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第2話 理想と正反対な王子様との再会②


「じゃ。こっち」


 と、その男性は、逆方向を指差し、あたしの隣に並んで、あたしのペースに合わせながら営業部へと一緒に向かい始める。



 えっ、またまた何このいい感じの流れ。


 こんな出会い方するとか、やっぱ運命じゃない?


 入社早々、こんなイケメンと二人で歩くとか幸先良すぎない?


 てか、さっき抱えられた時は一瞬でわからなかったけど、いざ隣に並んで歩くと、背も高くて、めちゃスタイルいいのに気付く。


 だけど、細く見えて、抱えられた時、腕もガッチリしてしっかり支えてもらったんだよな。


 そこも全然ひょろっとしてるどころか、あの一瞬で逞しさ感じられるくらいだった。


 実は細マッチョ? 


 このイケメンとスタイルで実は細マッチョとか腹筋バキバキとか、そんな萌えポイント潜ませてる王子ってこと!?


 ……いいっっ!!


 えっ、そんなん更に理想すぎんじゃん。


 雰囲気とか顔も優しい雰囲気で、だけどちょっと男らしくて、ホント理想でかなりタイプなんだよな~。 


 だけど、なんだろ。 


 なんか、どっかで会ったことある気するんだよな。


 でも、こんなイケメンだと、チョロいあたしなら覚えてそうなんだけどなぁ。


 たまたま見かけただけなのか、会ったことあるのか、なんかちょっとちゃんと思い出せないけど。


 だけど、やっぱりそのカッコよさとなんか見覚えある感覚が気になって、チラチラとその男性を盗み見る。


「ん? 何?」


 すると、あからさまに真横であたしがチラチラと見つめている視線を感じたのか、その男性が反応する。


「いえ。あの、なんかどっかで会ったことあるような気がして……」


「えっ……? いきなり大胆だね。先輩ナンパするとか」


 それを聞いた瞬間、その男性は目を見開いて一瞬驚くも、すぐに少し笑って言葉を返す。


「へっ!? ナンパ!? いやいやいや! じゃなくて! でもこんなカッコいい人なら会ったら覚えてるはずなんで……、やっぱ勘違いかもです……!」


えっ!? まさかそんな風に思われるなんて!


あたしは素直に伝えただけのことが、まさかの思わぬ誤解が生まれそうなのに焦って、必死で動揺しながら否定する。


「へ~。君から見てオレ、カッコいいって思うんだ?」


「はい。入社早々、素敵な先輩に案内してもらえてラッキーみたいな。へへ」 


 絶対この人社内でも人気ありそうな感じするもん。


 雰囲気とかもスマートで話しやすいし気取ってもないし。


 そんな人に初日から出会えて、あたしかなりラッキーなんじゃない!?


 と、一人ちょっとウキウキしていたら。


「あ~なるほど。そんな感じね」


 すると、その男性が、さっきとは違う少し意味ありげな微笑みを浮かべながらボソッと呟く。


 ん? なんかちょっと違う雰囲気に感じたのは気のせいかな?


 今の言葉どういう意味だろ。


 もしかして、あたしいきなりいろいろぶっちゃけすぎて、入社早々イケメンに反応するチョロい女だってバレた!?


 結局いつも気に入った相手がいると、すぐにこうやって反応しちゃうからチョロい女だってすぐに周りにも相手にもバレがちなんだよな。


 だけど、常に理想の相手を探し続けてるあたしにとっては、どの出会いも無駄にしたくないもん。


 だから一つ一つの出会いが運命かもって確かめたくなっちゃう。


 だって理想を追い続けて、そしていつかホントに理想の相手が見つかったら最高じゃない?


 そんな人好きになれたら絶対幸せだもん。


 辛い恋とか絶対無理。幸せな恋がしたい。


 胸がキュンキュンして温かくなって、いつでも穏やかに幸せを感じられるような、そんな恋をいつかしてみたい。


 絶対この人じゃなきゃダメだと、何があってもその人しか好きでいられなくなるような、お互いそんな強い想いで結ばれている運命的な恋。


 今はまだそんな理想の人に出会えてないけど、だけどいつかそんな運命の人に出会えるはず!


 だから、もしかしたらこの人もその可能性あるかもしれないし!


 今のうち、この人の名前聞いておこっかな。


 と、思いながら、その男性に話しかけようとすると。


「ハハッ。もう無理」


 ……えっ?


 すると、その男性がなぜかいきなり吹き出して笑い始める。


 え? あたしなんかした?


 いきなりのその今までと違うその男性の反応に、あたしは一気に冷静になって、そのまま唖然とする。


「お前。相変わらずだな」


 ……んっ?


 今、なんと? お前? 相変わらず?


 ってか、いきなり口調違いすぎない!?


 え、周り他誰かいる!?


 いきなりのよくわからない状況に、思わずまたあたしは周りをキョロキョロと見渡す。


「全然変わんねぇな。チョロ沙羅」


 チョロ……沙羅……、チョロ沙羅……、チョロ沙羅ぁぁ!?


 その言葉を聞いて、すぐさま刻みつけられていた昔の記憶が一瞬で蘇る。


「えっ!? なんで!?」


 そんな言い方するヤツは一人しかいない――!


「まさか、理玖りくくん!?」


 あたしは、まさかと思いながら、そうであってほしくない気持ちを抱えながら、思い当たるその名前を呼ぶ。


「久しぶりだな。チョロ沙羅」


 すると、さっきまで優しいイケメン王子だと思ってたその人物は、そう言った瞬間、意地悪く二ヤリと微笑んで、今度は満足そうにあたしをバカにするような目で見つめる。


 うーわーっっ!! 嘘でしょー!!


 まさかのさっきの王子が理玖くんだったなんて……。


 あぁ、なんという不覚……!


「フッ。そっかそっか。チョロ沙羅はオレのことカッコいいって思ってたんだな~」


 すると、理玖くんが意地悪く嬉しそうに、指摘されたくないところをわざとつつきながら、からかってくる。


「ちょっと! もうそのチョロ沙羅っていうのやめてくんない!?」


 そして、あたしも相手が理玖くんだと気付くと、いつもの自分に戻りすぐさま反論する。


「いや、だってお前全然昔とチョロいの変わってねぇじゃんかよ」


 と、昔のあたしを知ってるこの男。


 そうホントに昔も昔。あたしが小学生の頃から知ってるあたしの天敵。


 高宮たかみや 理玖りく 27歳。


 5歳上の兄・颯人はやとの親友でもあるこの理玖くんは、お兄ちゃんが中学時代からの付き合い。


 家も近所で近くて、当時あたしが小学生時代から家に遊びに来たりしてたから、顔を合わせるたびに、なぜかあたしはからかわれる対象だった。


 あたしはその頃から王子様を夢見るおませな女の子で、理玖くんからはなぜかそのことでいつもいじられ、からかわれ……!


 だからそんな理玖くんは、あたしにとっていつの間にか天敵になった。


 ってか、なんで最初に気付かなかったんだ!


 そうじゃん! この顔よく見たら理玖くんじゃん!


 だからなんか見たことある気したんだ!


 それこそ会わなくなって数年経ってるし、女の子と遊びまくってる高校までのチャラい理玖くんしか見てなかったから、まさか今はこんな爽やかになって大人な落ち着いた感じになってるとは思わないから全然気付かなかった!


 昔からあたしは優しくて一途で王子様みたいな人が理想だったから、とにかくそんなクズな理玖くんは理想と一番ほど遠い真逆の存在。


 だから理玖くんを王子様対象として見ることなんてありえないのに!


 あぁ~理玖くんにちょっとトキメいちゃったのが、ホント悔しすぎる……!


 まさか理玖くんを王子様かと思ってしまう時が来るなんて……。







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