ロジャーは看板の電話番号に電話を掛けると何やら話しはじめた。
リアムが呆れるほど巧みな話術で話を聞き出しいる。
その口達者ぶりに、量販店の店頭販売員をしたらいい成績をあげるだろうなと思った。
その後、適当な作り話を重ねた後、ロジャーが電話を切った。どうやら必要な事は聞き出したらしい。
「どうだった?」
「ちょっと待って……」
そう言ってロジャーは、スマホをいじりだした。
こんなときにと、リアムは苛立ち、口を出そうとした時だった。ロジャーはスマホの操作を止めて得意げな顔でリアムの方を見る。
「この開発現場で何かを掘り出したのは本当で、その後、奇妙な事が発生しだしたのも本当らしいね。いい動画のネタができたよ」
ロジャーは続けた。
「結局、土地の価値も下がって開発は中断し今では放置状態というわけだ。だけど、妙にひっかかったんで、いろいろ調べてみたら、いくつか気になる事が出てきた」
「それはなんだ?」
「会社の営業利益ってある程度ネットで調べられるんだけど、この会社はちょっと気になることがある。まあ、僕の直感だけどね。僕のノートPC使わせてくれればもっと調べられるよ」
「わかった、どうすればいい?」
「そうだね……えーと、まず、僕の泊まってるモーテルまで行ってノートPCを持ってくる。それと……」
「なんだ?」
「お腹空かないかい?」
その後、ロジャーの言う通り彼の泊まっているモーテルまで行った。
ロジャーは、部屋にPCを取りに行ったが、なかなか戻ってこなかった。
その間、車の中で待つリアムたちは、ぼんやりと町の通りを眺める。
「あの人、信用できるの?」
「さあな、悪いやつじゃなさそうだがね」
「人間は全部、おなじに見える」
「俺とあいつとは見分けはつくよな」
「なんとかね」
冗談とも本気ともつかない言葉にリアムは少し心配になる。
そうしていると、いつの間にか戻って来たロジャーが車の窓ガラスをノックした。
その後、場所を町で唯一のレストランに向かった。
窓際のテーブル席に座り、注文を済ますとロジャーが勿体つけながら話しだす。
「いろいろ、わかったよ」
曰く、部屋でPCを使っていろいろ調べたということだった。
彼はハッカーとまでは言わないものの、ある程度のネットやコンピューターの知識を持っているらしい。途中、聞いた話はでは前職はそんな関係の仕事だったと言われて納得した。
「えーと……この開発会社の業績は、お世辞にもよかったとはいえない。ある時期までね。それは、ある何かを掘り起こした時までの話で。その後、何故か業績が上回っている」
「融資が通ったとか、滞っていた客からの入金が入ったとかでは? そっちの方がよくありそうじゃないか」
「それも考えたけど、ある一社からの多額の入金があったんだ。しかも今まで取引のなかった会社とね。これってどう思う?」
「……まさかとは思うが、掘り起こしたものを売った代金か?」
「ああ、そのとおり」
リアムとフルドラは顔を見合わせた。
「相手のその会社は、建設会社でもレジャー運営会社でもない。調べると投資会社らしいんだけど、なにかひっかかる」
「なんて会社だ?」
ロジャーは、メモを取り出した。
動画のネタにするのかびっしりと書き込みがされていた。本人以外が見るとおそらく解読不能だろう。
「うーん……ちょっと待って。マルジン・ウィスルトって会社だ。もしかしら個人名めもしれないけど」
その時、いままで様子をみていたフルドラが唐突に反応する。
「マルジン・ウィスルト?」
「知ってるのか?」
「私達、妖精の敵。盗人、盗賊……私達の大事な物をよく盗んでいく嫌な連中よ」
「ねえ、聞き間違いかもしれないけど、今、妖精って言った?」
ロジャーが口を挟むがリアムは受け流した。
「気にするな。それより、こうなると、そのマルジン・ウィスルトが聖剣を手に入れている可能性が高いってことじゃないのか? これで問題解決にかなり近づいたってわけだ」
「……そうね。だけど問題がある」
フルドラが無表情で続ける。
「私達、マルジン・ウィスルトがどこにいるのか知らない」
「なんだよ、期待を持たせやがって」
リアムは一瞬、この面倒な仕事から離れると思ったが、すぐに失望する。
「それならなんとかなるかもよ」
ロジャーが口を挟んだ。
「まじか、ロジャー・ラビット」
「やめてくれ、そのロジャー・ラビットて呼ぶの」
「悪かった
「
ロジャーが部屋から持ってきたノートPCを操作し始めた。
フルドラはリアムの耳元でささやく
「彼、
どうやら妖精に冗談は通じないらしい。だがそうしておいた方がロジャーがすることに疑問を持たなさそうなので否定せずにおく。
しばらくすると、PC操作をしていたロジャーの表情が変わった。
どうやら何かを見つけたらしい
「マルジン・ウィスルトらしき場所をつかんだ」
「やるじゃないか、大した才能だ。暴露系配信者に変わった方がいいんじゃないか?」
「かもね。で、マルジンなんだけど……複数の会社の所在地になっている」
「どういうことだ?」
リアムが眉をしかめる。
「よくあるんだ、たとえばネット上のみで存在しかしてない会社が使う手」
「幽霊会社?」
「そうかもね」
「どうすればいい?」
「お手上げだ。僕はここまで。そこまでプロじゃないから」
「だめなの?」
フルドラが言う。その表情は明らかに落胆している。そんな顔を見せられるとリアムも何か新たな手を打たねばという気になる。
「仕方がない……」
リアムは自分のスマホを取り出した
「相手がそういった胡散臭い会社なら、俺の悪い友達の方が、何か知ってるかもしれない」
リアムは自分のスマホを取り出すと、どこかに電話を掛けた。
リアムたちのいる食堂の向かいに車が一台停まっていた。
運転席にひとり、後部座席にひとり。彼らは、エクスカリバーを掘り起こした場所からずっとリアム達の後を尾行し、監視し続けていた。
後部座席の男はカメラを目立たぬように構えてリアムたちを密かに撮影した。撮影を終えると素早く何事もなかったようにカメラを下ろす。
その時、運転席の男の携帯電話に電話がかかってくる。
「わかりました。対応します」
運転席の男は、そう言って電話を切ったあと、男はホルスターから銃を抜き。弾丸カートリッジの残数を確かめた。