目次
ブックマーク
応援する
7
コメント
シェア
通報
第17話 晩餐

教会から無事に脱出し、エルドリアの街に戻ると、すでに日は暮れ、街は夜の賑わいを見せていた。二人はまず冒険者ギルドへと足を向け、ソウルストーンを売却することにした。


ギルドに入ると、受付嬢がにこやかに迎え入れてくれた。ルナが持っているソウルストーンを掲げると、受付嬢の目が驚きで見開かれた。


「これは……本物のソウルストーンですね!しかも、状態がかなり良い。大変貴重なアイテムです」


受付嬢は嬉しそうに手続きの準備を始め、少し緊張した面持ちで「100kゴールドでいかがでしょう?」と尋ねてきた。


「100kで……、もちろん、それでお願いします!」レイは驚きと喜びが入り混じり、思わずガッツポーズをした。


受付嬢から渡された袋を手に取ると、中にはびっしりと詰まった金貨が鈍く輝いていた。レイは初めて手にする大金の重みをしみじみと感じながら、ルナと目を合わせた。


「これで、しばらく金に困ることはなさそうだな」とレイが感慨深げに言うと、ルナは少し微笑み、「ええ、でも、油断して散財しないようにね」と釘を刺した。


二人はギルドを後にし、その足で酒場へと向かった。エルドリアの酒場は夜になればなるほど人が集まり、活気が溢れていた。入った瞬間、漂ってくる香ばしい肉の匂いと温かい光に、二人は思わず笑顔になった。


「今日は思いっきり食べて飲もう!」レイがそう言ってテーブルに腰を下ろすと、ルナも「そうね、こんな日くらいは贅沢してもいいわよね」と嬉しそうに答えた。


レイが店員を呼んで注文を伝えると、次々と豪華な料理が運ばれてきた。ジューシーなステーキ、スパイシーな香りを漂わせる魚料理、見たこともない果物が盛られたデザートまで、テーブルを所狭しと並んでいる。ルナの目がきらきらと輝いているのが印象的だ。


「いただきまーす!」二人は声を揃え、料理に手を伸ばした。肉を頬張りながら、レイはふと思い出したように言った。「そうだ、準備も整ったことだし、メフィストフェレスに連絡を取ってみるか」


ルナが頷くと、レイはさっそくメニュー画面を開き、メフィストフェレスにメッセージを送信した。


「それは良かった!ちなみに今、どこにいるのかしら?」すぐに返信が返ってきた。


「今、町の南にある酒場にいるよ」とレイが返すと、少し間を置いて、「あら、偶然ね!私も同じ酒場にいるわ」とメフィストフェレスから返事が来た。


驚きと共に周囲を見渡すと、奥の席に金髪の男性がにこやかにこちらを見つめていた。


二人が近づくと、メフィストフェレスは優雅に立ち上がり、にっこりと笑顔を浮かべた。「やあ、やっと来たわね、レイ!そして、あなたはルナちゃんね。こうして会えて嬉しいわ。乾杯でもして親交を深めましょうか」


レイは気さくに手を差し出し、「メフィストフェレスさん、お久しぶりです」と笑顔を返す。ルナも軽く会釈し、「遺跡探索をする仲間として、ぜひ協力してほしいわ」と微笑んだ。


メフィストフェレスはグラスを掲げて二人に促した。「じゃあ、せっかくだし乾杯といきましょう?今夜は盛り上がりましょうね」


レイとルナもグラスを掲げ、「乾杯!」と声を合わせて音を鳴らした。


グラスを置くと、メフィストフェレスは早速遺跡について話を始めた。「さて、あの遺跡の噂だけど、どこまで知ってるかしら?」


レイが小さく首を振り、「宿のおかみさんやギルドから少し聞いたくらいで。遺跡で異変が起きてるって話だけど、具体的なことはまだ知らないですね」


「そうなのよ。実はね、あの遺跡、最近までただの”禁じられた場所”として静かだったのに、急に不気味な現象が増えたのよ」とメフィストフェレスは指を絡ませながら、少し不安げな表情で語る。


ルナが目を輝かせて、「例えば、どんな現象が起きているの?」と尋ねると、メフィストフェレスは唇をわずかに引き締めた。


「地面が揺れたり、怪しい光が漏れてたりすることもあるらしいわ。何人もの冒険者が遺跡に入ったまま戻らないって噂も聞いたわよ。しかも、その内部にはかなりの強敵が待ち構えているの」


レイがふと、「もしかして、リッチみたいな奴か?」とつぶやくと、メフィストフェレスは目を丸くして驚き、「リッチにもう会っちゃったのね?驚いたわ。あれはアンデットのリーダーみたいなものだから、すでに出会ったなんて意外だったわ」と答えた。


レイが少し照れくさそうにしていると、ルナがクスクスと笑い、「あの時は走って逃げ回ってたけどね」と補足した。


メフィストフェレスも笑顔を見せ、「あなたたち、良いチームじゃないの」と楽しげに頷いた。


それから三人は和やかに食事を続け、遺跡探索の計画やそれぞれのスキル、そして次の戦略についてじっくりと話し合いを始めた。


三人は酒場の一角にある少し静かな席に陣取り、作戦会議を始めることにした。ランタンの暖かい明かりがテーブルを照らし、隣のテーブルから聞こえる賑やかな話し声が、逆にここだけが別世界のような落ち着いた空気を生み出していた。


「まずは、お互いの職業と得意な役割を共有しておこうか」とレイが切り出すと、メフィストフェレスが「そうね、必要な情報をお互いに知っておくのは大事だわ」と頷いた。


レイが一息ついて口を開く。「俺はユニークジョブの観測者だ。戦況の分析や、敵の動きを読むのが得意で、サポート役としてチームに貢献できると思う」


その言葉に、メフィストフェレスは目を輝かせ、「観測者、ユニークジョブね…!どんな風に敵の動きを読むのかしら?まさか、敵の思考や動きが見えるわけ?それとも、未来が見えるってこと?」と興味津々で身を乗り出す。


その姿を見たルナは少し苦笑しながらも、「メフィストフェレス、後で詳しく話すから今は…」と小声で言うが、メフィストフェレスは気づかない様子で続ける。


「例えば、目に見えないトラップなんかも分かるのかしら?そうなら驚異的だわ…アタシ、そういう能力って憧れちゃうのよ」


レイは少し困ったように笑い、「そこまで詳しくは分からないけど、敵の大まかな位置や動きは掴めるよ。トラップも場合によっては見抜けるかな」


「なるほど…」とメフィストフェレスはさらに興味をそそられた表情を浮かべるも、ふと我に返り、気恥ずかしそうに「ごめん、ちょっと興奮しちゃったわね。こんなに聞かれたら嫌よね」と言って、肩をすくめて照れ笑いを浮かべる。


レイは気にすることもなく、「いや、大丈夫さ」と柔らかく答え、メフィストフェレスはほっとした様子で「優しいのね」と微笑む。


気を取り直し、今度はメフィストフェレスが自分の役割について話し始める。


「アタシは戦士よ。タンク役として、前線でガンガン敵の注意を引き受けるのが得意なの。二人とも、安心して攻撃に専念してちょうだい」と、頼もしい笑顔を浮かべて言う。


レイとルナは彼女の言葉に力強さを感じて頷いた。


最後に、ルナが少し前に身を乗り出して言った。「私は魔法使い。後方からの攻撃や支援を担当するわ。遠距離から魔法で援護するから、前線のサポートも任せてね」


メフィストフェレスは満足げに微笑み、「いいわね、ルナちゃん。じゃあ、アタシが前で敵を引きつけるから、レイは観測者として戦況を把握し、ルナちゃんは後方から魔法で攻撃やサポートを担当してもらう、って感じでどうかしら」


レイとルナは顔を見合わせ、同時に頷く。「それで行こう。お互いの得意分野を活かして、遺跡探索を成功させよう」とレイが拳を軽く握りしめ、やる気を見せると、メフィストフェレスとルナも力強く頷き返した。

コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?