目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第34話 比較

 それからもボクは病室を密かに抜け出し、ゆうちゃんやあんちゃんの姿を見に来ていた。

 声を掛ける事も、触れる事も出来ない。2人の姿を遠くから見ても、ただ苦しいだけなのに……何故かボクはここへ来てしまう。


 今日はまだ2人を見つけられていないけれど、辺りも暗くなってきたし、そろそろ帰ろうかと思った時……近くを通った学生達の会話が耳に入る。


『塚原君、カッコ良くない?』

『あたしは西崎君の方が好みかなぁ』

『えー、チャラ男じゃん。塚原君みたいに爽やかなスポーツマンが良いのに!』

『てか、塚原君の妹さんもめっちゃ可愛いよね! 美男美女って感じで! 最初カップルかと思ったもん!』

『あー、練習終わりによく来てる子? 確かに可愛いけど、妹さんなんだ~』


 それは女の子同士の何気無い会話だった。

 それを聞いて、ボクは成長したゆうちゃんとあんちゃんが並んで歩く姿を思い浮かべる。

 確かにお似合いだ。兄妹だと知らなければ、美男美女のカップルにだって見えるだろう。仲も良くて、本当にお似合いだと思う。

「あんちゃん、凄く可愛いもん……ボクなんて、敵うわけないや」

 成長したあんちゃんと自分の姿を頭の中で並べてみる。ボクにはあんちゃんみたいに綺麗な身体も、人形みたいな大きな両目も、自由に動く脚も無い。

 比較にすらならない、女の子としてボクが優っている点など何1つ無い。


『おにーちゃーん!!』

『またお前か……毎日来なくて良いって』

 その時、遠くから聞き覚えのある声が耳に入る。

 ゆうちゃんとあんちゃんだ。ボクは急いでいつもの木の陰に隠れる。

『妹さん? 塚原君に似て美形だね、可愛いじゃん』

『ちょっと、からかわないでくださいよ!』

『可愛いだって~! お兄ちゃん、もっと誇って良いよ!』

『お前、少しは謙遜しろよ……』

 近くを通りかかったであろう上級生に褒められてあんちゃんは喜んでいたが、ゆうちゃんは何だか恥ずかしそうだった。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?