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第11話 疑念

【7月8日 試合終了:塚原 祐介】


 今日の練習試合は圧倒的な結果で終わった。


 7対0という今までの西高対南高での試合ではまずあり得ないような結果だ。それほど西崎の件が部員たちに動揺を与えていたのだろう。


 あちらのベンチから西高監督の怒号がこちらまで聞こえてくる。内容はもちろん今日の試合結果に関する事だろう。

「あーあ……あっちの監督ガチギレじゃん。まぁ、いくらなんでも今日の試合は酷すぎたからな、無理もねぇか」

「……なんていうか、勝ったって感じがしないな、西崎もいなかったし……」

 俺はそう吐き捨てる。あいつがいないのに勝ったって嬉しくない。なんだかんだであいつは中学時代からのライバルだったから。

 そして、そんなあいつが体を拘束されたまま轢かれるなんて……西崎の事を考えるとやり場のない怒りを感じる。

 それに右足の親指の件が事実なら、怒りと同時に吐き気を催しそうだ。


「ま……西崎が回復したらまたやり合えるさ。それまでにみっちり練習しとかないとな?」

 そう言って和彦はポンと俺の肩を軽く叩いた。こういう時にも俺を慰めてくれる和彦はやはり頼りになる俺の兄貴分だ。

「しっかし、今日も疲れたなぁ。どうだ、帰りに飯でも行かねぇか?」

「いや……ちょっと今日は……遠慮しとくよ、ごめん」

「あ……だよな。すまん、無神経だった。近いうちに西崎の見舞いでも行ってやれよ」

 和彦が俺の肩をポンポンと軽く叩いた。

 そして俺と和彦は最寄りの駅を目指してグラウンドを後にし、西高からゆっくり歩き始める。


 俺は和彦と一緒に帰る途中でも、西崎の事をずっと考えていた。なんであいつが、どうして、何度も頭で考えてみても当然、答えは見つからない。

 なんで、あいつがこんな目に。あいつは昔から女癖は悪かったが、そこまであいつを恨んでいる人間がいたというのか。


「……一体、誰にやられたんだ」

 俺は知らない間に口からボソボソと何かを発していたらしい、すれ違う人間からの視線が妙に痛かった。

「……どうした、独り言なんて」

 俺の異変に和彦も気が付く。しかし、そんな事はどうでも良い。人を拘束したまま道路に投げ込むなんて、普通の神経の人間じゃない。

「……ごめん、和彦! 先帰るわ!」

「お、おい!」

 俺はすぐにでも確かめたかった。和彦には悪いが、こんな所で道草を食ってる場合じゃない。


 俺は和彦を駅に放置して、出発直前の電車に飛び乗った。

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