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第13話 わかり合えない恋愛観⑤


「おぉ~ここが食堂。めちゃオシャレ!」


 それから食堂に着くと、想像以上のオシャレな食堂で、さすがカフェやレストランをプロデュースしてる会社でもあるからセンスいい!


 この雰囲気だけで楽しみになってテンション上がる!


「だろ。うちの会社は飲食店プロデュースやってるだけあって、食堂もちゃんとそういうの意識してんだよね。社長若くてそういう料理に関してもセンスあるから、常にこの食堂は関わった店の人気のメニューとか置いてくれんだよ」


「そうなんだ!」


 うん、実は密かにここの食堂で食べるの入社してからの楽しみだったんだよね~!


「期間限定のもあるから、毎日来ても飽きないようにテイクアウトもここで食べれるモノも常に工夫されてて、食堂来るだけでも勉強になるんだよね」


「なるほど。でもそんなあるとかめちゃ迷いそう!」


 理玖くんの話を聞きながら、すでにあたしは何を食べようか目移りしまくって、目線はそっちへキョロキョロ。


「好きなん買って来れば? 奢ってやるよ」


 すると、思ってもいない理玖くんの言葉が耳に入ってきて、あたしはすぐさま驚いて理玖くんの顔を見る。


「え!? なんで!?」


 そんなの珍しすぎて不思議に思ったあたしは思わず理玖くんに尋ねる。


「入社祝い」


「えっ、理玖くんそんな気回せる人なの?」


「当たり前だろ」


 なんか大人ぶってる~。


「え~それならもっと高いお店連れてってよ~」


 だったらぜひ高級店でご馳走してもらう方が何百倍も嬉しい!


「は? アホか。調子乗んな。お前レベルは食堂で十分なんだよ」


「何それっ!」


 食堂のランチ代くらいなら、あたしで全然出せるよ!


「そういうのは、いい仕事出来た時とかのがいいんだよ」


「えっ、じゃあ、あたしがいつかめちゃいい仕事出来たら連れてってよ」


「あ~、いつか出来たらな」


「言ったよ? 約束だからね!」


 この理玖くんの適当な言い方は絶対覚えてないやつだわ。


 そんなんだったら絶対メリットあるさっきみたい他の女性連れてくでしょ。


 だからあたしも理玖くんにそう言いながらも、期待は持たずに、その叶わないであろう約束を念押しする。


「はいはい。とりあえずここの中から昼飯選んでこい。後でメシ代払ってやるから」


「は~い」


 そう返事をして、周りにランチを探しに行く。


 とは言いつつも、なんか理玖くんのその適当な約束をわかってしまってる自分もなんか虚しいから、どうせならホントにめちゃめちゃデキる仕事して、高いお店ねだろうかな。


 ゴリ押しでお願いしたら、なんか連れてってくれそうな気がする。


 なんだかんだ言って理玖くん面倒見いいとこあるからな。


 こういうとこは、あたしもお兄ちゃん的感覚で甘えたくなるというか。



 そして、ホントに目移りするほどの豪華なランチの数々に、あたしはキョロキョロしてテンション上がりながら、隅から隅までチェックする。


 ってか、ホントここすごい!


 オシャレランチが盛りだくさんなんですけど!


 え~こんなん迷う~!


 てか、こんないろいろあるならホント毎日食堂でもいいな。


 食堂でオシャレランチ食べれるとか最高じゃん。


 で、そうだ。理玖くん奢ってくれるんだったよな。


 じゃあどうせ奢ってもらえるなら、ちょっとお高めの自分では躊躇しちゃいそうなやつ選んじゃおっかな~♪


 すでに選ぶことで楽しみながら、ようやく今日食べたいモノを決めて、理玖くんがどこにいるか辺りを見回して探す。


 あっ、いたいた。


 理玖くんを見つけて、その場所にあと少しで座ろうとすると。


「高宮さん♪ ランチもしよかったらご一緒してもいいですか?」


 急にその間に女性二人組が割り込んできて、理玖くんに声をかける。


 おーっと、危なっ。


 今座りかけてたよ。


 思わず座りかけた身体を停止し、そのまま立ち止まる。


 この人たち理玖くん見つけてまっしぐらに駈け寄ってきたから、後ろのあたし見えてない感じだな。


 なるほど。食堂でもこういう状況があるってことね。


 う~ん、この人たちと一緒に食べるなら理玖くんのとこには行かない方がいっか。


 じゃあ、どうしよっかな。


 それならちょっと離れたとこに行く方がいいかな。


 そう思って、方向転換して別の場所に行こうとすると。


「おい!」


「えっ?」


 すると、理玖くんが身体ごとあたしの方に全力で手を伸ばしてきて、トレイを持っていた腕を捕まえられる。


「お前どこ行くんだよ」


 そして理玖くんがあたしの腕を掴みながら、真剣な顔をしてあたしに確認してくる。


「いや……。お邪魔かなと」


 さすがにこの状況じゃ、あたしも居心地悪いし立ち去ろうとしてたのに。


「んなのお前が気にするとこじゃない。座れ」


 なぜか理玖くんが、そのまま表情を変えずに、腕を掴んだまま座らせる。


「えっ、でも」


「いいから」


 理玖くんに説得されて、渋々理玖くんの向かい側に座る。


「あっ、ごめんね。こいつの指導係になっちゃってさ。ちょっと急ぎの仕事の確認あるから、また今度」


 すると、その女性たちには愛想笑いをして、今度はなぜか断る理玖くん。


「あっ、そうなんですね。残念」


「じゃあまた」


 理玖くんに断られたその女性は残念そうにその場をあとにした。


 えっ? なんで? なんで断ったの?


 あたしはその状況を見ながら、さっきと違う状況に戸惑いを隠せない。


「さっきの人たち、よかったの?」


 そして思わず理玖くんに確認するも。


「あ~あの子らはこの前相手したから大丈夫」


「え?」


 なんかサラッとすごいこと言って返してくる。


 あっ、そんな感じ?


 そっか、これもまた深い意味はないってことか。


「今はお前にメシ奢るって言ってんだから、別にお前が気にする必要ない」


 だけど、理玖くんは今度はそんなことを言ってくれる。


 案外、律儀? それとも……。




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