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第36話 自殺

 それからボクは病院に帰る気にもならず、夜道を1人車椅子で彷徨った。

 今頃、病院はボクの不在で大騒ぎだろうか。そんな事はどうでも良い。もう、生きていても何の意味も無いのだから。


 ボクは今日、これから人生を終わらせるつもりだ。でも、この身体じゃ首も吊れないし、高所にもいけない。それなら踏み切りに飛び込むのが良いか。

 もう散々だ。皆の中に戻れないのなら、もう何も頑張る必要は無い。ボクは、もう生きる気力を完全に失ってしまった。


 夜道をひたすらに進んでいると、ようやく踏み切りが見えてくる。ボクが死ぬとしたら、轢死か。

 鉄の塊の押し潰されて、バラバラになって……ボクの最期としては相応しいのかもしれない。


 ボクは意を決して踏み切りの中に立ち入ろうとするけれど、中々先へと進めない。怖い、今更になって、死ぬのが怖い。兄さんが悲しむ顔を想像すると、最後の決意が中々固まらない。

「生きたくない、けど、死にたくない……」

 矛盾しているし、我ながら本当に滑稽だと思う。ボクは自殺すら満足に出来ない。

 生きる事も、死ぬ事も満足に出来ない……もうボクの中の感情はぐちゃぐちゃに掻き乱されていた。

 線路沿いの夜道で、ボクは人目も気にせず大声を出してボクは泣いた。



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