認をしているわけで。


 もしなければ家から持っていったらいいよって言われたのでもしなければ待ち合わせしたけど、家に取りに戻ってもらおう。


「あ~。そういうことか。確かにそうだよな。先言っとかなきゃだったな。

オレ料理作らないからそういうの全然疎くて気付かなかった。悪い」


「うーうん。こっちこそすぐ気付かなくて。昨日ママに言われてあたしもようやく気付いた」


「ハハ。沙羅もかよ」


「うん。でも理玖くんのことだからこの前の女性も作ってもらう約束してたし、さすがに揃ってるよね」


 あんな約束してたくらいだから、きっと揃ってるんだろうなと思ってたから、わざわざ聞きたくないな~っていうのも実は少しあった。


 なんかこういう状況になって、直接知らない女性関係のことを間接的に知ってしまうというのは、やっばり嬉しいことではないわけで。


 今理玖くん好きな自分にとったら、必要以上にそういうことは知りたくないと思ってしまう。


 羨ましいだとか、嫉妬だとか、多分理玖くんにとって面倒であろう感情が出てきてしまうから。


 だけど、今日はせっかく二人だけの時間で、勝手にデートみたいに思ってるだけに、出来るだけ気分が落ちることは考えず、楽しいことだけを考えて理玖くんと楽しい時間を過ごしたい。




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