「金に困ってる?ならエルフの知り合いから借りろ。心当たりあるだろ?」
少々遊び過ぎて懐が寒いことを悪友に相談すると、妙な答えが返ってきた。
確かに顔馴染みのエルフは一人いる。うちの曽祖父が酒場で知り合ってからの付き合いだ。
「エルフの寿命とか、バカみたいな時間の感覚は知ってるだろ?」
ああ、もう十数年前にぽっくり逝った俺そっくりの駄目親父と一緒に釣りをした時のことを〈ついこの前〉と言うのには辟易した。
「だからいいんだよ。あいつらはのんびり屋さんで、金の返済もずいぶん待ってくれる。人間の尺度で生きてねぇんだな」
……そんな具合なら、多少誤魔化せば俺の寿命が先に来て返す必要もなくなるのでは?
「はは!そりゃいいなぁ!」
確かに、我ながらいい考えだ。早速あのエルフを今日の晩飯に誘って話を進めることにしよう。
長命故に暇を持て余しているエルフは二つ返事で誘いに乗り、思惑通りいつもの酒場へ二人で繰り出せた。
酒がほどほどに進んだ辺りで、できる限り哀れっぽく、両の掌で顔を覆いながら同情を誘う口調で本題を切り出す。
金が無くなった理由には触れず、今金に困っていることだけをできる限り惨めに話す。
エルフは自分の話にうんうんと相槌を打った後、こう返した。
「成程。勿論いいとも我が友よ」
成功だ。掌で隠した顔に笑みが浮かぶ。
「でも、君のお父さんが私から借りたお金を返してからね」
自分の顔からするりと笑みが抜け落ちるのが分かった。
ああ、畜生。考えることは一緒だったなクソ親父。