エレファント&キャッスルの地下鉄から出たリアムは公園に向かった。
待ち合わせの場所に来るとベンチにグレーのフードを目深に被った若者が座っている。
リアムは近づくとベンチに座った。
「よう、リアム。元気かい」
若者は言った。
「ブロック。お前の方はどうだ? 今日はすまないな。煩わせて」
「あんたは恩人だ。このくらいどうってことないさ。これ、注文の品」
ブロックは、使いまわしたようなくしゃくしゃの紙袋を渡した。
リアムはそれを受け取ると中身を確認した。
中にはサランラップに包まれたサンドウィッチと缶ビール。
それとビニール袋に包まれた使い古したFNブローニング・ハイパワーが入っていた。それと一緒に包まれているのが弾丸を詰めたカートリッジが2本
リアムは中身を確認した後、ブロックに輪ゴムで巻いたポンド札を渡した
「毎度あり。サンドウィッチとビールはサービスだから」
「おふくろさんの具合はどうだ?」
「……あまりよくないよ」
「そうか、いずれ良くなるさ」
「かもね。あんたの方はどうだい? まだ変なものを見る?」
「相変わらずさ。でもそのおかげで稼ぎになる仕事が来た」
「そう? それが今回の仕事? また金持ちのボディガード?」
「いや、違う。何かを探すらしいが詳しい内容はよくわからない」
「なにそれ。やばいじゃん?」
「だから念のためこいつをお前に用意してもらった」
そう言ってリアムは紙袋を掲げた。
そうしていると高級車が向かいの車線に停まった
ブロックがこの辺りにそぐわない高級車に目を留める。
すると運転席からブロンドヘアの美女が顔を出し、手招きしてくる
「ああ、お呼びだ。そろそろいかないと」
「ねえ、あれが今回の雇い主? 超美人じゃん」
「いや、雇い主は別で、あれは雇い主の用意したガイドみたいなもんだ」
ブロックは口笛を吹いた。
「超イケてるガイドだ。いい仕事だね」
「ああ……けど、俺は嫌われてるみたいだ」
「それは残念だね。まあ、ひとの好みはそれぞれだから」
「とにかく俺は行く。ありがとうな」
リアムは紙袋を持ってベンチから立ち上がると車に向かった。
ブロックはポケットから右手を出すと軽く振って、リアムを見送った。
早足で車にたどり着くとリアムは車に乗り込んだ。
「よく居場所がわかったな」
「私の特技よ。あれ、友達?」
「ああ、ガキの頃からの。俺の弟みたいなやつだ」
「彼、あまりよくないわね」
「おい、あいつを侮辱するな」
「体の具合が悪いって意味よ。彼、何かよくないものが体に溜まってる」
リアムは窓からブロックの方を見た
ベンチに座るブロックは顔色も悪く、病気のようにも見える
「なんでわかるんだ?」
「人間には色がある。あなたにもね。彼の色は良くない色。そう……死の色ね」
「体が悪いってことか?」
「どこがと言われると説明しにくいけど、彼の場合は肺のあたりかしら?」
「ちょっとまってろ」
リアムは車から降りてブロックの元にもう一度向かった。
フルドラが運転席から様子を伺う、
リアムは、ブロックに何かをまくし立てた後、ポケットから金を取り出し押し付けた。そして再び、車に戻ってくる。
「おかえりなさい。何をしてきたの?」
「急いで病院に行って検査するように言ってきた」
「手遅れかもよ」
「まだわからないだろ」
「……そうかもね」
フルドラの話し方にリアムは少し苛立つ。
「で? どこにいくんだ?」
「コーンウォール」
そう言うとフルドラは、車をゆっくりと走らせ始めた。