「いや! まさか! まだ好きだって気付いたとこだし!」
あたしは首をブンブンと大きく振って全力で否定する。
「そんな相手とどうやったらそんな手料理作るって話になんだよ」
あぁ~確かに。
適当に思いついただけのことに最もな指摘をされて、逆に納得してしまう。
ヤバい。恋愛初心者が適当なこと言ってボロ出てバレそう。
「それは……。ほら、なんか流れだよ!」
やめてー。これ以上突っ込まないでー!
もっとボロ出ちゃうー!
すでにあたしもうオドオドして戸惑ってんじゃん!
「好きだとか、言われたの?」
「いやいや! それもそこまでじゃないよ!」
言うわけないじゃん! あんたは茉白ちゃんが好きなんだから!
てか、なんでそこまで突っ込んでくるんだ?
「それさぁ。お前、いいように騙されてるとかじゃなくて?」
「えっ?」
いやいや、騙されてるもあたしが逆に理玖くん騙してるんです。
「お前チョロいから、それなりにいい感じのこと言われていいように流されてるだけなんじゃねぇの?」
えっ、なんでまたここでチョロい話になる。
そんでなんで理玖くんちょっとイラついてんの?
なんか言い方もそうだし、表情もさっきよりもなぜかちょっと険しく感じるんだけど……。
てか、なんでつっかかってこられるのか意味がわからない。
「そんなことないもん。あたしが勝手にその人のためにそうしたいって思ってるだけだし」
だから思わず、あたしもつい少し言い返すような言い方になってしまう。
だって、何も知らない理玖くんにそんな風に言われたのもなんか嫌だったし、しかも好きな本人に自分の気持ちを否定されてるような気持ちになってしまった。
あぁ。もしかして、理玖くんもこんな感じだったのかな。
あの時、遠回しにあたしに自分の気持ち否定されて、やっぱ腹立っちゃったのかな。
でもまぁあたしがそんな慣れないことするとか最初っから無理あるか。
別にあたしが料理作ったとこで嬉しいとかもないだろうし。
多分あたしも他の女性と同じ自己満になるだけだよな。
そもそも理玖くんはそういうことされるのもホントは断りたそうだったし。
それが自分のためじゃないとはいえ、同じようなことあたしにされても困るだけか……。
「ごめん。やっぱいいや」
だから、あたしはさっきの提案をなかったことにしようとする。
なのに。
「……いいよ」
今度はあたしを穏やかに見つめ、理玖くんが静かに呟く。
なぜかさっきまで否定していた理玖くんが、このタイミングでOKしてくれて、あたしは逆に戸惑ってしまう。
「えっ、いいの……!?」
そして、あたしはその戸惑った表情のまま逆に聞き返す。
「あぁ……。オレが味見してやる」
すると今度は険しい顔ではなく、穏やかな表情に変わる理玖くん。
「ホント!?」
そしてそんな理玖くんにあたしは嬉しくなってすぐに反応する。
「ようやくお前が見つけた好きなヤツだもんな。どんなヤツか知らずにオレがどうこういうのは違うと思うし」
「あぁ、うん……」
「お前がそいつと失敗しないように、ちゃんとオレがアドバイスしてやるから安心しろ」
そう言ってフッと優しく笑って、隣からあたしの頭にポンッと手をかける。
あぁ、理玖くんじゃない好きな人が存在しちゃった。
あたしの好きな人は目の前にいるこの人なのにな……。
だけど、今ではなんか少しわかるんだ。
自分を好きになってもらえなくても、一緒にいたい気持ち。
その人のために何かしてあげたいっていう気持ち。
だから、あたしはもう理玖くんの茉白ちゃんへの気持ちを否定は出来ない。
それはあたしの気持ちも同じように否定するということになるから……。
だけど、他の誰かをこんな風に笑顔で応援されるのは辛い。
理玖くんの中であたしは可能性がないとわかってしまう。
さっきのはただ心配してくれただけなんだろうな。
理玖くんの中では、きっとずっとチョロい妹的な存在だから……。
「ありがと! 理玖くん! あたし、頑張るね!」
だったら、せめて、あたしはあたしのままでいなきゃ。
だからあたしは明るく振る舞う。
うん、頑張る。
理玖くんの中でもっとあたしが大きな存在になれるように。
妹的じゃない、もっと特別な想いに変わってもらえるように。
茉白ちゃんみたいに料理が得意なわけでもないけど。
でも茉白ちゃんが好きな人に作ってる時、すごく嬉しそうで幸せそうだった。
それを食べてもらってるときは、またもっと幸せそうだった。
あたしもそれを見てそんな気持ち味わいたいって思った。
あたしの料理でも、理玖くんに”美味しい”って笑顔で喜んでほしいって、そう思った。
「なら。来週とかは?」
「来週って?」
すると、いきなり理玖くんの言った言葉がわからなくて聞き返す。
「予定? 空いてる?」
「えっ、うん。空いてるけど」
「来週ならオレ予定空いてるし、家作りに来れば?」
すると、いきなりのお誘い。
しかも理玖くんの家!?
「えっ!? 理玖くん家に!? 行っていいの!?」
「あぁ。お前ん家。実家だし、オレがわざわざ行くのも違うだろ」
「あっ。そっか」
あー。そういうのもまったく考えてなかったわ。
確かにそうだわ。
あの女の人は自分の家に招待する感じだったもんな。
そう思うと、うちは実家だし、それも確かになんか違うよね。
でも、理玖くんの家に行くっていうこともまったく頭になかった。
いや、てか思いつきで言ったことが、まさかの理玖くん家に行って料理作りに行くとか、なんか予想もしない展開になってきた。
さっき言った言葉も正直実現出来るとは思ってなかったら期待もしてなかったし。
しかもこんなすぐ。
理玖くんは意識してないとはいえ、好きな人の家に行くうえに、それに加えて初めての手料理作るプレッシャーもだなんて、あたしどっちも大丈夫か!?
「ってことで、せっかくならお前の手料理楽しみにしてるわ」
微笑みながらそんな嬉しいことを言ってくれて、また勘違いしそうになる。
これはホント素直に兄的目線で楽しみにしてるって言ってくれてるってわかってはいるけど。
でも、少し前進出来そうなそんな気がする。
てか、来週とか日が少ない!
ってことは、今週の休みから家で猛特訓してもらわなきゃ!
よしっ、頑張るぞっ!
あたしは初めて生まれたその気持ちにワクワクしながら気合を入れた。