「……優姫、大丈夫か」
「うん、本当は分かっていたんだ。こんな醜いボクが、今2人に会っても受け入れて貰える訳が無いって」
「違う! お前は醜くなんか……」
ボクの言葉に、兄さんは顔を真っ赤にして怒る。
こんなに必死な兄さんは初めて見たかもしれない。
「……醜いよ。鏡を見れば分かる。こんな姿じゃ、2人もびっくりするだろうね」
「安心しろ。俺が絶対2人に会わせてやる。だから……そんな顔するな」
兄さんはボクの手を力強く握った。その手はとても暖かった。
「兄さん……」
「俺は、妹の為なら何だってする。これから先もずっとだ」
きっと、兄さんなら本当に2人を連れて来てくれるかもしれない。けれど……。
「……ありがとう。けれど、父さんの言う通り今2人に会っても驚かせてしまうだけだ。それに再会を果たしてしまえば、それと同時にボクは残りの人生を生きる目的も見失ってしまう。だから……楽しみはもう少し先に取っておこうと思うんだ」
父さんの言葉を聞くまで、ボクは自分の事だけしか考えていなかった。
今、2人に会ってどうする? 生傷だらけで、下半身の自由も失ったボロボロの状態で……それでは2人を驚かせるだけだ。今、2人に会ったとしても……それはボクの自己満足にしかならない。
けれど、いつかは再会する。どんな手段を使ってでも、2人と再会して元の生活を取り戻す。だから……それまでは死ぬ気で生きてやると、ボクはそう誓った。
「だから、兄さん。ボクが2人と再会するまで……また昔の4人に戻れるまで、手助けして欲しい。ボクはリハビリも頑張るし、少しでも綺麗な女の子になる。だから……」
「……当たり前だろ。お前の為なら、何だってしてやる。俺はお前の兄貴だぞ」
兄さんは強張った顔で言った。こういう時の兄さんは本当に勇ましいし、頼りになる。
「……頼もしくなったね、兄さん」
今はただの子供同士の約束だけれど、こんな立派な兄さんがいれば、もしかしたらボクの夢も叶うかもしれない。
「絶対、約束だからね」
兄さんはボクの手の小指に自らの小指を絡ませ、ボクたち兄妹は初めて『ゆびきり』で約束をした。